雲を突き抜けた鼻先
――できるだけ安く宇宙旅行を楽しみたい。
一体どうやって見つけたのやら、魔法使いである私のところに、そんな依頼が来た。宇宙旅行費用を値切ってくるということは、今回の客はあまり裕福ではないらしい。
それでも、頼まれた仕事は全て断らないようにしている。駆け出し魔法使いにとっては、まず信用を得ていくことが大事だからだ。
依頼主から詳しく話を聞いてみれば、亡くなった母の骨を自分の手で宇宙に撒きたいのだという。それというのはつまり、宇宙服も着用せずに宇宙空間に投げ出されたいという意味であり、もう完全に目的は後追い自殺のようにしか思えなかった。ただし、これは依頼主が無知であるがための願望である。
普通に考えれば無理難題であるが、しかし、私は「できない」とは言わない主義だ。不可能を可能にするのが魔法使いの仕事なのである。かくして、私は策を練った。
まず、象をあり得ないくらい巨大化させる。そしてその象を操り、長い鼻を天高くまで持ち上げてもらう。空気が薄くて人間が生きられない場所であるという問題は、これまた魔法で何とかできる。水の膜で彼を包んでやれば、宇宙服がわりにできるだろう。これで完璧な散骨付き宇宙旅行プランの完成だ。
私は彼を象の鼻の上にのせ、呪文を唱えた。高い山脈など遥かに超えて巨大化した象は、地球の自転を狂わせた。異常気象が頻発した。私は魔法使いとしての信用を完全に失ったのだった。こんなはずでは。




