ドランゴンスフィア
雷を操ることのできるドランゴンスフィアというものがある。それは、白の五角形をした皮と黒の六角形をした皮とをつなぎ合わせて球体を作ったものだ。これを叩くなどすると、雷が発生する。
穀物などを効率的に育てるため、また電力源としても活躍したのだが、やがて戦争に使われるようになって、無差別に雷が地上に襲いかかるという、あまりに危険な状況になった。そこで古代の人々は、これをばらばらに分け、各地の社や祠に安置することにした。
時は流れ、現代の研究者カナタがそれぞれの皮に共通性を見いだし、これをパズルのようにつなぎ合わせ、完全な球体を作り上げた。ドランゴンスフィアは現代に復活を果たしたのだ。
ところが、彼の小学生の息子かずきがこの球体をサッカーボールと間違えてサッカークラブに持って行ってしまった。たしかに彼の持つ白黒のボールに似ていた。
かずきがボールに衝撃を与えるたびに雷が発生してしまう。試合では、かずきの強烈シュートとともに、小学校の上空に稲光が走り、激しい雷鳴が響き渡った。
サッカークラブの活動が終わる頃には、かずきはドランゴンスフィアの法則性を完全に理解し、雷鳴の虜になっていた。
一方、研究者カナタは異常を感じ取った。遠くからの雷鳴を何度も耳にして、家を飛び出し、グラウンドに君臨する我が子かずきと対峙する。絶縁体の鎧を纏ってかずきからドランゴンスフィアを奪い取ろうとしたが、かずきは駄々をこねた。「いやだね! 手放すくらいなら、学校に特大の雷を落として破壊してやる!」と叫んだ。神に等しい力を得たと思い、気が大きくなっているようだった。
危険なテロリストとなった小学生かずきは、学校を破壊してしまえば宿題もしなくていいし、登校もしなくていい、起きてから寝るまでずっとサッカーだけをやっていられる、とそんな風に考えていた。
かずきが叩くと、ドランゴンスフィアはまばゆいばかりの光を放ち、これまでで最も巨大な雷の束を降らせた。
雷は屋上の避雷針に落ちて吸収され、何の破壊も起きなかった。
カナタは急いで駆けつけた妻とともに、我が子からドランゴンスフィアを奪いにかかる。
かずきは激しく抵抗し、絶望の叫びを上げながらも、ついに家族の手によって取り上げられた。その瞬間、雷鳴は途絶え、空は晴れ渡り、静寂が訪れた。かずきの手から離れたドランゴンスフィアは光を失い、ただの黒白の球体と化してしまった。
捕まったかずきに、両親からの特大の雷が何度も落ちた。




