098「『探索者世界会議恒例腕試し大会』開幕!」
ゲオルグ・シェフチェンコの質疑応答が終わった後、会議場では次に『魔物暴走』についての今後の対応策という話し合いが行われることとなった。
ちなみに、その話し合いの結果『魔物暴走』については、頻度が多くなるようなら『魔物暴走鎮圧特別チーム』を各国ごとで設けることと、Aランク以上のダンジョンで発生した『魔物暴走』に関しては、『最優先事項』扱いとして各国のトップ探索者は現場へ行ってもらう⋯⋯という取り決めが決まった。
——そして、
「それでは、以上を持ちまして『探索者世界会議』は終了となります。夕方からは『探索者世界会議恒例腕試し大会』が行われますので、出場選手の方は17:00までに1階の大広間にて用意した『出場選手専用ルーム』へとお越しくださいませ。腕試し大会は18:00からとなります。観戦の方はお時間間違いないようお願いいたします。では、これにて『探索者世界会議を閉会させていただきます。皆様お疲れ様でしたー!』」
ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァっ!!!!
なんだかんだあったが、大きな混乱もなく『探索者世界会議』は閉幕した。しかし、何人かの人間にとって本当の『探索者世界会議』はこれから始まる。
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——『インフィニティ日本本部/控室』
「で、俺⋯⋯⋯⋯どうなるんですか?」
質問しているのは、ソラ。
「うん。出場⋯⋯だね!」
ソラの質問に即答したのは、ギルドマスター倶利伽羅炎呪。
「ていうか、ご指名いただいたしねっ!!」
さらに、嬉しそうに付け足す炎呪。
「デスヨネー⋯⋯⋯⋯はぁ」
炎呪の言葉にため息で答えるソラ。
「あれ? 何? チヤホヤされたいんでしょ? だったら試合に出るのはアピールの場にとっては最高じゃない!」
「いや、まーそうなんだけど⋯⋯⋯⋯。相手がな〜⋯⋯」
「まー世界ランキング1位、2位じゃな⋯⋯」
「不知火さん!」
すると、不知火不師斗が話に入ってくる。
「おう。それにしても、お前も大変だな。あの二人に目をつけられるとは⋯⋯」
「まー『探索者世界会議』では目立つつもりでいたので結果的には良かったんですけど、でも、まさか試合することになるなんて⋯⋯」
「はっはっは! そりゃ、自分で蒔いたタネだからな。諦めるんだな!」
「デスヨネー。ていうか、不知火さん⋯⋯なんか楽しんでません?」
そう、不知火は普段と違ってテンション高めだった。
「当然じゃねーか! お前みたいな生意気な奴がへこんでるなんて、こんな最高なエンターテイメントないわ!」
「くっ!? そりゃどうも!」
不知火は完全に楽しんでいた。
「ところで、この『腕試し大会』ってのはどういうものなんですか?」
ソラは詳しいことを聞いていなかったので、改めて炎呪に確認をする。
「毎回『探索者世界会議』が終わったら開いているイベントなんだけど⋯⋯別に正式な大会とかそんな硬い感じないんだよね。そもそもの始まりが世界会議の前後でいざこざがあったときに『世界会議が終わったらその会場で白黒はっきりつけよーや!』って誰かが言ったのが始まりでね。現在は世界ランカー上位の人たちが腕試しの場として利用しているイベントだね」
「なるほど。ということは、探索者全員が参加するとかそんな規模ではないんだ?」
「そうだね。どちらかというと小規模だよ。だって、選手として出る探索者はだいたいが世界ランキングの上位ランカーたちだからね。彼らは普段忙しいからなかなか腕を試す機会がないからね。そういった人たちの『ストレス発散の場』にもなっているかな」
「なるほど」
「とはいえ、今回のようなレヴィアス・アークシュルトとかゲオルグ・シェフチェンコなんてトップ中のトップランカーが出ることはまずないけどね。だからこそ、彼らがわざわざアプローチするだけでも凄いことなんだよ!」
などと、炎呪は「むしろ光栄に思わなきゃ!」と言っているが、目の奥はニヤニヤと笑っているから始末に負えない。
「とにかく! あんな世界1位とか2位と手合わせするなんて、なかなかできないんだから楽しんできなよ、ソラ君!」
「まーそうだな。どうせ出るなら楽しんだもん勝ちか」
「そうそう、その意気だよ、ソラ君!」
そんな感じで、炎呪や不知火さんと軽くやり取りした後、改めて炎呪からルールを聞いた。
「腕試し大会は、あくまで『腕試し』がメインだからね。トーナメントとかではなくて指名制なんだ」
「へ〜」
「今回、レヴィアスやゲオルグみたいに舞台で指名するなんてのはまずなくて⋯⋯。世界会議始まる前に運営に連絡して『腕試し大会の対戦相手』を指名して、それで、指名相手が了承すれば大会にエントリー決定⋯⋯て感じかな。ただし、時間は限られているから人が多い時は世界ランキングの上位者を優先されるよ」
「⋯⋯ってことは、今回のレヴィアスとゲオルグの指名は例外でエントリー決定になったってこと?」
「そう。まあ、本当はダメだけど世界1位と2位だからね。そこは『忖度』かな〜⋯⋯」
「なるほど」
ま、『忖度』大事ですもんね。
「あと、試合は毎回のくじで決定されるんだ」
「え? くじ?」
「そう。指名して成立した試合カードに番号を振って、その番号が書いてあるボールを司会が箱から取り出して、その取り出された順に試合を始める⋯⋯って感じだよ」
「へ〜。なんか珍しいやり方だな」
「そうかい? まーイメージ的には漫才のM1決勝みたいな感じだよ」
「なるほど」
わかりやすい。
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その後、しばらくすると俺たちは会場へと移動した。
ちなみに、この世界会議が行われた横浜にあるこのデカい会場の真下にはスペースがあり、『腕試し大会』はその地下スペースを貸し切って行われる。
さらにいうと、そもそもこの世界会議の会場となった場所は探索者ギルドが所有している施設なので、ある程度の自由はきくのである。
「皆様、お待たせしました! これより『探索者世界会議』裏メニュー! 恒例腕試し大会を開催いたしまーす!!」
ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ〜〜〜っ!!!!!!
いよいよ、腕試し大会が始まった。
大会開催の挨拶として登場したのは、
「ガハハハハ! 皆の者!⋯⋯⋯⋯私だっ!!」
ウォォォォォォォォォォォォォォォ〜〜〜〜っ!!!!!!
試合対戦用の舞台にマイクを持って登場してきたのは⋯⋯⋯⋯世界最強『ゲオルグ・シェフチェンコ』。
「今夜は俺も出場するから楽しみにしていてくれ! そして⋯⋯⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラ〜〜っ!!」
「っ!?」
突然の指名に動揺するも、俺はなるべく冷静に装ってゲオルグに顔を向けた。
「指名の順番で言えば私は2番手になる! 頼むから1番手のレヴィアスで失神とかして私との対決をフイにするのはやめてくれよ?」
ワァァァァァァァァァァァァァァァ〜⋯⋯っ!!!!
本人は特に煽ったつもりはないのだが、その内容は明らかな煽りであることを観客も本人も感じていた。観客はゲオルグの言葉にさらに盛り上がる。
「では、これより『探索者世界会議恒例腕試し大会』を開幕する! お前ら、大いに楽しめっ!!」
いよいよ、『探索者世界会議恒例腕試し大会』が開幕する。




