092「チヤホヤされたい?」
——2025年1月中旬
日本で初となる世界の探索者ギルドの名だたる探索者やギルドマスターといった顔役が集まる世界会議。⋯⋯『探索者世界会議』が開催される。
探索者の大規模イベントの一つでもあることから、探索者だけでなく、一般市民も含めて現場では年が明けて少ししてすぐに『お祭り』のための会場設営が急ピッチで進められていた。
そんな中——、
「おおっ! やっぱ日本の本場の寿司はサイコーだねー!」
「イエス! さすが日本! 食って食って食いまくるぞぉー!」
「おおー!」
と、開催一週間前あたりから各国の有名探索者たちがすでに日本入りし、『日本の探索者調査』という名の観光を楽しんでいた。
そして、そのおかげで外国探索者と国内探索者による乱闘事件や、一般人とのトラブルなども増え、警察だけでなく、探索者ギルドでもその対応に追われるなど、良くも悪くも『探索者世界会議』の開催が刻一刻と迫っていた。
********************
「よく来てくれた」
現在、ソラたち『新進気鋭』は探索者ギルドの炎呪の部屋に呼び出されていた。そして、そこには不知火不師斗と、もう一人——、
「はじめまして。副ギルドマスターをやっている橋爪茶涼と申します。以後お見知りおきを」
探索者ギルド日本本部にて副ギルドマスターをしている橋爪がソラたちに挨拶をする。
「初めまして。新屋敷ソラです」
「唐沢利樹です」
「胡桃沢星蘭です」
「ご丁寧にありがとうございます。今後もいろいろとよろしくお願いします」
そんな、一連の形式的な挨拶を済ませると炎呪の口から今日の本題が語られる。
「さて、3日後に探索者世界会議がいよいよ開催されるのだが、今回我々はホスト国となるのだが、今回まず君たち『新進気鋭』の三人は壇上で紹介されることとなる」
「「え? えええええええええええええ〜〜〜っ!!!!」」
「ど、どうしてですか?! 私たちデビューしてまだ1年も立たない新人ですよぉ!」
「だからだよ?」
「え?」
「だって、デビューして1年も満たない新人が次々とランク昇格のスピード記録を叩き出して、現在はB級ランカーだよ? 逆の立場で考えたら、それって異常でしょ?」
「「⋯⋯あ?」」
炎呪に言われて気がつく唐沢と胡桃沢。
「そうだぞ。二人はもう少し、自分たちの成長速度を見極める必要がだな〜⋯⋯」
「「いや、お前にだけは言われたくないわっ!!」」
二人が絶妙にシンクロしてソラにツッコむ。ツッコまれたソラも「良いテンポだ」と一人うんうんと感心している。
「はいはい、おちゃらけはその辺にして。さて、クランもそうだけど、それ以上にソラ君は特に注目されているからね?」
「え?」
「二人にさっき『成長速度を見極める必要が⋯⋯』なんてエラソーに言ってたんだ。当然、君も自分のしでかした規模は理解してるよね?」
「⋯⋯も、もちろんだ(※もちろん、理解していません)」
「うん、理解していないようだね。まーいいや。でね? 今回、壇上に登ったらいろいろと各国の探索者ギルドの人たちから質問がくると思うんだ」
「うむ」
「で、もしかするとだけど⋯⋯⋯⋯もしかすると、そこで『ちょっと腕試ししようぜー!』みたいなノリになることがあるかもしれないんだ。ていうか、あると思ってて欲しい」
「⋯⋯え?」
「⋯⋯『魔物暴走単独鎮圧』がね〜。だいぶ目立ってるんだよね〜」
そう言って、炎呪が「お前のせいやで」「身から出た錆やで」とジト目を向ける。
「別にいいですよ? 腕試し⋯⋯」
「え? いいの?」
炎呪はまさかソラが了承するとは思っていなかったようで驚く。
しかし、ソラ的には「これからはどんどん目立ってチヤホヤされるよう頑張るぞいっ!!」と、極めて健全な邪な想いを今年の抱負としていたので、炎呪へすぐに了承の意を伝えたのは当然と言えば当然の結果だった。
「ああ、もちろん。ぶっちゃけ、今後はチヤホヤされるよう頑張ろうと思っているからな」
「え? チヤホヤ⋯⋯?」
「そう、チヤホヤ」
炎呪が意外にもだいぶ動揺したのか、フラッとよろめいた。さらに、
「ちょ、ソラ!」
「ん?」
「い、今、チヤホヤされたい⋯⋯って言ったのか?」
「うむ」
「ソ、ソラ君? 正気?」
「ん? もちろんだ」
「ど、どうして、いきなりそんなことを⋯⋯?」
唐沢と胡桃沢が心配そうにソラへ確認を取る。
「いや、これから俺たちは社会人⋯⋯自営業としてやっていくだろ? だったら、今後は表舞台に立つことがあれば目立ったほうが、ダンジョン探索以外にも仕事が入るかもしれないだろ?」
「! な、なるほど⋯⋯」
「! た、たしかに⋯⋯」
唐沢と胡桃沢がソラの言葉に大きくうなづき感心する。
しかし、当然、ソラの意図はそこではない。
字面そのまま⋯⋯単にチヤホヤされたいだけである。
(ふっふっふ⋯⋯完璧だな)
唐沢と胡桃沢を完全に誤魔化すことができたソラは、一人愉悦に浸っていると、
「いや、たぶん、ソラ君は単純にチヤホヤされたいだけだと思うよ? もっと言ったら、今の正論のような理由も後付けマシマシだと思うけどね?」
炎呪がニコニコ笑顔でそんな俺の『誤魔化し』を見事看破した。
そういうの、口に出すのよくないと思いま〜す。
そんなこんなで、3日後——『探索者世界会議』の開催日となった。




