089「初対面と初タイマン①」
「こ、ここが⋯⋯『天罰』の基地ってこと?」
「マジかよ。ここって、だって⋯⋯⋯⋯胡桃沢の家の真下じゃねーか!」
夕方——賢者がやってきて「準備ができた。早速ついてきてもらおう」と言って俺たちをこの場所まで案内した。
その賢者に案内された場所は胡桃沢の家の地下にある施設で、地上から100メートル下に造られた施設だった。
俺たちは現在、その施設の入口を入ったところだ。
中に入ると、思っていた以上に広かった。どのくらい広いかはわからないが、少なくともこの建物内でゴルフ場にあるようなカートを利用して移動するくらいには広いことだけはわかった。
「す、すごい広いですね」
「ああ、すごいだろ? 広さ的には東京ドームくらいはあるぞ」
「と、東京ドーム⋯⋯っ?!」
「⋯⋯お、お父様。わたくし、まったく知りませんでした」
「そりゃそうだろう。ここは厳重に管理しているからな。いくら家族といえども話すことはない」
「そうですか。ちなみに、これまでの海外出張というのはもしかしてすべてウソで、この地下施設に行ってたとかですか?」
「お? よく気がついたな、星蘭。まーすべてウソではないが⋯⋯⋯⋯七割くらい?」
「ほとんどウソじゃないですか?!」
「わはは。悪い、悪い」
胡桃沢と親父さんの話を聞く限り、本当に家族でもこの施設は秘匿されていたところを見ると、かなり重要な施設だということはわかった。
逆にいえば、『朧』という組織に対して、これくらいしないと危ないと感じているとも言えるのか。
そんなことを考えている間に、俺たちは施設の中にある大きな会議室のところへと案内された。
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「来たか」
「やっほー!」
「⋯⋯⋯⋯」
俺たちが案内された会議室の扉を開けると、そこには賢者と倶利伽羅炎呪、そして、『単独探索者最強の一角』と言われている『不知火不師斗』がいた。
「改めて、紹介⋯⋯⋯⋯まー炎呪はいいか」
「ちょっとぉー! 扱い軽いよ、賢者!⋯⋯⋯⋯とは言ったものの、まー三人とはギルドで会うことが多いからね」
「本当に炎呪さんがいる!」
「そりゃ、いるよ。だって僕も仲間だし」
「なんか不思議ー」
「それはこっちのセリフだよ、星蘭ちゃん」
唐沢と胡桃沢が炎呪と顔見知りというような会話を交わす。
「まーでも、この隣の目つきの悪いおっさんは初めて⋯⋯⋯⋯だよね?」
「誰がおっさんだ。お前のほうが年上だろが」
「あー! それ言っちゃう?! プライバシーの侵害ー!」
「フン。事実を言ったまでだろが」
二人のやり取りを見ると、どうやら仲は別に悪くないようだ。むしろ、息が合っているようにも感じる。ただ、炎呪の言う通り、その男の目つきは悪く、街を歩いていたら絶対に関わりたくないと思えるくらいにはコワモテだ。
「⋯⋯炎呪、そのくらいに」
「はーい」
「ということで、今炎呪とやり取りしていたこの男が不知火不師斗だ。まーソラ君以外は知っていると思うが⋯⋯」
と、賢者が炎呪に軽く注意をしたあと不知火不師斗について説明をしようとしたときだった。
「⋯⋯賢者。いくら人が欲しいからって高校生を呼んだのは⋯⋯⋯⋯どういうことだ?」
ズン⋯⋯!
話題の不知火不師斗がドスを効かせた声と刺すような視線で部屋全体に威圧をかけた。
「うっ⋯⋯な、何だ、これっ!?」
「こ、これって⋯⋯不知火不師斗さんの⋯⋯威圧⋯⋯っ?!!!」
唐沢と胡桃沢が不知火不師斗の威圧に顔を歪める。
「フン⋯⋯。俺の軽い威圧で気絶しない程度には実力はあるようだが、しかし、この程度の威圧で顔を歪めるようじゃまだまだだ。⋯⋯子供はウチへ帰りな」
そう言って、唐沢と胡桃沢に威嚇する。
ていうか、何こいつ? 何様よ?
「ふんっ!」
パァァンっ!!
「何っ?!」
俺はそいつの⋯⋯不知火不師斗の威圧を俺の威圧を持って消滅させる。それを見た不知火が驚きの表情を見せる。
「あんたが不知火不師斗ってのか?」
「だったらどうした⋯⋯小僧」
「小僧じゃねー。俺は新屋敷ソラだ」
「フン! ただの高校生のガキじゃねーか」
「元だ。だから今はあんたと同じ社会人だ」
「一緒? 笑わせるな、ガキが」
「ガキとか小僧とかうるせーよ、おっさん」
「んだと、コラ?」
ということで、俺と目の前の不知火が一触即発となる。
「おいおい、お前ら何やってんだよ⋯⋯」
勝己さんが呆れた顔をして注意する。しかし、
「⋯⋯勝己の叔父貴。すんませんが、ちょっとこのガキに目上の人への言葉遣いとか態度を教えてやらないといけないのでちょっと黙っててもらえますかね?」
「ああっ?! てめえ、誰に向かって口聞いてんだ、コラぁ!?」
不知火不師斗が勝己さんにそう言うと、勝己さんの口調がいきなり『極道調』に変わった。⋯⋯『日◯統一』かよっ!!
「いいんじゃない? ちょうど僕もソラくんの実力見てみたいと思っていたし!」
と、ニコニコしてそう呟くのは炎呪。
「い、いや、だからと言って、いきなり不知火相手に腕試しは⋯⋯ちょっと無理があるのでは?」
不安げにそう呟いたのは父さん。しかし、
「俺は別に大丈夫だよ、父さん? 俺は俺でこの人の失礼な態度にちょっと言いたいことあるし⋯⋯」
と、俺はやる気十分なことを告げる。
「ほう? いい度胸じゃねーか? 賢者の旦那ぁ! いいよなぁ!」
不知火が賢者に確認を取る。
「そうだな。私としても直にソラ君の実力は見てみたい」
「決まりだな」
ということで、顔合わせ初日——『不知火不師斗』とタイマンをすることとなった。




