080「新年明けたので振り返ってみた」
——2025年1月1日/正月
「「「カンパーイ!」」」
年が明けて2025年——俺は今、家族水入らずで正月を満喫していた。
俺がこの『並行世界線の地球』に来てから初めての正月。そして、この世界の家族との初めての正月だ。
とは言っても、『並行世界線』だろうと目の前の家族は元の地球にいた頃と何ら変わっていない。なので、特に違和感などは全くな⋯⋯⋯⋯あ、いや、以前とは違うこともあった。それは、
「ねぇ〜お兄ちゃ〜ん。初詣行こう〜?」
妹のゆずが俺に対してだいぶ甘えん坊になったことだ。
元の地球にいた頃やちょっと前までの妹はこんな甘えん坊ではなかった。⋯⋯むしろ、俺に対してはいつも厳しい言葉や態度だった(ウザイとかキモッとか)。
だが、俺が探索者になりテレビで取り上げられた頃から態度が急変。母の話によると元々ゆずは『お兄ちゃんラブのブラコンである』と聞かされた。それからというもの、ゆずはブラコン全開で俺に甘えてくるようになった次第である。
「いや、今日はこれから唐沢と胡桃沢で初詣に行くんだよ。だから、ごめん」
「え〜! じゃあ、私も一緒に行くぅ〜!」
「い、いや、お前あいつらとは会ったこともないだろ? それに友達とは行かないのか?」
「い、行くけど〜⋯⋯でも、お兄ちゃんとも行きたいもん!」
と言って、ゆずが上目遣いで目をウルウルさせながら腕を絡ませてくる。
「わ、わかった。じゃあ、別の日に行こう、なっ!」
「ええ〜? 元旦に行きたいのに〜」
ゆずがなかなか引かないので困っていると、
「コラ、ゆず! お兄ちゃんは今日はクランのみんなと行くんだからあんたはそれ以外の日にしなさい!」
「え〜、でも〜⋯⋯」
「お兄ちゃんはもう学生じゃなくて社会人なのよ。そして、唐沢君や胡桃沢さんは仕事仲間だからこういった行事は友達や家族と行く初詣とは違うの。わかってあげなさい」
「う〜⋯⋯わかった〜」
母さんが何とかゆずを説得してくれた。
「ハッハッハ。じゃあ、ゆずは父さんと一緒に⋯⋯」
「じゃあ、友達と初詣行ってくるね〜!」
バタン!
ゆずは父さんが話終わる前に、被せ気味にそう言ってさっさと家を出てってしまった。
「うう⋯⋯最近、ゆずが父さんに冷たい件」
「あらあら」
父さんがゆずの態度にガチへこみし、母が横で父さんの頭をナデナデしてフォロー。そんな、いつもの日常と変わらない両親のイチャイチャは正月も健在である。
この『並行世界線の地球』に来てから約半年が経った。
元の地球と似て非なる世界。
ダンジョンのある世界。
魔物が存在する世界。
魔法・スキルが存在する世界。
そんな、ファンタジー要素が内在するものの、それ以外は以前の地球と変わらない⋯⋯⋯⋯と思っていたが、最近だとそれは少し違うように感じている。
確かに、ファンタジー要素以外は以前いた地球とほぼ同じだ。車は走ってるし、飛行機は飛んでるし、パソコンはあるし、スマホはあるし⋯⋯。ただ、元の地球には絶対に無かった物も存在する。それが『ダンジョンアイテム』だ。
その『ダンジョンアイテム』には、実に現代の科学技術では作り出せないようなアイテムがゴロゴロある。そして、それらのアイテムの謎はいまなお解明されていない。ていうか、そもそもこの『ダンジョン』自体がある意味謎アイテムだ。まさに『オーパーツ』である。
一体、誰がどうやってダンジョンをこの世界に顕現させたのか?
そもそも誰がどうやって作ったのか?
まったくわからない。謎だ。
ていうか、ぶっちゃけ⋯⋯⋯⋯これ『人間業』じゃないだろ?
はっきり言って、宇宙人とか未来人とか『人智を超えた存在の仕業』としか考えられない。
仮にもし地球の誰かの仕業ならオーバーテクノロジーもいいとこだ。それだけのテクノロジーがあればわざわざダンジョンなんて出現させずとも、もっと直接的に何かしらできたのではないだろうか。
そう考えると、やはりダンジョンは人間以外の何らかの存在の仕業であるのは間違いないだろうと俺は思っている。
ただ、そうなると、それはそれでわからないことがさらに出てくるのだが、その中でも特にわからないのが、
『ダンジョンの存在理由』
これに尽きる。
ダンジョンには魔物がいてその魔物は人間を襲う。そして、その魔物を倒すとRPGゲームのように『経験値』のようなものが得られ、それにより、これまたRPGゲームのような『レベル』というものが上がり、身体能力を引き上げて超人的な力を得られるようになる。
しかも、魔物を倒した時やダンジョン内の宝箱から出る『魔法書』や『スキル書』をゲットすれば、人智を超えた能力を身につけることが可能だ。
おまけに、成長した自分の能力値は「ステータス」と『声に出す』または『思う』だけで、脳内にホログラフィックなボードが出現し、そこに書かれた自分の能力値を頭の中で確認することができる。
まさにファンタジー。
しかし、これらの『恩恵』は誰の何のためなのだろうか?
もしかして、ダンジョンを作った存在は『人類の進化』を促しているのだろうか?
でも、だとすれば、なぜ今『人類の進化』を必要とするのだろう?
⋯⋯⋯⋯
⋯⋯⋯⋯
まるで、八方塞がりである。
「いってきます」
そんな『不毛な疑問』を正月のバラエティ番組を観ながら考えていたが、考えれば考えるほど謎が深まる袋小路にハマった俺は考えることをやめ、程なくして唐沢たちと待ち合わせをしている神社へと向かった。




