066「各国の動き/インフィニティ中国本部・フランス本部・ロシア本部」
——インフィニティ中国本部
「日本本部の詳細はどうなってる?」
「はい。現在、関東B6ダンジョンの魔物暴走鎮圧に向け、討伐隊を緊急召集。1時間後に魔物暴走鎮圧、並びに、現在ダンジョン内で魔物暴走の侵攻を遅らせようと留まっている探索者救出に向けて出発するとのことです」
「へ〜、かなり迅速な動きあるね〜」
「お腹減った⋯⋯」
インフィニティ中国本部内のギルドマスターの部屋に集まっているのは、中国本部の四人の顔役たち。
「なぁ、明凛? このダンジョン内に残っている探索者ってさ〜、強いの?」
と中国本部のギルドマスターでS級ランカー世界ランキング5位の『王明凛』に質問したのは、S級ランカー世界ランキング8位の『劉蘭蘭』。探索者集団『暴風大帝』のリーダーである。
性別では『女性』にあたるのだが、性格がガサツということで周囲から女性扱いされていない。⋯⋯が本人も「そのほうがラクだ」と特に嫌とは思っていない。一応、赤髪ツインテールという外見なので見た目は女性だ。
また、短気であり、単純であり、正義感旺盛ということで、サバサバした性格だが周囲の探索者だけでなく一般の人からも人気が高い。あと身長が161センチと低いこともあり、インフィニティ中国本部のマスコットキャラとしても人気が高い(ただし、本人は不服としている)。
「さぁ? よくわからないな。ただ、新人デビューして2ヶ月でD級ランカーになったらしいので多少は才能があるのかと思いますが⋯⋯」
と返事を返す『王明凛。すると、
「正直、その程度の才能はいくらでもいるかと⋯⋯。私からすれば、D級ランカー成り立ての新人一人で魔物暴走の侵攻を遅らせようと残るなんて、ただの無謀な探索者としか思えませんね。むしろ、彼の短絡的で英雄思考な行動はかなり不愉快です」
と問答無用な言葉で一刀両断するのは『李翠蓮』。彼女もS級ランカーで世界ランキング6位の実力者である。
「お腹減ったー」
最後に何の脈絡もない一言を放ったのは『趙子龍』。
身長155センチと小学生低学年のような体格だが、年齢は28歳と想像以上に大人であり、尚且つ、S級ランカー世界ランキング7位という超人的な強さを持つ『合法ロリ枠』の一人。
そんな彼女は、脈絡なく自分事のセリフを吐くのでもお分かりの通り、空気を読まない⋯⋯というより読む気がない『自由人』だ。
そんなインフィニティ中国本部の顔役四人は、今回の日本本部の魔物暴走の状況については、
「とりあえずは様子見ということで」
「はい」
「はーい」
「肉まんを所望⋯⋯」
と特に気にしていないようである。
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——インフィニティフランス本部
「日本の魔物暴走⋯⋯」
と、一人呟くのはインフィニティフランス本部のギルドマスター『アラン・アンリ』。S級ランカー世界ランキング6位の実力者である。
「そして、その魔物暴走の侵攻を遅らせようと一人ダンジョンに残った新人のD級ランカー新屋敷ソラ⋯⋯ね。なるほど、実に面白い」
クツクツと一人ほくそ笑むアラン。
「さて、彼らの言う通り、新屋敷ソラが『転移者』の一人であればいいですね〜。とりあえず、すぐにでも迎えに行きたいと思いますから準備しておいてくださいね?」
「「「「はっ!」」」」
アランは虚空の闇に向けて言葉を放つと、誰もいないように見えたその虚空から複数の声がアランに返事をした。
「新屋敷ソラ君が『転移者』であれば我々が彼を捕まえることで状況は一変する! 見ていろ⋯⋯イギリスやアメリカのクソ野郎ども! 目にもの見せてくれる⋯⋯⋯⋯クックック」
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——インフィニティロシア本部
「⋯⋯皇帝」
「ぬ?」
「ただいま、日本で魔物暴走鎮圧に向けて討伐隊が結成。先ほど、ダンジョンに向け出発したそうです」
「ふむ」
「⋯⋯皇帝『ゲオルグ・シェフチェンコ』。新屋敷ソラというダンジョンに一人残り、魔物暴走の侵攻を抑えようとしている人物ですが、『転移者』という可能性が浮上しております。この者の調査はいかがいたしましょう?」
「調査は続行。特に今回の魔物暴走についての彼の行動を特に注視するよう厳命しろ」
「かしこまりました」
皇帝『ゲオルグ・シェフチェンコ』。
インフィニティロシア支部のギルドマスターにして、S級ランカー世界ランキング1位の男。つまり、全世界の探索者の頂点に君臨する⋯⋯『世界最強の男』である。
そして、その横で指示を仰ぐのは『ミハエル・アンドリュース』。彼もまたS級ランカーで世界ランキング7位の男だ。
「⋯⋯あと、アメリカとフランスが新屋敷ソラを探っているようであります」
「ふむ。『転移者』について⋯⋯だろうな」
「⋯⋯おそらく。いかがいたしましょう?」
「アメリカとフランスの同行も引き続き監視を。特にフランスの動きには注意するよう伝えておけ」
「はっ!」
そう言うと、ミハエルは部屋から出ていった。
「⋯⋯さて、これから賢者あたりも動き出すだろうな。あとは、『朧』の奴らも」
ゲオルグは、葉巻に火をつけフーッと香りを楽しむ。
「新屋敷ソラという小僧が『転移者』としてどれだけの男か。お手並み拝見だな」
ニチャァ。
こうして各国様々な思惑を持って、小さな島国⋯⋯極東日本の魔物暴走、そして、新屋敷ソラに注目が集まっていた。




