065「各国の動き/インフィニティアメリカ本部①」
——探索者ギルド『インフィニティアメリカ本部』
「何? 日本でも?」
「はい。現在、インフィニティ日本本部のギルドマスター倶利伽羅炎呪から連絡がありました」
「⋯⋯そうか。まさか、こんなにすぐに魔物暴走が発生するとは⋯⋯な。何か因果関係があるのだろうか?」
「いや〜関係ないんじゃね〜の?」
「おい黙れ、サム! ギルドマスターの御前であるぞ!」
「いや『御前であるぞ』って! サムライかよっ?!」
ここは米国ニューヨーク州にある『インフィニティアメリカ本部』のギルドマスターの部屋。そこには現在、
「日本からの出動要請は来ているか?」
と出動要請の確認を入れたのは、インフィニティアメリカ本部のギルドマスター『ジョー・ウェイン』。金色オールバックで金色のちょび髭をした『チョイ悪親父風イケメン』。⋯⋯だが、筋肉をこよなく愛する『筋肉お化け』のマッチョマンであるため、周囲からは「パーツは良いんだから、早く筋肉を卒業して真っ当なイケメン人生を歩んでもらいたい」と割とガチ目に思われている。
S級ランク探索者だけで構成された『米国最強』と言われる探索者集団『パトリオット』のリーダーであり、探索者世界ランキング3位の男。
「⋯⋯いえ、来ておりません」
と、無表情でボソッと返事をしたのは、探索者世界ランキング11位のS級ランカー『サミュエル・ロックチェアー』。
銀色のロングヘアー⋯⋯というより、ただの伸ばし放題の髪なので見た目『ホームレス』のような男だが、身長が先ほどのギルドマスターのジョー・ウェインよりもさらに10センチほど高い、2メートル5センチであるため、彼が気配を消して後ろに立たれると恐怖しかない。⋯⋯あと、口数が少ないので余計に怖いと言われている。
そんな風貌の彼だが、実は驚くなかれ⋯⋯米国貴族である『ロックチェアー家』の者であり、現ロックチェアー家当主『デービット・ロックチェアー』の息子で三人兄弟の末っ子だ。要するに、お金持ちの権力持ちのすごい家の人ってことだ(※ご、語彙力)。
ちなみに彼は基本単独探索者を好むため、探索者集団を作っていない。⋯⋯にも関わらず、S級ランカーということで「実力的には世界ランキング10位以内だろう⋯⋯」と周囲からは評価されている。
「日本かぁ〜。そう言えば『乾坤一擲』の蓮二、元気にやってっかな〜?」
「今そんな話はどうでもいい。少し黙っててくれ⋯⋯ランス」
「はいはい、わ〜ったよ⋯⋯サミュ」
と、この場に関係のない話をしてサミュエル・ロックチェアーに注意を受けたのは、若干21歳にしてS級ランカー、しかも世界ランキング10位という強さを誇る⋯⋯⋯⋯現在、天才探索者として名を轟かせている『ランス・バーネット』。
二人よりも身長は低いとはいえ『189センチ』と恵まれた体格の持ち主。また髪型が昔のロカビリー風⋯⋯というか『日本の不良』のような金髪リーゼントをキメている。ちなみにリーゼントにはこだわりが強く、彼に『リーゼント』の話は不可触だ。
そんな彼は探索者集団『サンダーフォックス』のリーダーを務める若き天才探索者だ。そんな本人は少し不良っぽいところがあるが『曲がったことが大嫌い』というプライドを持つ『兄貴肌』的な一面があり、それは探索者仲間から大きな信頼を得ている。
そんな『筋肉お化け』『コミュ症貴族』『アメリカンヤンキー』とクセの強い三人だが、彼らは探索者ギルド『インフィニティアメリカ本部』の顔役である。
「そういや、この魔物暴走の発生報告をした『新進気鋭』のリーダーで、え〜と⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯新屋敷ソラ」
「そうそう、新屋敷ソラ! 彼が今、その魔物暴走の侵攻を遅らせるため、38階層に一人残っているって言うんだろ?」
「はい、仰る通りです」
「はぁっ!? 魔物暴走の侵攻を遅らせようと一人でダンジョンに残っているだぁ!? 何考えてんだ、そいつはぁっ!!!!」
と、ソラの行動に激しい剣幕で怒鳴ったのは金髪リーゼントのランス。
「彼は、確か⋯⋯F級からD級へ二段階特進したという16歳の高校生探索者だったな?」
「はい。新屋敷ソラ⋯⋯今回の魔物暴走の発生報告をした『新進気鋭』のリーダーで、F級ランカーのときにあのトロールオークを倒して二段階特進を果たした元高校生です」
「元?」
「つい先日、日本のマスコミに騒がれたあと学校を辞めたそうです」
「あー⋯⋯まーあれだけ騒がれたら、学校なんてまともに通えなくなるわな」
「ふむ、なるほど。才能溢れる探索者といったところか」
「ケッ! だからと言って、魔物暴走の侵攻を遅らせるためにダンジョンに一人残ったところで、たかだか『D級ランカー』がどうにかできるわけねーじゃねぇか! 何考えてんだ、こいつはっ!!」
そう言って、再度ブチ切れるランス。それと、
「私もランスに同感です。二段階特進したからと言ってもしょせんはD級⋯⋯。仮に現在のD級という探索者ランクの適正レベルを超えるレベルであったとしても頑張ってもB級⋯⋯いえ、C級上位程度でしょう。いずれにしても、その程度の探索者がBランクダンジョンの魔物暴走の侵攻を遅らせるなどあり得ません」
ランスに同意すると同時に、かなり辛辣な意見を吐くのはサミュエル。
「フフフ⋯⋯なかなか手厳しいな、サミュ」
「事実を述べたまでです」
ジョーがサミュエルの発言に苦笑しながら話しかけるが、サミュエルは「撤回する気はない」とでも言いたげな表情を浮かべ淡々と返事を返す。
「まー確かにその通りだ。正直、彼⋯⋯新屋敷ソラの今回の行動は決して褒められるべき行動ではない。むしろ、彼には今後二度とこのような判断をしないよう⋯⋯⋯⋯私のこの至高のマッスルボディをもって『愛のムチ』で大いに反省させてやりたいところだなっ!!」
「筋肉は別にして⋯⋯⋯⋯『愛のムチ』には大いに賛成だぜっ!!」
「(コクコク)」
ジョーの言葉にランスもサミュエルも同意の態度を示す。
「⋯⋯と、普通なら思うだろう」
「何っ?!」
「っ?!」
突然、ジョーの口から出た『含みのある言葉』に反応する二人。そして、
「まだ『不確定な情報』ではあるが、新屋敷ソラは⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯『並行世界線に選ばれし転移者』かもしれん」
「「え⋯⋯?」」
そんなジョーの言葉に驚愕の表情を浮かべ絶句する二人。
「た、確かに、彼が自分の強さをちゃんと自覚した上での判断だとしたのなら⋯⋯」
「もし、その新屋敷ソラっつー奴が『並行世界線に選ばれし転移者』だったとして、その転移者たちが噂通りの『規格外の化け物』であれば、単独での魔物暴走にも対応できる可能性は十分にある、ということか」
すると、二人ともがさっきの評価とは一転——真逆の評価を口にした。
「まー彼が『並行世界線に選ばれし転移者』かどうかは、今回の日本の魔物暴走である程度はっきりするんじゃないかと俺は見ている」
「はい⋯⋯要注目です」
「なるほどな。へへ⋯⋯面白くなってきたじゃねーか!」
サミュエルとランスが獰猛な笑みを浮かべながらジョーに返事を返す。
「フフ⋯⋯いずれにしろ、楽しい時間を満喫しようじゃないか」
そう言うと、ジョーはサミュエルとランスに向けて、ニカッと同じように獰猛な笑みを返した。




