058「魔物の異変」
——関東B6 10階層『休憩所』
「よーし、じゃあ今日はいよいよ最下層の40階層まで行きますか!」
「え? ええええっ!? よ、40⋯⋯っ!?」
「さ、最下層⋯⋯っ!?」」
関東B6でも入口にマスコミがいたが、ギルド職員がうまく対処してくれたおかげで特に捕まることなく、ダンジョンへ入ることができた。で、現在は10階層の『休憩所』から最下層の40階層を目指すつもりである。
二人は「い、いや、それはさすがに⋯⋯なぁ?」「え、ええ、そうよ、ソラ君。それはさすがにハードル高いんじゃ⋯⋯」などと言っていたが、俺は二人の言葉を華麗にスルーし、さっさと出発した。
——4時間後
現在、俺たちは『35階層』まで来ていた。
現状、唐沢も胡桃沢も俺の『恩寵:自動最適化』を最近追加された『恩寵:共有化』で共有しているので、特に俺が手を出さなくても二人で魔物に対応できていた。ちなみに二人は苦戦という苦戦はしていない。⋯⋯まー『無双している』とわけでもないが。
関東B6の最下層は40階層だが、この調子だと今日中に最下層に行くことになるだろう。何だったらダンジョンボスに挑戦できるかもしれない。
ただ、個人的には三人で入る前にダンジョンボスがどのくらいの強さか確認するという意味で、俺が単独で入ってみるつもりだ。万一、ダンジョンボスだけじゃなくトラップとかあるとまずいからな。
それに、もしダンジョンボスの部屋にトラップがあった場合、俺一人ならどうにかできると思っているが二人も一緒となると、不測の事態の時対処できるか自信はない。だから、まずは俺一人でダンジョンボスに挑戦しようと思っている。
え? 単純に単独で倒したほうがレベルアップが捗るからだろって?
人聞きの悪い⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯まーそのとおりなのだが。
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「ん?」
俺が後ろで二人の戦いぶりを見ていると、突然二人が苦戦しだすのを見て加勢に入った。
「「「グギャアアアアアアアアアアアアっ!!!!」」」
俺は目の前の3匹の『レッドブルモンキー』を購入した双剣による『みだれ斬り』で一気に屠る。ちなみに『みだれ斬り』とは俺が命名した『必殺剣技』だ。ちなみに、双剣をただむやみやたらに切り刻むだけである(ニチャァ)。
「すまねぇ、ソラ!」
「ありがとう、ソラ君!」
「問題ない。⋯⋯ていうか、なんで、さっきまでレッドブルモンキーに苦戦することなかったのにどうしたんだ?」
「それなんだけどよー、なんか、こう⋯⋯今まで戦ったレッドブルモンキーよりも明らかにパワーもスピードも上だったんだよ」
「何?」
「そうそう! あれ何なの? 同じ魔物なのにどうしてあんなに違うのよっ?! それにかなり凶暴だったし⋯⋯」
「凶暴?」
俺は二人の言葉を聞いて、何かひっかかるのを感じた。
「あ、そういえば、何か目がこう『金色』に光っていたような⋯⋯」
「目が⋯⋯金色?」
何だ? 目が金色の魔物なんてこれまで見たことないぞ?
「とりあえず、今みたいな魔物が出たら注意してくれ。俺も必要なら今みたいに加勢に入るよ」
「おう!」
「了解!」
そう言って、俺たちはさらに階層を進んだ、
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——37階層
いよいよ、37階層まできた。最下層まで残り3層である。
「マ、マジか⋯⋯? 今、俺たち37階層にいるんだよな?」
「え、ええ。わ、私たちデビューしてまだ10日くらいしか経ってないのに⋯⋯関東B6の37階層にいるなんて⋯⋯信じられないわ」
「まーそれもこれもソラの能力の共有化のおかげだけどな」
唐沢がそう言うと、胡桃沢と二人で俺のほうを向く。
「ありがとな、ソラ」
「ありがとう、ソラ君」
「っ!? べ、別に⋯⋯! ふ、普通だろ⋯⋯っ!」
不覚にも、一瞬嬉しさのあまり顔を赤くしてしまったのでつい顔を逸らす。
「あ、デレた?」
「デレたわね。ね、ソラ君?」
「は、はぁぁ? な、何がぁぁ? お、俺は別に⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯っ!?」
ドオオオオオオオオオオオオオオンっ!!!!!!!
「「「っ!!!!」」」
俺たちがやいのやいのと話をしていると、突如下から大きな爆音が鳴り響いた。
「な、何? 今の音⋯⋯っ!?」
「何かが爆発したような音だったが⋯⋯一体?」
「も、もしかして、誰か探索者集団が魔物と戦っているとか?」
「まーその可能性が高いだろうな。それに場所が最下層間近ってことを考えると、もしかしたら魔物に苦戦している状況って可能性もあるかもだな⋯⋯」
「そうね。どっちみち、とりあえず見に行ってみたほうがいいんじゃない?」
「そうだな。⋯⋯どうするソラ?」
「ああ、行ってみよう」
俺たちは急いで38階層へと降りた。
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——38階層
「どうだ、そっちは?」
「うーん⋯⋯特に戦っている探索者とかは⋯⋯見当たらないわね。唐沢は?」
「こっちもだ」
今、俺たちは3メートルほどの間隔を取って周囲の確認をしていた。もし、探索者が魔物と戦っていて、苦戦している、または、押されているようであれば加勢しようと考えていた。ただ、加勢する判断は難しい。判断を間違うと相手から「獲物を横取りされた」と言われかねないからだ。
なので、とりあえずその状況を見つけたら「加勢するかの確認を必ず取ろう」と二人には言っている。しかし、
「いない⋯⋯な?」
「そう⋯⋯ね?」
「⋯⋯⋯⋯」
俺たちはダンジョンの端から右回りでじっくり確認をしたが、ついに探索者が魔物と戦っている場面に出くわすことはなかった。
「てことは、さっきの音ってもっと下の階層からだったのかしら?」
「だろうな。しかし、あんな大きな音がもっと下の階層からだとしたら⋯⋯⋯⋯一体?」
「そうだな。⋯⋯何かダンジョン内で異変が起きているかもしれないな」
などと、三人で話しているときだった。
ボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコ⋯⋯っ!!!!!!
突然、俺たちの背後から異様な音が聞こえた。それはまるで⋯⋯|地面から何かが出てくるような《・・・・・・・・・・・・・・》⋯⋯そんな音だった。
俺たちはその音がするほうへと目を向ける。すると、
「グロロロロ⋯⋯!」
「グギャギャギャギャ⋯⋯!」
「グフーグフーグフーグフー⋯⋯!」
「ギギギギギギギ⋯⋯!」
地面の至る所から魔物が何十匹も這い出てくる光景が目に飛び込んできた。




