054「第一回ファミレス会議②」
その後、胡桃沢は健二と一通り『事務所を作ること』『その事務所の立地や希望』などを電話で説明すると、健二から「わかった。詳細が決まったら改めて連絡する」ということで話は終わった。
そして、一通り話が終わると健二が、
『星蘭ちゃん、それと唐沢君もある程度ソラから聞いていると思うが、詳細や今後については近いうちに私と勝己さんも交えて君たち三人と食事会を開く予定だから⋯⋯。その時はよろしくね』
「えっ!? お父様も⋯⋯ですか? で、でも、お忙しいんじゃ⋯⋯」
『いや、今回君たち三人⋯⋯⋯⋯いや、探索者集団『新進気鋭』との食事会は何よりも最優先となる。だから、これは決定事項だよ。だから、その時はよろしくね』
「最優先っ!? わ、わかりました! では⋯⋯はい⋯⋯よろしくお願いします!」
『あ、最後にソラに代わってくれるかな?』
「あ、はい⋯⋯」
胡桃沢がソラにスマホを渡す。
『⋯⋯というわけだ。近いうち、ソラたちクランメンバーと話をする日を設けるから。ま、その辺の話はまた家で話そう』
「わかった」
『ソラ⋯⋯がんばれよ』
「ああ」
そう言って、健二との電話は終わった。
「お、おい、胡桃沢勝己さんとソラの親父さんとの顔合わせって⋯⋯⋯⋯なんか凄い話になってないか?」
唐沢がプルプル震えながら呟く。
「そ、そうね。お父様と直接お話をするなんて⋯⋯私でさえなかなかないもの。それを私たちとの食事会が『最優先』だなんて⋯⋯」
唐沢と胡桃沢は電話の話を聞いて、いろいろと事の重大さを感じていた。それと同時に、
「ていうか、ソラの親父さんが勝己さんの下で働いているだの、ソラの両親がB級ランカーだの⋯⋯まずはソラの事情聴取が⋯⋯⋯⋯先だよな胡桃沢?」
「そうね。珍しく意見が一致したわね、唐沢?」
そう言って、二人はソラに詰め寄る。
「わ、わかった。ちゃんと話す、話すから⋯⋯⋯⋯ち、近いっ?!」
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「じゃあ、ソラの両親と胡桃沢勝己さんが同じ探索者集団でやっていたと?」
「ああ」
「で、それを知ったのがここ最近ってこと?」
「ああ。厳密に言うと、俺たちがテレビに報道された日の朝⋯⋯⋯⋯つまり、昨日の朝だな」
「そ、それって、実際、ソラ君からしたらかなり驚きだったんじゃない?」
「そりゃ、二人が探索者ってだけでも驚いたのに、B級ランカーで、胡桃沢の親父さんと同じクランメンバーだったなんて言われたらな」
「胡桃沢はソラの親父さんが勝己さんと一緒に仕事をしていることは知っていたのか?」
「知るわけないじゃない?! 私がさっきおじさまからの電話で驚いたのを見たでしょ! ていうか、おじさまは知っていたけど、まさかソラ君のお父様だなんて知らなかったわよ! 知ってたらもっといろいろと⋯⋯⋯⋯ソラ君との関係も⋯⋯⋯⋯ぶつぶつ」
「ん? なんか言ったか?」
「な、なな、何でもないわよ! バカ、唐沢っ!!」
「ええええっ?! な、なんで、俺がキレられてんのぉぉ〜〜〜っ?!」
胡桃沢から理不尽にキレられ、納得いかず涙目で叫ぶ唐沢であった。
「とりあえず、事務所のほうは何とかなりそうだな」
「そうだな。胡桃沢の親父さんが動いてくれるようだし⋯⋯」
ソラと唐沢が「これで決めるものは終わりかな?」と言うと、
「事務所のことはそれでいいんじゃない? それよりもダンジョン探索用の武器とか魔道具とか買いたいわ!」
「おお、そうだ! 俺もいろいろと買いたいぜ!」
「そうだな。俺も欲しいものがあるな⋯⋯」
唐沢と胡桃沢は探索者になった初日にとりあえず準備したセールの剣や防具を使っていたが、この一週間で魔物を驚異的なスピードで狩っていたので(※『恩寵』の共有化もあったので)、使用していた武器や防具がかなり傷んだ状態となっていた。
ただ、そのおかげでお金もそこそこ入ったので、少し前に「自分に合った武器が欲しい」という話をしていた経緯もあり、「だったら今から買いに行こう!」という話になった。
「じゃあ、今から行きましょう!⋯⋯⋯⋯袴田っ!」
「はっ!」
すると、袴田さんがどこかへと連絡をした。
「⋯⋯お嬢様。30分後であれば準備オーケーだそうです」
「わかったわ! ということで、みんな! ショッピングに行くわよっ!!」
「おおーっ!!」
「⋯⋯⋯⋯」
テンション高めの二人を先頭に俺たちはファミレスから移動した。まー二人ほど高いテンションではないものの、俺も密かにテンションが上がっていた。
「例の物があったら⋯⋯⋯⋯絶対に買うっ!!」
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「おお! これがあの『KZインダストリー本社』かっ!!」
唐沢はそう言って、下からビルを見上げた。
——『KZインダストリー総本店』
探索者専用武器・防具・魔道具・アイテムなどを主に販売。世界各国に拠点があり、その総本部が、ここ銀座にある『KZインダストリー総本店』である。つまり、
「私の会社ですけど⋯⋯何か?(どや〜)」
胡桃沢にしては珍しいドヤ顔である。
「まさか、胡桃沢がそんなドヤ顔するとは⋯⋯。こういうの嫌いだと思ってたから意外だわ」
「会社は別よ。だって、私は一人娘だし、このお父様の会社を引き継ぐためにこれまで生きてきたようなものだもの。会社に愛着なくてどうすんのよ!」
「な、なるほど⋯⋯」
「力強いな⋯⋯」
ちょっと胡桃沢がいつになくかっこよく見えました。
「さあ、それよりも入るわよ!」
「「おわっ?!」」
そう言って、胡桃沢が俺と唐沢の手を引っ張る格好で中へと入った。
「「「いらっしゃいませ、お嬢様っ!!!!」」」
店に入ると、入口でおそらく全従業員だろう⋯⋯数十人の従業員が一列に並んで俺たちを出迎えた。
「な、何だ、これ⋯⋯?」
「え? え? 何? 何?」
「うふ⋯⋯⋯⋯今日は貸切よ?」
「「か、貸切ぃぃ〜〜っ!???」」
天下のグローバル企業『KZインダストリー』⋯⋯しかも銀座の総本店を貸切という度肝抜かれたサプライズに俺と唐沢はただ呆気に取られていた。
「さあ、行くわよ〜⋯⋯⋯⋯Let's ショッピングっ!!」




