024「新屋敷ソラの現在」
いつものように朝起きてからの『ルーティン』を処理していく俺。
両親や妹も同じように各自『ルーティン』をこなす。
そんな、いつも見慣れた変わらない日常。
そして、テーブルに朝食が並び、それを食べ始めるといつものダンジョン関連のニュースが流れている。
「あ、お母さん! そういえば蓮二様たち『乾坤一擲』が今アメリカに遠征しているって知ってる?」
「もちろん知ってるわよ! ネット記事で読んだわ。何か、アメリカのダンジョンで魔物暴走がどうとかって⋯⋯⋯⋯」
「『魔物暴走』⋯⋯⋯⋯『魔物の突発性異常行動』ってやつだな。確かに、アメリカのダンジョンで『魔物暴走』が発生したというニュースは1週間前に海外サイトで読んで知ってたが、まさか『乾坤一擲』まで呼ばれるとは⋯⋯」
「あれじゃない? 最近の蓮二様率いる『乾坤一擲』の活躍が海外のギルドに認められて、それで実力を買われて呼ばれたんじゃない?」
「なるほど⋯⋯あり得るな。実際、海外の一流探索者の間で最近『乾坤一擲』や蓮二くんの話は上がっているくらいだからな」
「ねーお父さん! 一度でいいから、ゆずもお父さんの職場に連れてってー!」
妹のゆず⋯⋯『新屋敷ゆず』がいつものように甘え声で父親にお願いをする。
「ダメよ、ゆず。いつも言ってるでしょ? 遊びじゃないのよ、ケンジさんの仕事は!」
そして、母⋯⋯『新屋敷セーラ』がこれまたいつものようにゆずに注意する。ちなみに『セーラ』という名前でもわかるとおり母さんは外国人で出身はイギリスだ。髪色も黒ではなく栗色をしていて瞳も青い。あと、妹のゆずも母の遺伝なのかサイドテールの髪色は栗色だ。ただ瞳は黒いけど。
「で、でも〜⋯⋯蓮二さんに会いたいもん! お父さんの仕事って探索者に会うことが多いでしょ! だから、一回だけでも⋯⋯ね?」
「コラ、ゆず!」
「ハッハッハ。まあまあ、セーラ」
と、ここで、これまたいつものように父さん⋯⋯『新屋敷健二』が母を宥めるまでがワンセットだ。
「ゆずが探索者を大好きなのは父さんよくわかっているよ。だって、毎日同じ頼み事を言ってくるくらいだからね」
「うん! だって探索者って、かっこいいもんっ!」
「そうだな〜⋯⋯⋯⋯今は仕事がバタバタしてて忙しいけど、もうちょっとしたら落ち着くと思うからその時にでも会社見学できるよう手配しておくよ」
「ホントっ?! やったー!! ありがとう〜お父さん! 大好きっ!!!!」
「ハッハッハ。そうか、そうか〜」
「ちょっとケンジさん⋯⋯いいの?」
「何、大丈夫さ。勝己さんもゆずのことは娘のように可愛がっているしな」
「やったー!」
「あら? 娘って言えば⋯⋯勝己さんの娘さんって、確かソラと同じ高校じゃなかったかしら?」
「おお。たしか、そうだったなー!」
「え? そうなの、お兄ちゃん?」
と、ここで俺にみんなの視線が一斉に向けられた。
おそらく、胡桃沢星蘭を言っているのだろう。なので、
「⋯⋯さあ、知らないな〜」
ちゃんとシラを切っておいた。
え? なんで嘘ついたのかって?
だって、絶対こうなるし!
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胡桃沢星蘭を知っている
↓
会わせてくれと妹に頼まれる
↓
妹大好きな俺が妹の頼みを断ることなどできないだろう?
↓
以後、ずっと妹に頼まれる
↓
エンドレスサマー
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こうなることは目に見えているので、丁重にシラを切らせていただきました。
「そう⋯⋯なんだ」
「?」
俺がシラを切った瞬間、ゆずが一瞬戸惑ったように感じた⋯⋯⋯⋯が、
「まーでも、人見知りのお兄ちゃんが女の子と話すなんてあり得ないもんね!」
「おい、そこの妹。言葉のナイフに気をつけろ」
「だって事実だしぃ〜」
「いいか、ゆず? お兄ちゃんは人見知りじゃなくて友達を選んでいるだけなんだぞ?」
「物は言いようだね、お兄ちゃん。でも、ゆずはそんなお兄ちゃんが大好きだよ!」
「⋯⋯お、おう(真っ赤)」
「でも、ゆずの言う通りよ、ソラ。高校生になったら友達の一人くらい作って家に呼びなさい」
「か、母さんが、ゆずより言葉のナイフがエグい件について」
「いや! 今のはお前が悪いぞ、ソラ! お前がいつまで経っても家に呼ぶレベルの友達を作らないからいけないんだぞ!」
「と、父さんまで⋯⋯」
「別に無理に友達を作る必要はないがお前は少し人嫌いするところがあるからな? そういうところは少しずつでいいから改善していきなさい。そのほうが世界は広がるぞ」
「⋯⋯父さん」
なんだかんだで俺は父さんが好きだ。いつもこうやって冗談混じりではあるが、ちゃん俺のことを心配していることはわかる。
父も母も妹も冗談混じりで「友達を作りなさい」とは言うが強制はしない。実際俺に友達ができないことを本当に心配しているからこそだろう。これは元いた地球の時も変わらない。
この『家族との関係性』が元いた地球と変わっていないのは、正直すごくホッとした。
まーでも並行世界線のここでは唐沢と胡桃沢を家に連れてこようと思う。
父さんも胡桃沢の父親を知っているらしいからちょうどいいかもな。
そんなことを考えていると、テレビから気になるニュースが流れてきた。
『本日の『探索者さんいらっしゃ〜い!』のコーナーは、今最も勢いのある探索者集団『獅子奮迅』のリーダー梅之助さんと、そのパーティーメンバーにして大注目の新人『高校生探索者』の竜ヶ崎真司くんにお越しいただきましたー!』
「⋯⋯あ」
テレビには竜ヶ崎が『今、大注目の高校生探索者』としてインタビューを受けていた。竜ヶ崎はこういうテレビに出ることに慣れているのだろう⋯⋯ソツなくインタビューをこなしていた。
「すごいわね、この子。ソラと同じクラスの子でしょ?」
「⋯⋯え? あ、うん」
「え?! そうなの、お兄ちゃん! 今度紹介して!!」
「いや、俺そいつとは面識ないっていうか⋯⋯」
「もう! お兄ちゃんのぼっち!」
「おい、やめろ妹。言葉のナイフってのはだな⋯⋯」
「あーはいはい、言葉のナイフ間に合ってまーす」
「くっ! こいつ⋯⋯!?」
「ゆずもいいかげんお兄ちゃんからかうのやめなさい」
「はーい」
「ソラ⋯⋯あんたももう少し、妹に遊ばれないようしなさい」
「うぐっ!? な、なんで、俺まで⋯⋯」
こうして、いつもゆずにからかわれるのもまた俺の日常だ。
俺は基本『妹ラブ』なので、からかわれるのも『愛情の一つ』として楽しんでいる。しかし、母さんは今みたいに「ゆずが調子に乗るからあまり甘やかさないで」と俺にちょくちょく本気モードで注意するときがあった。
だが、俺は「別に妹が兄に甘えるのは問題ないのでは?」と思うのだが、母さんは「あの子はあんたが思っているほど単純じゃないの。だから、たまには本気で注意して!」とゆずに聞こえないよう俺に強めに伝えたりする。
当時の俺は母さんの言っていることを全然理解できていなかった。⋯⋯が、それがのちに『大きな問題』へと発展し、自分にそれが降り注ぐことになるのだが、それはまだもう少し先の話だ。
まーこんな感じで、俺はいまだ家族に『探索者になった』ということを告げていない。
もし、告白したらどうなるだろう⋯⋯。
家族はよろこんでくれるのだろうか⋯⋯。
それとも、ショックで寝込んでしまうだろうか⋯⋯?
いずれにしても、どこかのタイミングでカミングアウトしなきゃいけないのだが、そこは『成り行き』ということで一旦保留にした。
そして、俺は今日もダンジョンに潜る。




