018「胡桃沢星蘭の合流」
ゲリラ投稿 (ニチャァ)
「え? なんて?」
「だ、だからぁ! わ、わわわ、私もあなたたちの仲間に⋯⋯⋯⋯混ぜなさいよっ!!」
「「ぽかーん」」
一週間前、お昼休みに売店でいつもの『あん&バターロール』と『コーヒー牛乳』を買った俺と唐沢は、いつもの屋上へ向かうと階段のところで胡桃沢に待ち伏せされ、そんなことを言われた。
「お、おい、胡桃沢! お前自分が何言ってるのかわかってるのか?!」
唐沢がそう言うと、
「わかってるわよ! いいでしょ! 私だって探索者に興味あるし! だから、ソラ君の探索者活動に興味あるのよ!!」
「なんで俺が探索者ってことを君は知ってるんだ? 前は『探索者じゃない』と俺ははっきりと否定したはずなのに⋯⋯⋯⋯なぜだ?」
「えっ!? あ、いや、その、そ、それは⋯⋯⋯⋯こ、琴音さんから聞いたのよ!」
「え? 琴音さん? どうして⋯⋯」
「わ、私と琴音さんは⋯⋯⋯⋯仲の良い『従姉妹』なんだからっ!!」
「ええっ?! い、従姉妹⋯⋯?」
「そ、そうよ! 従姉妹! それも仲の良い従姉妹よ! も、もちろん彼女には『絶対に言わないでね』って言われてたけどソラ君本人にならいいでしょ!?」
「え? あ、まあ⋯⋯そうだけど(一応、唐沢もいるんだけどな)」
「ていうか、ソラ君、前に私に話しかけてきた時点ですでに探索者だったでしょ! なのに私に嘘ついたぁぁっ!!」
「い、いや、しかし⋯⋯あの時はまだ初対面だったし⋯⋯」
「嘘ついたぁぉ〜〜っ!!」
「い、いや、でも⋯⋯」
「嘘⋯⋯⋯⋯ついたじゃない(グス)」
「っ?!」
見ると、胡桃沢が目に涙を溜めていた。ていうか、今にもこぼれそうなんだがぁぁ〜〜っ!!!!
え? これって俺のせいなの? そんなわけないよね? むしろ、胡桃沢の強引な押しだよね⋯⋯これ?
なのに、それなのに、なぜか俺がすんごい悪者みたいなんだが⋯⋯っ!?
「⋯⋯ソラ」
「ん? 唐沢?」
「⋯⋯お前の負けだ」
えええええええええええ〜〜〜〜〜っ!!!!
「嘘、ついた⋯⋯ソラ君が先に⋯⋯嘘つい⋯⋯」
「ごめんなさい、胡桃沢さん。俺が悪かったです」
はい。謝りました。
33−4で謝りました(なんでや! 阪神関係ない⋯⋯)。
「それじゃあ、私もあなたたちの仲間ということでいいわね! 異論は認めませんっ!!」
「「は、はい⋯⋯」」
「やったぁぁ〜〜〜っ!!」
「!」
ドキン!
え?
ドキドキ、ドキドキ⋯⋯。
あ、あれ?
胡桃沢の笑顔を見た瞬間、何かすんごい心臓⋯⋯バクバクするんだけど? あと、顔もなんか熱いし⋯⋯。
俺は何となく二人にはこの今の状態を見られたくなかったので顔を隠すように俯く。その横では唐沢がテンション高くしゃべっていた。
「まーぶっちゃけ、俺は胡桃沢が一緒に仲間になってくれてうれしいぜ〜。美少女だし、胡桃沢の父親ともつながりが持てる可能性だってできたしな!」
「え? お父様? あなた、お父様に興味あるの?」
「おう! ファンだ!」
「⋯⋯きっしょ」
「おいぃぃぃ! ひどいな! お前の親父さんのファンなんて普通に多いだろ?! なんせ、元B級探索者なんだし! それに一代で世界的企業にまで成り上がった武勇伝とかも本になってるし! 有名人じゃねーか!」
「! ふ、ふ〜ん⋯⋯な、なかなか、勉強熱心じゃない? お父様のこと、そこまで好きだなんて見所あるわね⋯⋯」
「ありがとうございまーーーーすっ!!!!」
「⋯⋯きっしょ」
「て、おーーーいっ!! 言葉の刃が切れ味良すぎぃぃぃ!!!!」
俺が気持ちを落ち着かせている間に、どうやら二人とも仲良くなれたようだ。
まー、胡桃沢の父親は別にどうでもいいが、俺にとって胡桃沢は初めての女の子の友達ということもあって、まだ胸のドキドキが少し残っている。
今までまともに女子と話したことなんてなかったからか、だいぶ緊張したな〜。
え? それだけだよね?
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とまあ、そんなことがあって今に至っている。
それから数日経ち3人でいるのに慣れた頃、今度は俺が学校終わりにギルドに向かうと「俺(私)もついていく」と唐沢と胡桃沢が言い出したので、それから一緒にギルドにもついてくるようになった。
まあ、唐沢も「探索者になりたい」と言っていたし、胡桃沢も「探索者に興味がある」と言ってたから別にいいんだけど。
あ、でも、唐沢あたりは俺がダンジョンに入っている間、ギルドでいろいろと調べものとかしているかもな。胡桃沢に関しては、まあ⋯⋯琴音さんと従姉妹らしいから琴音さん目的で遊びに来ているようだが⋯⋯。
「ま、本人たちも楽しんでいるようだから問題ないだろう」
などと一人考えながら、俺はいつも通り二人を残してダンジョンへと入っていった。
「ちょっと〜⋯⋯⋯⋯セイちゃん?」
「(ビクッ!)は、はい⋯⋯?」
「聞いたわよ〜? 私たち『従姉妹』なんだって?」
「あ、いや、その、あのぉ〜⋯⋯⋯⋯」
琴音はソラがいなくなるや否や、胡桃沢への『尋問』を始めた。
「どゆことかなぁ〜?」
「じ、実は、かくかくしかじか⋯⋯」
と、胡桃沢はすぐに白状った。
「へ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜⋯⋯⋯⋯なるほど」
「え? なるほど?」
「⋯⋯あんたも健気ねぇ〜」
「は、はぁっ?!」
「あんた、どんだけソラ君好きなのよ?」
「は、はぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜っ?! な、ななな、何言ってるんですか、琴音さん! そ、そんなわけ⋯⋯」
「いやいやいや、この状況でそのセリフ、もう何の意味もないから」
「琴音さんの言う通りだぜ、胡桃沢。お前⋯⋯⋯⋯⋯⋯バレバレよ?」
「なっ?! か、唐沢ぁぁぁぁ〜〜っ!!!!」
と、胡桃沢がキレて唐沢の頭をむしりかかる。
「い、痛てててててて⋯⋯っ!! い、いやいや、お前のこれまでの行動を見てたらもうその答えしかない⋯⋯痛い痛い痛い痛いっ!!!!」
「そうよ、セイちゃん。あんた自分が思っているより気持ちダダ漏れよ? それが嫌ならもう少し|感情を表に出さないよう《ディフェンス》頑張りなさい」
「がーん!」
セイちゃんは、琴音の『クリティカル正論』にあえなく撃沈した(※チーン)。




