146「ある少年(2)」
——それから3日後
湊くんにお兄ちゃんを紹介する日がきた。
場所は私の家の近くの公園で⋯⋯ということになったので、今はその公園に湊くんと二人で向かっていた。
「桃華ちゃん、ありがとう。まさかこんなにも早く、お兄さんに会えるとは思ってもみなかったよ」
「ううん、気にしないで。お兄ちゃんもちょうど時間が合うから⋯⋯って言ってたし!」
湊くんが「思ったよりも早く会えてよかった」と言って満面の笑顔をくれた。私はそれだけで頑張った甲斐があったと心の内でガッツポーズを上げる。
「あ、お兄ちゃーん!」
「おお、桃華。ここだー」
公園が見えると、ちょうど入口のほうでお兄ちゃんが立って私たちを待っていた。
「ごめん、待たせちゃった?」
「いや、今来たところだから大丈夫だよ」
「あ、この子がその⋯⋯友達の湊修二くん。高校生になったら探索者になりたいって言ってて、それでお兄ちゃんのファンだよ!」
「は、初めまして⋯⋯湊修二と言います! 唐沢利樹さんに会えて光栄です!!」
そう言うと、湊くんは少し緊張しながらお兄ちゃんに挨拶をした。
「初めまして。桃華から聞いているよ。桃華といつも仲良くしてくれているんだってね、ありがとう!」
お兄ちゃんがそう言って笑顔で湊くんに挨拶をした。
「そ、そんな、とんでもないです?! 僕はあまり友達がいなくて⋯⋯。そんな時に桃華さんが友達になってくれて感謝しています!」
そう言って、湊くんが頭を下げた。
「そうなんだ。桃華、えらいじゃないか」
「べ、別に、そんなのえらくも何ともないよー。私のほうこそ、勉強のこととかいろいろと助けてもらってるし⋯⋯!」
「ううん、桃華ちゃんは僕が少し教えるだけですぐに理解するから僕も教えてて楽しいから⋯⋯そんな助けてあげているなんてこと思ってないよ」
「ううん、そんなこと⋯⋯私は本当に感謝して⋯⋯」
「はいはい⋯⋯わかりました。二人が仲が良いことだけはよくわかったよ」
そう言うと、お兄ちゃんがニヤリと私の嫌な笑顔を向ける。
「もう! お兄ちゃん!」
「ははは⋯⋯照れるなよ」
「て、照れてなんか⋯⋯いな⋯⋯!?」
「さあさあ、そんな話はゆっくりとウチで話そうよ」
「もう、そうやってはぐらかし⋯⋯⋯⋯え? ウチで? いいの?」
3日前、お兄ちゃんに今日の話をした時、「どういう子かわからないから、すぐに家に案内するのはどうかなぁ〜⋯⋯それに彼も気を使うかもしれないし⋯⋯」と言っていたのに、そんなお兄ちゃんが家に湊くんを誘うだなんて⋯⋯。
「ああ。桃華と仲良くしてもらっているみたいだしね。だから、公園じゃなくてゆっくり家でお話しよっかなって」
「い、いいんですか?!」
「ああ、いいぜ。それじゃ、行くか」
「え? あ、えーと⋯⋯よくわかんないけど⋯⋯行こ、湊くん!」
こうして、湊くんを急遽ウチに案内する話となった。
よくわかんないけど、家でだったら落ち着いて話せるからよかったかな。
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「さ、中に入って。湊くん」
「お邪魔しま⋯⋯うわぁ、すごい天井が高い! それに家の中がすごく広いね!」
湊くんがウチに上がるや否や、驚きの連続⋯⋯というような表情を見せた。湊くんが私の『自慢の家』を褒めてくれたことに私はすごく喜んだ。
ちなみに、ウチがこんな豪邸になったのはつい最近の話だ。それまでは家族4人で古くて狭いアパートで暮らしていたの。でも、お兄ちゃんが探索者として有名になって、それからさらに活躍して気づけばすごいお金を稼いでいるとお母さんとお姉ちゃんから聞いた。
そんなとき、お兄ちゃんが「豪邸を建てるぜ!」と言って、今の家が手に入った。お兄ちゃんが探索者で稼いだお金がどれほどかはわからないけど⋯⋯そんな、まだ価値もわからない子供の私だけど⋯⋯それでもお兄ちゃんが建てたこの豪邸がいかにすごいか、ということだけはわかる。
ウチにはお父さんがいなくて、それでお母さんとお兄ちゃんが一生懸命家を支えてくれた。そして、そんなお兄ちゃんが探索者で成功を収めて今の私たちやこの家がある。
そんなお兄ちゃんの探索者としての活躍で建てたこの家は、割と駅から近い一等地のところに建てた。何と3階建ての一戸建てだ。改めて、客観的に見ても3階建ての家ってすごいと思う。
1階は玄関以外にはお母さんの車や将来お兄ちゃんやお姉ちゃん、そして私が免許を取ったあと、車を収納できるようにと屋内駐車場となっている。
私は「車の免許って、さすがに気が早いよ、お兄ちゃん」と呆れたが、「将来、家族全員がいつでも集まれるように考えて作ったんだよ」と言っていた。それは、お兄ちゃんがいかに私たち家族を最優先に考えているんだなということがわかった一言だったので⋯⋯とても嬉しかった。
とはいえ、本人にそんなこと言ったら調子に乗りそうなので面と向かって言うことはないけどね⋯⋯うふふ。
「生活魔法で異世界無双〜クズ魔法と言われる生活魔法しか使えない私が、世界をひっくり返すまでのエトセトラ〜」
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mitsuzo




