139「スカウト⑤」
——関東S1
「さーて⋯⋯準備はいい?」
「は、はい!」
「あなたの実力、見せてもらうわよ」
「よ、よろしくお願いします!」
「⋯⋯⋯⋯」
メイベル、明凛共にノリノリである。
現在、俺たちはSランクダンジョンである『関東S1』に来ていた。褐色ビキニアーマーパイセンことエリンさんの実力を試すためだ。
「ようこそ、いらっしゃいました。ソラ様、メイベル様、明凛様」
「おお、遥」
「久しぶり」
「あ、遥さん。お久しぶりです」
この関東S1のギルド内だけだが、俺の関東S1での専属受付の一ノ瀬遥だ。相変わらず銀色のロングヘアーがお似合いである。
「今日はこれからダンジョンに入りますのでよろしくお願いします」
「かしこまりました。いってらっしゃいませ」
「さて、地下一階だけど、とりあえず、ここから彼女の実力を見てましょう」
「そうね。早速実戦だけど大丈夫?」
「は、はい。大丈夫です」
そういうと、エリンさんはカメラ道具をマジックバックから取り出した。
「基本、撮影は私たちから3メートルの範囲内にいてもらってそこから撮影してもらうわ。この範囲であれば魔物に襲われてもフォローできるから」
「は、はい」
「じゃあ、まずは撮影の実力見せてもらうわよ」
ということで、カメラ撮影が始まった。
「行ったぞ、メイベル!」
「まかせて!『聖なる射手』!!」
「そこだぁぁ!!」
「す、すごい⋯⋯。こ、これが、S級探索者⋯⋯3人の動きを追うので必死だよ!?」
エリンはカメラを回しながら3人の動きを的確に捉えながら感嘆の声を漏らしていた。
「それにしても、ソラくんは本当にS級探索者なんだな⋯⋯。実際にその実力を目の当たりにすると唖然とするな。まだ探索者になって1年足らずなのに⋯⋯まるで次元が違うな、はは」
エリンはソラの急速な成長を遂げた実力を目の当たりにして、もはや乾いた笑いしか出てこなかった。
「うん、カメラの技術は合格だな」
「ありがとうございます!」
戦闘後、早速明凛が撮影した録画を確認。どうやらエリンさんのカメラ技術は問題なかったようだ。
「ていうか、エリンって撮影うまいのね。私だと動きながらだともっとブレたりするのに⋯⋯」
「あ、はい。趣味でカメラをやっていますので」
そう。魔物との戦闘を撮影の場合、対象者の探索者の動きを自分も動きながらの撮影となる。三脚を置いて定位置で撮影するのではなく動きながらの撮影となるので、通常の『手ぶれ補正』がついているカメラだとしても綺麗に撮るのは難しいのだ。
しかし、エリンの撮影したものはその手ブレがほとんどなかった。
「カメラの技術は問題ないわね。じゃあ最後はいよいよ魔物の対処の確認だけど⋯⋯」
「エリンは魔物から逃げるようなスキルとか持っているの?」
「は、はい。逃げるというか『気配を消す』っていう感じですかね」
「「気配を消す?」」
「⋯⋯なるほど。もしかして、エリンさんのそのスキルって」
「うん。気配遮断だよ」
「「「おお!」」」
この『気配遮断』は俺も持っているが気配を完全に消せるレアスキルの一つだ。
「『気配遮断』を持っているとは⋯⋯」
「一体どうやってこのスキルを?」
「はい。この間レア物スキルのよく出るダンジョン⋯⋯関東B6のダンジョンなんですが、そこで、たまたま得ることができたので」
「へぇ〜。そんなダンジョンがあるんだ」
「うん。関東B6の30階層なんだけど⋯⋯そこに遺跡のようなダンジョンがあって、そこに生息する『クイックビー』から⋯⋯」
「え? クイックビー? たしか30階層にもクイックビーが出る場所があるけど、そことは別にクイックビーが出る場所があるんだ」
「うん。あ、ちなみに最初は16階層のクイックビーで『魔力洗浄』をゲットする目的で攻略してたんだけど⋯⋯」
「え?『魔力洗浄』? それって⋯⋯」
たしか、以前俺が『魔力洗浄』をゲットしてしばらくはギルドで探索者希望者に『魔力洗浄』を施すというアルバイトをしてたことがあるけど⋯⋯。
「うん。ソラくんの後、私たちのクラン『一進一退』がそのアルバイトを引き継いだんだよ」
「そうだったんですか」
そう、あの後いろいろと身辺が慌ただしくなった俺はアルバイトをあまり出れないでいたのだ。
「ソラくんが忙しくなってアルバイトにあまり出られずにいたというのを受付の⋯⋯ほら、ソラくんが親しい⋯⋯」
「ああ、琴音さん⋯⋯ですか?」
「そうそう。琴音さんからその話を聞いて私たちが名乗りをあげたってわけさ」
で、その後、エリンさんのクランで『魔力洗浄』を必ずゲットできる16階層のクイックビーが出るあの『モンスターボックス』にチャレンジしたそうだ。
「それに、その『モンスターボックス』で『魔力洗浄』をゲットしたおかげで、B級探索者に上がることもできたんだ」
「ああ⋯⋯なるほど。たしかにあの『モンスターボックス』って、1000匹以上のクイックビーを倒す必要がありますからレベルも上がりますもんね」
「ああ。ただ、その後⋯⋯」
エリンさんが言うには、アルバイトをするようになって安定収入と、またB級探索者になったおかげで、皮肉にもエリンさん以外のクランメンバーが『そこで満足してしまった』とのことだった。
「そうなんですね⋯⋯」
「⋯⋯ああ。私も最初は『B級探索者』で満足しようと思っていたのだが⋯⋯しかし、どうしても私は試したかったんだ⋯⋯自分の限界を」
「エリンさん」
「そんな状態の時に、タイミングがよく君たちがカメラマンを募集しているという話を聞いてね。それで応募したってわけさ」
そう言って、エリンさんが満面の笑顔で見せた。
「いいじゃないか」
「明凛さん!」
「通常B級探索者まで行けば、かなりの収入を得られるからそこで満足する奴らが多い。そしてエリンのような更なる向上心を持つ奴は逆に少ない。理由はもちろん、命に関わる仕事だからだ」
「そうそう。そして、ここが最初の『分岐点』でもあるのよ」
「メイベルさん!」
と、明凛とメイベルが話に入ってきた。
「エリンのような奴ならもっと上に行けると思うぞ」
「そうね。それにこれからカメラマンをやっていけば私たちの動きを間近で見ることもできるし⋯⋯。何だったらエリンにも戦闘に参加させることもできるしね!」
「えっ?! ということは、私はカメラマンとして⋯⋯採用⋯⋯ですか?」
「「(ニコッ)」」
明凛とメイベルが同時に笑顔を浮かべる。
「合格よ。あれだけの撮影技術もあって、さらに『気配遮断』のスキルもあるなら問題ないわ」
「ええ。それに、カメラマンって言っても、それだけの向上心がある人のほうが一緒に帯同してて気持ちいいもの」
たしかに。『帯同』するということはエリンさんも撮影しながらでも戦闘にフォローするような形でも参加できれば経験値が得られる。だから、一緒に帯同するカメラマンは、エリンさんのような向上心の高い人が俺たちにとっても気分がいい。
「あ、ありがとうございます! これからよろしくお願いします!!」
「「「よろしく、エリン(エリンさん)!」」」
「生活魔法で異世界無双〜クズ魔法と言われる生活魔法しか使えない私が、世界をひっくり返すまでのエトセトラ〜」
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mitsuzo




