134「ダンジョン探索とSNS発信」
「もう、どうせなら⋯⋯⋯⋯メイベルも巻き込んで三人でビジネスを始めましょう」
「何? 何? 何すんの?」
明凛の言葉を聞いたメイベルがワクワク顔で近づいてきた。
「メイベル。さっきソラ君にも伝えたけどこれから私たちと一緒にビジネスをやらない?」
「ビジネス? ダンジョン探索ってこと?」
「まあ、ダンジョン探索ももちろんだけど、それ以外のこともやっていくわ」
「な、何をやるのよ⋯⋯?」
「ズバリ! Yo!Tube発信よ!」
「「⋯⋯は?」」
「三人でYo!Tubeでチャンネル開設するの!」
「「え? ええええええええ〜〜〜っ!!!!!」」
俺とメイベルの驚きの絶叫がこだまする。
「何よ? そんくらい普通でしょ⋯⋯今どき」
「い、いや! たしかにそうですけど⋯⋯!!」
「それに勝算はあるわ。自分で言うのも何だけど私とメイベルは元々ネームバリューはあるし、ソラ君だって、これまでの活躍でも目立っていたのに、この間の『探索者世界会議』の流出動画でさらに注目されたでしょ?⋯⋯⋯⋯『【新屋敷ソラは何者だ?《Who is Sora Arayashiki?》】』だっけ?」
「お、おおおおおお、おまっ!? ちょっ⋯⋯そ、それはやめっ?!」
わぁぁぁ、やめろぉぉ! 傷を抉るなぁぁぁっ!!!!
「とにかく! この三人ならYo!Tubeチャンネルを開設したら間違いなく高い収益が見込めるわ!」
あれ? 何か明凛の目が『¥』に見えてきた。
「ということで、決定⋯⋯」
「ちょ⋯⋯待ちなさいよっ!!!!」
メイベルがめっちゃ顔を赤くして抗議の声を上げた。
「あ、あ、あんたバカじゃないの! な、ななな、何でそんなこと、しなきゃいけないわけっ?!」
「だからビジネスよ、ビジネス」
「そ、そんにゃ、そんにゃのダメに決まってる⋯⋯じゃないっ!!」
うわぁ〜、さらに顔が赤くなった。よっぽど恥ずかしいんだろうな〜。
「何で? だって、これはソラ君のためにやっていることなのよ?」
「⋯⋯え?」
「まーメイベルはその辺よくわからずにここまで来たみたいだから改めて説明してあげる」
そう言って、明凛が事の経緯を話し始めた。
「まず、ソラ君たち探索者集団『新進気鋭』は今、別々で活動をしている状態なの。それで単独探索者で活動する状態になったソラ君に私が声をかけたってわけ。で、立ち上げたばかりの事務所が手持ち無沙汰になっているようだったから私がビジネスの話を持ちかけたのよ」
「え? そうなの?」
メイベルが俺を見て事の真意を確認する。
「ま、まー、そこまで話をした覚えはないけど、で、でも、ぶっちゃけ、明凛の言っていることは概ね正しい」
「そう⋯⋯なんだ⋯⋯」
メイベルが事の真相を知って、ふと考え込んだ。
「⋯⋯というのは『建前』よ」
「え? た、建前⋯⋯?」
「ど、どゆこと⋯⋯?」
メイベルと俺がポカーンとする中、明凛が口を開く。
「ソラ君、メイベル⋯⋯あなたたちも賢者から話は聞いているでしょ? もう一人の見つかっていない転移者⋯⋯『最後の転移者』のこと」
「も、もちろん聞いてるわよ! で、でも、何でそんな話がここで出てくるのよ!」
「まず、『最後の転移者』の姿が今まで見つからないってことは、その転移者は『意図的』に身柄を隠しているのは間違いない」
「ま、まぁ⋯⋯確かに⋯⋯」
「そして、その意図が何かはわからないけど、少なくともこっちの状況を探っているはず。ならば、逆にこっちから相手を炙り出す手段として⋯⋯⋯⋯Yo!Tube発信を利用するのよ!」
「「は、はぁぁぁぁ?!」」
********************
「い、いや、Yo!Tube発信でどうやって『最後の転移者』を炙り出すんだよ!?」
俺は思わず、敬語を忘れて『素』の言葉でツッコんだ。
「『転移者』を煽るのよ」
「はぁ?! あ、煽るっ!! あんた、何言ってるのよ! そんな機密情報ネットで話せるわけないじゃない!?」
今度はメイベルが激しくツッコむ。
「大丈夫、大丈夫。何も『転移者』なんて単語は出さないわよ。ただ、私たちは『転移者』に向けて煽るだけでいいの」
「「⋯⋯⋯⋯」」
俺とメイベルが呆然と立ち尽くす。
「あら? リアクション悪いわね?」
「あ、あああ、当たり前でしょ! あんたが言っていることってつまり『隠れてないで出てきなさいよ!』とか『いつまで隠れているつもり!』みたいなことを言うってことでしょ!」
「そう」
「いや、そんなので転移者が出てくるわけないじゃない! これまでずっと隠れてきたような奴なのよ!」
「本当だよ! そんなので出てくるならそれこそ『転移者』、アホだろ?! これまで隠れてきた意味が無くなるんだし!」
俺もメイベルの言葉に乗っかって明凛に異議申し立てを行う。
「まあ、あなたたちの意見はもっともね。だけど⋯⋯⋯⋯⋯⋯何もやらないよりはマシでしょ?」
「「え?」」
すると、明凛がスッと真顔になった。
「現在、世界中の探索者ギルド総出で『最後の転移者』を探している。しかし、いまだ『手がかり』すら掴めていない⋯⋯」
「あ、ああ」
「わ、わかってるわよ、そんなこと⋯⋯」
「だから、今は何でも試してみることが大事でしょ⋯⋯って言いたいのよ」
「「っ!?」」
「だから、悪いけど二人には協力して欲しいの。私一人では力不足なの⋯⋯」
「明凛⋯⋯」
「明凛⋯⋯さん⋯⋯」
しばらくの間三人に沈黙が流れる。
「あ、あの⋯⋯明凛さん⋯⋯」
「何、ソラ君?」
「あんたそれっぽいこと言ってるけど、ぶっちゃけ、ただこの三人でYo!Tube配信がしたいだけだろ?」
「ちょっ?! 何を言っているのよ、新屋敷ソラ! 明凛はマジメな話をして⋯⋯」
「あら、バレちゃった?」
「⋯⋯え?」
シーン。
「そりゃ、バレますよ。だって、さっきの『最後の転移者の話』なんて、どう考えても無理矢理過ぎでしょ!」
「え? え? え?」
「いや〜、やっぱり〜? 私もちょっとこじつけ過ぎたかな〜って⋯⋯てへへ」
「え? ちょ、ちょっと⋯⋯二人とも⋯⋯?」
「ごめん、ごめん。だって、メイベルがあまりにも真剣に話しを聞いているもんだから、つい⋯⋯調子に乗っちゃって⋯⋯」
「え? え? な、何? 何が一体どうなっているのよっ?!」
「えーとですね、メイベルさん。つまりですね⋯⋯明凛さんは俺たち三人でYo!Tube配信したいから適当なことを言ったということです」
「は?」
「ごめん〜メイベル〜。だって、私この三人でどうしてもYo!Tube配信したいと思ってさ。だから、つい⋯⋯⋯⋯てへ!」
「『てへ!』⋯⋯⋯⋯じゃないわよ、ゴルゥアァァァァァァァァァっ!!!!」
この後、メイベルさんがブチギレて、特級魔法『聖なる射手』をぶっ放そうとしたのは言うまでもない。二人で死に物狂いで止めました。
ていうか、何で俺まで? 俺も被害者なんですが?
とまあ、いろいろとあったが、
「わ、わかったわよ! 明凛がどうしても私と一緒にやりたいって言うなら⋯⋯⋯⋯やってあげるわよ」
「本当? ありがとう、メイベルぅぅ〜〜〜っ!!!!」
「ちょっ?! な、何、抱きついてんのよ! 離れなさいよぉぉ!!」
「⋯⋯⋯⋯」
最終的にはメイベルが明凛との『ツンデレいちゃらぶ』を見せつけながら了承した。
俺は一体何を見せられているのだろう⋯⋯。
とにかく、こんな感じで俺と明凛とメイベル三人でのダンジョン探索とYo!Tubeチャンネル開設が決定した。
「生活魔法で異世界無双〜クズ魔法と言われる生活魔法しか使えない私が、世界をひっくり返すまでのエトセトラ〜」
https://ncode.syosetu.com/n6900id/
毎日14時更新となります。
よかったら、こちらもお読みいただければと思います。
mitsuzo




