012「高校生探索者のすごさ」
「はっ!?」
「お、戻ってきたか」
ぽかーんから意識が戻った我が親友・唐沢利樹。
「大丈夫か?」
「おーすまん、すまん。ちょっと涅槃に行ってたわ。てか、それよりもお前『高校生探索者』だったのかよっ!?」
「おう」
「マジかよ⋯⋯」
「やっぱ、高校生探索者ってすごいのか?」
「あっ?!(怒) たりめーだろ、こんちくしょうめっ!!」
「なぜ、怒る?」
「羨ましいんだよ! 俺だってできれば高校生探索者になりてーよ!」
「やっぱ、唐沢も探索者になりたいのか?」
「たりめーだろ! 男のロマンだろがいっ!!」
「そういうもんなのか」
「そういうもんだよ! あ〜あ、ちくしょう〜! いいな〜お前! でも、せっかく探索者になれたんだから⋯⋯⋯⋯頑張れよっ!」
「お、おう、ありがとう」
唐沢が素直に俺を励ましたことが何となくこそばゆい。⋯⋯と同時に、唐沢も探索者になれたら、ダンジョン探索とか一緒に回ることができて楽しいだろうなとふと思った。⋯⋯気持ち悪っ!
「ところでよ、ちょっと気になったんだけど、この『恩寵』?『自動最適化』?⋯⋯てのは何だ?」
唐沢は『恩寵』に気づくと、そんな質問をしてきた。
「あ、ああ。俺もよくわからないんだが⋯⋯」
と、ここで俺は一瞬迷った。唐沢に『恩寵』についても話したほうがいいのかどうか⋯⋯と。そして、
「唐沢、この『恩寵』なんだけど⋯⋯⋯⋯」
俺は唐沢に今わかっていること全て話した。
だって、俺がもし逆だったら唐沢に話して欲しいと思うだろうから。
そして、全てを話すと、
「ぽかーん」
唐沢は、今度は「ぽかーん」を実際言葉にしてぽかーんした。
********************
「はっ!?」
「おかえり。涅槃はどうだった?」
「やかましいわ! ていうか、マジで何なんだよ、それ?! 聞いたことないぞ、こんな能力!⋯⋯⋯⋯『見聞きしたものが全て記憶され、それを基に求めるものを具現化する』とか『一度身につけた魔法やスキルはそのまま自分のものになる』とか、まるでチートじゃねーか!?」
「あ、やっぱそう思う?」
「もちのろんっ!!」
唐沢も俺と同じようにこの『恩寵:自動最適化』の能力を知って、めっちゃ食いついてきた。ですよねー。
「おい、ソラ。お前、この力使ってダンジョンに潜っているのか?」
「ああ」
「だったら、この『恩寵』の話は隠しとけ。探索者には悪どい奴もいっぱいいるらしいからな。気をつけろよ!」
「あ、ああ、わかった。『恩寵』の話はしないようにするよ」
「あと、ちょっと気になったんだが『魔力切れ』とかは大丈夫なのか?」
「魔力切れ? いや、今のところ特にないな。ていうか、何でそう思ったんだ?」
「いや、お前のこの『自動最適化』⋯⋯⋯⋯たしかにすごい能力だと思うんだが、お前はまだレベルが『2』だから魔力が少ないとすぐに魔力枯渇するんじゃないかと思ってな。魔力が少ないと魔法やスキルをそう何度も使えないだろ?」
「あーなるほど。でも、どうだろう? 特にそこまで疲れたなんて思ったことは⋯⋯一度もないかな〜?」
「へーそうなんだ。最初レベルが低いうちはすぐに『魔力切れ』を起こしがちだから、魔法やスキルを何度も使えない分、レベリングに苦戦すると聞いたことがあったんだけどな〜⋯⋯」
「へ〜、そうなんだ」
「まー今のところ問題なければいいが気をつけろよ? 魔力切れなんか起こしたら死ぬことはないが気絶くらいはすることだってあるんだからな! しかも、それがもしダンジョン内で起きたら魔物に見つかって一巻の終わりだからな?」
「なるほど。確かに⋯⋯」
たしかに今のところ魔力切れの経験はないが、唐沢の言う通り『魔力切れの危険性』は常に頭に入れておくようにしよう。意識することが大事だからな。
俺は唐沢の言葉を聞いて、ヒュッと背筋が寒くなったと同時にすごく勉強になった。
「それにしてもお前、やけに詳しいな?」
「たりめーだろ。俺だって『高校生探索者』を目指している男だぞ? これくらいの情報収集は常識だぜ! なんてったって敏腕諜報員だからな!」
「そういや、唐沢は探索者資格講座は受けたことあるのか?」
「ああ、もちろんあるよ。ていうか俺以外の他の一年生も入学してすぐに探索者資格講座を受けに行ったんだぜ?」
「マジか!」
知らなかった。初めて聞いた話だった。
あ、友達いなかったわ⋯⋯その頃の俺。
「でも、結局受かったのは『竜ヶ崎』ただ一人だけだったけどな」
「えっ? 一人だけっ!?」
「たりめーだろ! むしろ誰も受からないのが普通だっての! それくらい『高校生探索者』って珍しいんだぞ! 合格しただけでも相当すごいことなんだぜ?!」
と言って、唐沢はニッと笑いながら俺の背中をトンと軽く叩いた。
「だから、お前には頑張って欲しいんだよ!」
「! か、唐沢⋯⋯」
「頑張れ、大物新人!」




