81回目 葦原の戦争準備
撤退していく敵への追撃が行われる。
各国の軍がこれを行っていく。
浮遊砲台では敵に追いつく事が出来ないからだ。
訓練をかねたものでもある。
なにせ、どの国も実戦をしなくなって長い時間が経ってる。
訓練はこなしてきたが、それが実際にどれだけ役立つか分からない。
それを確かめるための良い機会だ。
戦闘経験のない軍勢が残った敵艦隊を殲滅していく。
ほぼ一方的となった戦いは、味方の損失の無い完全勝利となっていく。
それは良いのだが、安心できる状況でもない。
今回やってきたのは先遣部隊。
こちらの様子をうかがいに来た偵察と見られている。
実際、監視装置などの情報で、より巨大な敵軍の姿も確認されている。
まだ何も終わってない。
ここからが本番なのだ。
浮遊砲台の回収・修理がすすめられていく。
直せるものは直し、そうでないものは再生して原材料にしていく。
増産も進めていく。
造りが簡素なので、葦原の工業力でも簡単に生産できる。
性能はともかく、数は揃えられる。
そして、数は戦力になる。
残念ながら葦原の工業力は低い。
辺境の中心地なので、それなりに設備はととのってるのだが。
最新鋭の兵器を作れるほどではない。
他国の軍勢が集結するのにあわせて、整備・修理用の基地は作ってはいるのだが。
新たに艦船を作る接尾などはほとんどない。
小型の船舶を、それも民間用の宇宙船を作るのがせいぜいだ。
そんな葦原にとって、無人の浮遊砲台は作れる最高の戦力と言えた。
これしか作れないともいう。
本格的な軍艦などを作るには、設備が足りない。
基本的な知識や技術も足りない。
なにより、時間がない。
これは他の兵器にも言える事だ。
特に強力な兵器や武器は、作るのに手間がかかってしまう。
生産力や工業力の低い葦原の手に余る。
なので、これらの生産から葦原は手を引いていた。
時間をかけられるならともかく、そんな余裕は無い。
一応、艦隊なども編成している。
宇宙軍として、宇宙艦艇を揃えてはいる。
だが、規模はそれほど大きくは無い。
新規で作った艦艇もあるにはあるが、数は少ない。
それらもそれほど強力というわけではない。
葦原の工業力では、小型艦艇を作るのが限界だからだ。
だからこそ、宇宙艦隊の編成を切り捨てていた。
作ろうにも作れないのならば、無理をしても仕方が無いからだ。
まずは製造設備から作っていく必要がある。
そんな時間があるわけもない。
だいたいにして、操作する人間を用意できない。
人を訓練するにも、やはり知識や技術、経験が必要になる。
葦原にはこれらは無い。
ならばと割り切ったのだ。
現状で確実に揃えらえるものを作っていくと。
出来るものを出来るだけ作って、戦場に広く分布する。
作るのに時間と手間がかかるものは最小限にする。
ある程度の増強はしても、無理な拡大はしない。
無人の浮遊砲台の量産はこうしてなされていった。
防衛だけなら、そう悪くは無い判断である。
他国の軍勢が集まるのも、こうした割り切りにつながっている。
大型で強力な戦闘艦艇と、それを操る熟練した軍人。
これらは他国に任せていく。
余裕の無い葦原はそうするしかなかった。
かわりに、集まった艦艇の補修や整備。
人員の休息などを、葦原は受け持っていく。
こうした役割分担するしかない。
葦原の戦力は、それだけ少ないのだから。
軍備を揃えるための生産設備も拡大している。
いずれ稼働していく事になる。
だが、大分先になる。
まずは修理・整備施設を優先するしかないので、どうしても生産は後回しになる。
仮に生産を優先しても、扱える人間がいない。
これが出来上がるのも、だいぶ先になる。
こうした事も考え、軍備の拡充よりも、各国軍の受け入れ体制を強化していった。
この戦争の中で出来る事。
それを考えた時、葦原はこうするしかなかった。
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