77回目 協力してくれない者達のために命を使うつもりはない、そんな世界は滅びるべきである
「支援が得られないなら、俺たちは撤退する
地球も含め、どうなろうと知った事ではない」
世界各国に伝えたことである。
異星人による侵略、それによって陥落した二つの星。
日本政府の非道な対応。
それらを伝えるのと同時に告げた言葉だ。
「俺たちに戦力は無い。
それでも、何とか敵を食い止めるつもりだ。
だが、増援がなければどうにもならない」
事実である。
脱出者の戦力だけで侵略者を撃退することは出来ない。
「だから増援を送ってもらいたい。
それがなければ侵略者は止められない」
当然の要請だ。
実際、脱出者だけで対処できるわけがない。
各国に軍隊を出してもらわねばどうにもならない。
だからこその撤退宣言である。
軍隊を送り込まないならば、葦原から撤退すると。
そうなれば、異星人は地球人類の勢力圏に突入してくる。
日本の辺境領土だけの話で終わらなくなる。
葦原がギリギリの限界点なのだ。
そこを突破されれば、他の国の領土が入り交じることになる。
どこかの国が少なからぬ損害を受ける事になる。
「それを回避したいなら、軍隊の出撃を。
でなければ葦原は必ず突破される」
把握出来る敵戦力を分析して出て来た結果だ。
脱出者達だけで対処出来る相手ではない。
暫くはもちこたえるけども、最終的には突破される。
「そうなれば俺たちは死ぬ。
全滅する」
これもまた避けがたい予測だ。
「ならば、生き残るために脱出する。
何の助けもよこさないお前らのために死ぬつもりはない」
それが葦原に脱出してきた者達の意思だった。
誰かのために死ぬつもりなど全くない。
自己犠牲などお断りだった。
そんな事をしても、何の報いもない。
死んでから「あいつは立派だった」と言われても何の価値もない。
そんな事をいうくらいなら、生きてる間に支援をしろという話だ。
生きてる間は何もせず、死んでから声だけかける。
安上がりで何の負担もない、ふざけた態度だ。
そんな事よりも、必要な支援を生きてる間に送り込めという事になる。
死んでから紙切れでしかない表彰状と、何の足しにもならない褒め言葉をおくられても無意味でしかない。
そんなもので死地に追いやるなら、害悪と言うべきだろう。
邪悪といってもよい。
葦原に逃れてきた脱出者達はそれを赦さなかった。
明確な支援をしろ、でなければ死ね。
そう各国に突きつけていった。
とはいえ、芦原に逃げてきた脱出者達にとっても、これは諸刃の剣だ。
確実に各国は(理不尽極まりない)怒りを抱くだろう。
必要な支援をよこせという当たり前の事を言ってるだけなのに。
そんな逃げや日和見を脱出者達に叩き潰され、逆ギレしていく。
確実にそうしてくるが予想できた。
最悪の場合、侵略者と戦う前に各国の軍隊が脱出者達を攻撃するかもしれない。
制圧して殲滅し、それから侵略者との戦いに臨むのかもしれない。
そうなる可能性も十分にあった。
それでも脱出者達はこうするしかなかった。
脅して少しでも有利な条件を引き出さねばならなかった。
他に道は無い。
その為の対策も立てていく。
各国の軍が攻撃してくる場合に備えて。
可能な限りの反撃の用意を。
そして、少しでも多くの人間が脱出出来るように。
こうした準備も進めていく。
侵略者に向けての戦争準備。
それは同時に、やってくる各国の軍への反撃手段でもあった。
そのどちらにも遣えるように準備をしていく。
これぐらい警戒していないと、生き残れない。
それくらい各国関係は熾烈なものだった。
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