70回目 情報拡散、地球人類全てに
日本政府による、迎撃・反撃の阻止。
軍を壊滅させる愚。
脱出者達が回収した、惑星政府に出された日本本国の指示。
戦うことなく交渉をするようにという内部文章。
これらは全世界に向けて配信されていった。
さすがにこれを無視できる者はそう多くはない。
人類の大半は、この問題に目を向けるようになった。
だが、それだけなら、多少騒ぎになった程度で終わるだろう。
異星人の存在も、それらによる侵略も、日本以外の人類にとっては対岸の火事だ。
問題ではあるが、すぐ近くで起こってるものではない。
同情や心配をしても、義憤を燃やしても、具体的な行動に移る者達はいない。
各国政府も同様だ。
所詮は他国のこと。
日本がどうなろうと知った事ではない。
極論すれば、殲滅されて日本という国が消滅しても誰も困らない。
侵略者は脅威であるが、国境線に触れるまでは誰も真剣に取り組まない。
しかし。
ここにとある情報が加わると話は違ってくる。
地球人類圏の宇宙地図。
これの流出もネットで流された。
途端に各国政府は行動し始めた。
当たり前だ。
問題は日本だけのものではなくなった。
地図が異星人に渡ったとなれば、どこに何があるのか把握されてしまっている。
それをもとに侵略される可能性があるのだ。
この流出を各国は非難し糾弾した。
日本政府は何をやってるのかと。
これには脱出者達の暴露も絡んでいる。
「防衛されてないのは情報も同じだ」
この言葉が全世界に流される。
「宇宙地図も含め、機密のほとんどは守られてなかった。
侵略を受けた時点で燃やさなきゃならんのに」
燃やすというのはたとえだ。
火をつけて燃やすという意味では無い。
敵に渡ったらまずい情報を消去するという意味である。
「それをしないでいた。
情報が流れるのは当たり前だ」
そういうって日本の対応のまずさを世界に配信していった。
「俺たちは逃げるので精一杯だった。
機密の消去なんてしてる余裕なんかなかった」
そう言って脱出者達は自分たちの実情を伝えていった。
嘘である。
機密の消去がなされてなかったのは確かだが。
あえてそれらを放置して残したのは、ミチオやカケル達脱出者の意思である。
こうでもしなければ、巻き込まなければ誰も腰を上げない。
遠いところの出来事として無視するに決まってる。
動き出すとすれば、日本が壊滅してからだろう。
そうなっては遅い。
そうならないように、全世界を巻き込んだ。
異星人に地球勢力圏の地図が流れるようにした。
そうする事で、危機を地球勢力圏全体のものにした。
こうする事で、地球勢力圏の動きを加速させる。
可能ならば支援を取り付ける。
それが目的だった。
加えて。
日本政府への糾弾をして身動きが取れなくする為だ。
放っておいたら日本政府は脱出者達を犯罪者にする。
逮捕するために相応の戦力を送り込んでくる。
それを止めるために、世界を巻き込んだ。




