59回目 邪魔者はどこまでも邪魔をする、まともな者はどんな時でもまともである
そして。
そう思いながらも脱出者達は諦めてもいた。
(どうせ何もしない)
どんなに現実が目の前にあろうと、駄目な奴は駄目なままだと。
それを脱出者は出澄でいやというほど見てきた。
法や世間体に縛られ、攻撃許可を出さない軍上層部。
戦闘への協力を最後まで拒んだ出澄政府。
被害の責任を敵ではなく味方のせいにする一般人。
そんな連中ばかりだった。
まともに対処しようとするのは、一部でしかない。
その一部が出澄脱出者達である。
そんな彼らからすれば、大多数の人間など邪魔をしにくる連中でしかない。
そいつらが正気になる事などないと分かっている。
もし、正気になるなら、出澄の人間はとっくにそうなっていた。
そうならなかったのが答えだ。
そして、出澄の連中と瑞穂の者達に違いはない。
他の日本領の人間も、そして世界中の人間も。
それでも、せめてまともな人間が動きだすように。
そのきっかけを作っていく。
多少はまともな行動をとるようにと。
全く期待はしてなかったが。
そんな連中に出澄脱出者達が抱く思いは一つ。
「さっさとくたばれ」
これが偽らざる本心である。
どうせ邪魔をするに決まってる。
既に出澄で実例が出ている。
他でも同じようになるだろう。
なら、事前に間引く方がよっぽどマシである。
戦闘中に邪魔される事はなくなるのだから。
そう考えて、人間の選別をしていっている。
最悪の場合が訪れる前に、事前に様々な処理を進めていく。
あわてて取りかからなくて済むように。
敵という存在は、こういう時には便利だ。
分別を進めやすくなる。
嫌でも対応を決めねばならない。
こういう時に人は本性をあらわす。
普段の言動や態度では分からない部分。
偽らざる本音。
これらがほんの少しは垣間見えてくる。
それを確かめ、人を分別していく。




