37回目 出澄脱出、船団護衛 2
「行くぞ」
宇宙戦闘機に乗り込むミチオが声をあげる。
「迫ってくる敵を潰す。
数が多いから気をつけろ」
通信機に向かって仲間に声をかけ、それから出撃していく。
衛星軌道上の基地から飛び出す戦闘機。
宇宙戦闘用のそれは、一直線に異星人艦隊に向かっていく。
「相変わらず、上手く加速しないな……」
この頃増えた不満を口にする。
とはいえ、それが仕方ないというのも分かっている。
様々な機器を取り外し、代替品を積み込んでるのだ。
戦闘許可という邪魔な機能を取り外すために。
おかげで本来の性能は出せなくなっている。
それでも異星人相手に互角以上の戦いは出来ている。
つまり、本来の性能が出せていればもっと楽に戦える。
異星人をもっと簡単に蹴散らせる。
それが出来ない事にもどかしさを感じていく。
「余計なもんをつけやがって」
邪魔な機能を取り付けた連中に腹が立つ。
戦争のために国防軍なのに戦争をさせない。
そうさせてる連中のせいで、余計な苦労をしている。
本来なら労せず倒せる連中なのに、無駄な労力をつぎ込む事になる。
何より、何人も殺された。
敵にではない。
味方である日本に。
戦わねばならないのに、がんじがらめに縛り上げて放り出され。
的にされて殺される。
そんな状況に放り込んだ。
ミチオをはじめ、出澄にいる国防軍の生き残りにはそういう憤りがあった。
だからこそ、まともな命令を出さない上官は殺した。
戦闘の許可を出さない出澄政府なども潰した。
軍人としての任務を全うさせない連中に用はない。
人間としても許せるものではない。
徹底的な糾弾をしてやりたかった。
その憤りの幾らかは、異星人に向ける。
そいつらが来なければこんな事にはなってないのだから。
それらを片付けねば、本来処分するべき連中の糾弾も出来ない。
「本当に面倒な連中だ」
更に腹が立つ。
敵にも味方にも。
いや、味方などどこにもいない。
異星人も日本人も等しく敵である。
そんな敵の一方を殲滅するために、ミチオ達は出撃していった。
守る価値のないクズ共の為ではない。
攻め込んできて命を奪おうとする者達への抵抗の為だ。
迫る異星人を潰さない限り安全は無い。
その為にも、敵を殲滅しておかねばならない。
危険な戦場に飛び込む理由がこれだった。
人としての生存の為である。
軍人としての職務などない。
そんなもの、日本人が自ら潰してくれた。
堅持する理由など全くなかった。
そもそも、既にすりつぶされ消滅している。
無いものなど抱きようがない。




