35回目 人型ロボットの兵器としての位置づけ
付け焼き刃の訓練と装備がなされていく。
そんな操縦者と作業用ロボットはとても戦闘員と呼べるものではない。
そこは軍も承知している。
なので、基本的には船外作業要員として用いる事になっている。
戦闘は、あくまで巻き込まれた場合に仕方なく、という考えだ。
そもそもとして、人型ロボットは戦闘には向かない。
戦闘どころか、一般的な作業でもさほど大きな評価は得ていない。
それは人型であるが故に出てくる限界があるからだ。
単純に労働・作業・戦闘を考えるなら、人型である必要は無い。
それぞれの仕事に応じた最適な形や機能がある。
それを備えてる機械の方が便利だ。
となれば、人型にこだわる必要は無い。
むしろ、人型である方が無駄と邪魔が大きくなる。
それでも人型ロボットがあるのは、人の動きに合わせやすいからだ。
思考制御で動く人型ロボットは操縦をおぼえる手間が少ない。
それでいて、人を凌駕する力を発揮する。
即戦力としてはこれほど便利なものはない。
なので、素人を即席で戦力にする場合には便利だ。
言い換えれば、熟練した人間がいる場合にはさほど必要もなくなる。
軍で言えば、戦闘機や戦車の搭乗員。
普段からこれらを操縦できる者を揃えておけるならばだ。
その為に必要な訓練をほどこせるなら、人型兵器の出番は少なくなる。
なので、人型ロボットというのは、帳尻あわせの水増し要員となる。
そう思われる事の方が多い。
実際、そういう場合が多いのも確かだ。
もちろん、例外もいるが。
しかし、一般的に人型ロボットよりも、専用の機械を使う方が効果が大きいと思われている。
軍もそれは分かってる。
分かっているから、作業用の人型ロボットにはさほど期待してない。
カケルをはじめとする搭乗員を侮ってるわけではない。
人型ロボットが無能と見下してるわけではない。
実際の働きぶりや能力から、そうとらえてるだけだ。
そもそもとして、訓練時間もまともにとれないのだ。
そんな者達を戦力として用いるわけにはいかない。
死体と損害を無駄に増やすだけになる。
それでも用いねばならないほど状況は切迫している。
手段を選んでる場合では無いのだ。
カケル達もそこは理解している。
人型ロボットは、操縦しやすいから普及してるだけというのも。
そんな人型ロボットも必要とするほど、状況は悪いのだろうと察しもした。
「やるしかねえんだろうけど……」
出来るならやりたくないとも思った。




