22回目 それでも現実ではなく夢想に生きる者
都市を狙って攻撃してくる異星人。
そんな異星人の攻撃を、少しずつ撃退する国防軍。
同時に軍は都市部から人を避難させる為に活動をしていく。
都市部に入り、人々に呼びかける。
そして、トラックやジープで少しでも多くの人を都市の外へと逃がしていく。
これには役所や警察にも協力を求めていった。
軍だけでは手が足りない。
公的機関であるこれらにも仕事を要請していった。
だが、ここでも誤算が発生していく。
無線傍受や、通信回線の断絶。
そして、声で伝える事での誤解の発生。
こういった問題を避ける為に、軍は考えを伝令によって伝えていくのだが。
その場において問題が発生する。
「何を言ってる!」
軍からの提案に役所や警察は反発した。
「町は安全だ。
逃げる必要は無い!」
口を揃えてそのような事を言う。
出向いた軍の伝令は唖然とする。
正気を疑う。
あるいは、軍に暴言を叩きつける。
「どうしてこうなってる!」
敵が攻撃したからである。
軍の責任では無い。
「なぜ敵を退けない!」
その為の戦力がない。
また、戦力をととのえる事を国民が一丸となって邪魔してきた。
「今まで何をしていた!」
出撃したが、無駄に命を散らした。
また、防衛のために動こうとしたが、役所や警察、そして民間人が邪魔をした。
軍そのものにも問題はあった。
だが、軍の動きを阻害し、防衛の邪魔をしたのは他の者達も一緒だ。
役所に警察に政治家に国民に。
全ての日本人が邪魔をしたのだ。
軍だけの責任では決してない。
なのだが、出向いた伝令に向けて、誰もが口を揃えて罵った。
今まで何をしていたとか。
なんでこうなってるとか。
この事態を招いたのは、そう叫んでる連中にも責任があるが。
その事については一切言及しない。
そんな者達に伝令は呆れた。
正気を疑った。
こいつらの頭は大丈夫なのかと。
もちろん正気では無い。
まともであれば、こんな事言ったりしない。
おかしな考えをおかしいとは思えなくなっている。
狂気が常識となっている。
そんな狂った常識に従ってわめいている。
それが伝令の相対した者達だった。
そんな者達に、伝令は黙ってはいない。
銃を抜いて撃ち殺す。
まともでない者を放置は出来ない。
生かしておくと余計な被害を発生させる。
それは生き残った軍人達が嫌と言うほど理解していた。
だから彼らは自らの意思で動き、問題解決に乗り出してるのだ。
そうして無駄な存在を消していき。
軍は軍で動いていく。
駄目なものは駄目と諦め、それを切り捨てる事を覚悟して。




