2回目 自業自得の破滅
攻撃があるという可能性は常に考えられていた。
警告を発する者もいた。
だが、それ以上に大きかったのは、そんな事ありえないという楽観論だった。
「いくら何でも、あのような要求を本気で言ってるわけがない。
あれは交渉手段だ」
最初に飲めない要求をする。
それから条件を下げていく。
そういう交渉の方法だというのだ。
「従わねば排除するというのも同じだ。
交渉を有利にするための脅しだ」
だから実際に排除する事は無いと。
そういう考えが一般的だった。
脅しを交渉手段に使うのが異常である。
そういう考えは全くない。
ただ、実際に数年ほどは目立った被害もなかった。
外交交渉の場における問題はともかく、出澄に何かが起こるという事はなかった。
それが楽観論を蔓延させた。
最悪の事態への警戒や警告を全て踏みにじった。
だが、その数年の平和は、決して穏やかなものではなかった。
後に判明する事ではあるが。
異星人が交渉を継続したのは、平和的な解決の為では無い。
戦力を結集する時間が必要だったからだ。
外交交渉はその為に利用されたに過ぎない。
それは日本にとって予想外だった…………などという事は無い。
「この交渉は時間稼ぎだ。
敵は戦力をこちらに向かわせている。
その時間稼ぎだ」
これもまた、異星人への警戒と警告の中に入っていた。