19回目 生まれた隙間、生き残る道 3
都市といってもそう大きなものではない。
直径数十キロの範囲におさまる程度だ。
やろうと思えば、端から端まで一日で歩けるくらいである。
その為、外に向かうのはそれほど難しくは無い。
とはいえ、瓦礫だらけである。
しかも荷物を抱えている。
爆撃を警戒して物影を選んで進んでもいる。
どうしても移動速度は落ちる。
結局、都市から出るのに三日かかってしまう。
それでもカケルは、集中して攻撃を受ける町から脱出した。
「……これからどうするかな」
問題はここからである。
危険な都市内から逃げる事はできた。
だが、どこに向かえばいいのか?
避難先があるわけでもない。
政府から指示が出ていれば良いのだが。
あいにくとそういったものも出ていない。
まだ生きてるネットにもめぼしい情報は無い。
「どうなってんだか」
これではどうすればいいのか分からない。
せめて、どこが生きてるのかだけでも分かれば良いのだが。
それすらもおぼつかない。
掲示板やメールなどもほとんど死んでいる。
誰かが新たな書き込みをする事もない。
異星人の攻撃開始の頃には、多少は発信があったりもしたが。
それももう途絶えている。
とりあえずカケルは適当な挨拶を発信する。
こんな状況ではあるが、こういう時だから何かしら発信していく。
これが呼び水になって、誰かが反応するかもしれない。
可能性は低いがそこに賭けていく。
何もしなければ、本当に何にも動かないのだから。
『なんとか生き残った。
これからどこに行けばいい?』
そう発信していく。
答えを期待してのものではない。
だが、もしかしたら答えが得られるかもしれない。
ささやかな期待をのせて、ネットに書き置きを残していく。
それから地図を携帯電話に表示させる。
近くに何かめぼしい施設はないかと探して。
こんな状況で頼りになりそうなところ。
まだ生きてるかもしれない、政府や公共の施設。
そんな都合のよいものが無いかと周辺地図に目をやる。
目に付いたのは、軍の基地。
こんな状況では最も頼りになる者達。
それが目に付いた。
「行ってみるか……」
呟いて歩き出す。
行ってどうなるというものでもないが。
こんな時だからすがって頼るしかない。
「爆撃されてなけりゃいいけど……」
不安はあるが、行くだけ行ってみる事にした。
他にあても無いのだから。




