11回目 最善の道を進む者達
状況や状態は最悪である。
まともに動けない軍。
軍の邪魔をする現地政府に国民。
これらによって出澄の各地は徹底的な破壊がなされていく。
その多くは自業自得なので、何一つ同情の余地は無い。
悲しむ必要もない。
当然の結果だと呆れるのが正しい。
しかし、全てがそうだというわけではない。
例外は確かにいる。
まともな行動がとれる者も。
そんな数少ない例外は、小さく、しかし確かに動き出していた。
「おう、やっぱり死んだか」
妨害を乗りこえて出撃した艦隊。
それらの壊滅報告を聞いて呆れる。
「だから出撃すんなって言ったのに」
砂土原ミチオ大尉は、死んでいった仲間に呆れていた。
一応は友軍であり、同僚達だ。
同じ釜の飯を食った仲ではある。
だが、だからといって同情や憐憫を向ける理由にはならない。
むしろ同僚達はミチオにとって敵でしかなかった。
なにせ、常に意見が衝突する。
それが理のある事ならまだやむをえないと思えたが。
そうではなかったから腹が立つだけである。
そんな連中が死んでいったのだ。
喜ぶ事はあっても、嘆き悲しむ理由にはならない。
ただただ、「せいせいした」と思うだけだ。
そんなミチオは、殺されると分かってる戦場には向かわない。
むしろ、この場からさっさと撤退する意思を固めていく。
「死ぬなら勝手に死ね」
ここに来てようやく意気を上げてる同僚を尻目に思う。
そして、志を同じくする者達と共に行動を開始していった。
すなわち、脱出。
ともすれば脱走あつかいされそうだが。
戦わずして死ぬ、殺されに行くよりマシである。
そんな事を命令するような軍にしろ政府にしろ、それらに従う理由は何一つない。
例え軍人であったとしてもだ。
「それじゃ、やろうか」
兼ねてから準備をしてきた者達と共に行動を開始する。
無駄で無様なだけの負け戦ではなく。
生き残るための、本当の戦争を。




