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第72話 神様

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「あー、私お腹空いたなぁ。ねえ、ご飯食べていこうよ」

「食べてばっかり」

「だってお腹空くんだもん。ほら、私って一生懸命生きてるから。お腹も空きやすいの」

「そうなんだろうか」

「そうよ。千尋は、怠けてるのよ。だからお腹空かないし、食べられないの。きっとそうよ」

「違う気がする……」

「違わない。私がそうと言ったらそうなの。千尋は私の信者なんだから」

「いつから信者に……」

「今日からっ」

「僕は彼氏じゃなかったのか……」

「え? 彼氏って信者のことでしょ? あ、下僕ともいうかしら」

「言わない!」

「じゃあ、弟ちゃんと書いて奴隷?」

「それも違う!」

「んもう……、じゃあ、なに? なんて言えばいいの? あ、家畜とでもいえば千尋は喜ぶのかしら? はぁ……、まったくぅ……千尋は変態なんだからぁ」

「女王様の発想が一番ヤバイです」

「違う違う。私は、女王じゃなくて……、そうね、もっと崇高な……、そう。天使とか神みたいな、そういう存在がいいわ」

「希望してなれるものなのか、それって……」

「うん、なれるなれる。だって、神様って人が信じることで、誕生するんでしょ? 日本には八〇〇万の神様がいて、うどん神社だってあるのよ? 信仰心が大事なのよ。信仰心」

「じゃあ、信者をいっぱい増やさないとね」

「うんうん。だから千尋はいっぱい私を信仰して、たくさん布教活動をしてね」

「頑張ります」


 サンモール商店街を歩く。制服を着た二人は手を離すことがない。身長差が、千尋を一層子供に見せる。オドオドと頼りなげな千尋は、傍目にはあおいの弟に勘違いされるほど、余裕がない。

 あおいにとっては慣れた道。少し先の西武線新井薬師寺駅から帰ることも多いが、中野駅もよく使う。

 商店街。飲食店から雑貨店まで、なんでもある都内有数の商店街。

 病院を出てから、あおいはここで育った。いつも一人だった道。だが、千尋と再会してからは、時々、二人。

 あおいは楽しかった。ウキウキとしていた。千尋といる時は、心が躍る。それを「楽しい」という気持ちだと、最近理解した。

 感情がわからなかったあおいは、少しずつ自分を取りもどしていた。


「じゃ、うどんにでもしようかしら。私、辛いうどんが食べたいの」

「あおいちゃん辛党だからなぁ」

「甘いものも好きよ。でもちょっと肌寒いし、暖まりたいなぁって」

「じゃあ、それで」

「……、なにそれ。千尋適当すぎる」

「え、適当かな」

「適当だよ。もっと真剣に考えて。大好きな私と一緒にいるのに、そんなんじゃだめ」

「あおいちゃんは厳しいなぁ……」

「ふふふ……、だって、天使は悪魔と表裏一体だもの」


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