表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/122

第55話 レッスン

55


 一週間後。

 十月十七日。

 午前十一時。高柳有理栖は千尋たちの家へ訪れた。

 今日はこれから、ギターのレッスンである。

 千尋、めぐみ、奏の三人。琴音は外出している。あおいと買い物に行く予定がある。

 リビング。

 椅子が三つ並べてある。その前には「有理栖先生」の椅子。

 有理栖は席に座る。千尋たちも席に着く。それぞれギターを構えている。ギターは有理栖が家から持ってきた。有理栖はギターをたくさん持っている。


「さあ、では! 有理栖先生のギターレッスンを始め、ます!」

「せんせーよろしく~!」

【お願いします】

「……ます」

「びし! 千尋くん声が小さい!」

「え……、あぁ、はい。すいません」

「だめだよ~? 歌を歌うのには発声も大事だよ」

「いや……歌うつもりはないので」

「え~! ちーちゃん歌わないの? あたしは歌う!」

「ふむふむ! めぐみちゃんは元気がよくて素晴らしい!」

「どうせ……僕は根暗ですよーだ」

「でも、音楽を歌うのには性格は関係ないよ! 心に、どれだけの想いあるかどうかのほうが重要」

「想い……」

「そう! 千尋くんは、見たところ才能がある! 感情を音楽に乗せて表現する方法を知れば、きっと素敵なアーティストになれる!」

「……、はぁ」

「きみたちは無限の原石! そしてあたしは原石を磨く先生! 尊敬してね!」

「はい! 有理栖せんせー!」

【せんせーかっこいい!】

「……、なんかあおいちゃんみたい」

「……ん? 女の名前! だれ? ふっふっふ、千尋くんの彼女かな?」

「……別にいいでしょ、なんでも」

「あははは~、怪し~! 絶対彼女でしょ! あー、千尋くんってモテるんだもんね。きっとかわいいーんだろうなぁ」

「……、知らないですよ、もう」


 あおいと千尋は、池袋で愛を誓った。ダイヤモンドが飾られた婚約指輪をペアで買った。あおいの左の薬指には、指輪がはめられている。千尋は恥ずかしがってつけられないが、「いきなり浮気だ」と、あおいに怒られている。

 しかし、指輪は約束の証。あおいの不安を軽減する大切な絆である。肌身はださず、持ち続けること。あおいによく言われている。ネックレスにして、首からリングをさげている。

 琴音やめぐみは、二人ペアのそれを茶化して、「婚約でもしたのか~」と、笑っている。あおいは、「秘密」と、真実を話さない。「二人だけの約束にしていたい」と千尋に言う。

 

「ふふふー、わーかわいいなぁ。青春っていいな。あたぁしも戻りたいなぁ、小学生に!」

「僕は高校生です!」

「え! そうなの? え……、ん、んん~? じー、じー」

「ちょ、な、なんですか。近づかないでくださいよ」

「うーん……、いや、違うよ。どう見ても小学生でしょ! その顔! その肌! その童顔! 身長! 高校生な分けない」

「……、冗談、ですよね?」

「あたぁしが冗談を言う性格に見えるかい? きみには」

「……、はい」

「むむ! むむむ! あたぁしはいたって真面目! 超真面目にみんなのレッスンをしてるのよ! わかる? 千尋くん」

「うーん、わかるようなわからないような……」

「どうやらきみには特別レッスンが必要みたいだね」

「え? なんでそうなるんですか?」

「きみがあたぁしをバカにしてるから」

「してないです」

「ま……いーや。それよりギターのレッスンしよっか」

「変わった人だなぁ」


 と呟きつつ、それは僕らも同じだ、と思い笑う。自嘲して笑ったそれを、「あ! またバカにして笑ってるな!」と有理栖に怒られた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ