君は言う、私なんて生まれてこなければよかった、と
優木千尋は病気である。心の病気だ。心的外傷後ストレス障害(PTSD)により、生きづらさを感じている。
育った環境に恵まれなかった。
千尋は両親から虐待を受けていた。日に日に、虐待は激しくなり、やがて殺される寸前まで行った。
その後、紆余曲折を経て、千尋は精神科医と出会った。
三上琴音。
県立児童医療センターに勤務する女医である。
年齢は三十二歳。
国内有数の小児精神科医。職場では凜々しい先生だ。
しかし自宅では裏の顔を覗かせる。
琴音は、心に問題を抱えた少年少女を自宅で育てている。里親だ。里親には法律上、四つ仕組みがある。うち、専門里親という制度を利用し、子供を三人預かっている。
優木千尋、雪村めぐみ、日高奏の三人。
優木千尋は通信制高校二年生。十六歳。身長一四八㎝。体重三七キロの小柄な体型。色白。甘い童顔。高い声。見た目は、小学生にすら見間違われる程に幼い。児童虐待により心を壊した少年。
雪村めぐみは、高校二年生。十八歳。年齢的には千尋の一学年上。しかし、浪人期間があるため、同学年である。長身に長い茶色の髪。明るく元気な性格。人なつっこい笑顔。男によくモテる。元薬物依存症である。
日高奏は、小学校六年生。十二歳。とある事件の被害者。事件のトラウマで声が出せない。会話はもっぱら筆談。スマホを使ってLINEで会話をする。身長は千尋と大差ない。最近、背が伸びて千尋に並んできたことを誇りに思っている。
三人と琴音は一緒に暮らしている。三人は心に問題があり、親元を離れる必要があった。精神科医の琴音は、専門里親制度を使い、患者の三人を自宅で育てることにした。