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0と1のレプリカ 〜機械少女の冒険譚〜  作者: daran
第四章 砂塵舞う国
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第四章10話 『ノイズ』

「――ル! おい! しっかりしろ!」


 赤い風は色を無くし、いつの間にか消えた黒い影。それと対をなすかのように、砂が覆う空の視界に顔を覗かせるレニー。


「アレ……私……」


 背中から突き刺さるような形で、木の板を貫く身体。ノイズで受け身を取れなかった結果、くの字みたいに曲がりながらも、ギリギリで砂の海に投げ出されないでいる。


「レニー……?」

「お前、一体どうしたんだ!?」


 徐々にノイズが無くなり、思考も晴れていく。いままで見えていた物は全て夢のように消え去り、既に視界は今までと同じ……首都ガルガリンを認識出来る。


「私は、一体どうなって――」

「いきなり飛んできたと思ったら、馬鹿みたいに()()()()()()()、うちの機材が魔力過多で異常を起こしたんだ。……お前、何があった?」

「……あの円月輪は?」

「そこに突き刺さってる」


 そう指差された先には、マストに突き刺さる刃が残されていた。ただ威力も無いそれは、小さな傷を付けてギリギリ保っているような状態で、切断までには至っていないようだ。


「そう……原因はあれよ」


 起き上がって刺さった刃まで歩いて、犯人を指指す。原因は魔力の接続、それに伴って入り込んだ大気の魔力だ。まさか30秒経たずに、あそこまで私が壊れるとは思わなかった。ただ、何で赤い風や、恨みが産みだされたのか、原因は分からない。あれと繋がった結果、魔力が入り込んでああなったとしか言えなかった。


「あれがどうしたんだ?」

「えーっと――」


 頭が冴えきる前に言ってしまった原因。それは、間接的に私は機械だと言っているような物だ。レニーは私の身体については知らない。だからこそ、言い淀んでしまう。


「何をためらってる?」

「……私の体質が、起こした問題。あれを使いすぎて、抑えてた魔力が溢れ出ちゃった」

「そういう、もんなのか?」

「そういうもんよ。だから、今はもう大丈夫」


 咄嗟についた嘘。我ながら、矛盾だらけのバレバレな言葉。船に突っ込んで無傷の理由も無ければ、魔力を使える機材が異常を起こす程の魔力は、抑えて何とかなる物でも無い。私は天然素材の魔法使いかと、心の中でツッコミを入れるが、レニーはそれを飲み込んだ。


「そうか――」

「それよりも、船を壊してごめんなさい……」

「この程度なら壊れた内に入らん。それに、防音機能はギリギリで保てたおかげで、ベルの存在は多分大丈夫だろうし」

「……仮面を付けた女、程度は流れてそうだけど」


 見られて無いとはいえ、警報鳴らして窓をブチ破った奴の事を噂しないのは無理がある。まぁ、少し動き辛くなったが、まだ大丈夫な程度だろうか。


「それで? そこまでやって、収穫はあったのか?」

「……マーク付きの紙を見つけた」


 確実に渡さないと情報が得られない紙。私よりレニーへ宛てた手紙のようなそれは、本来なら渡したくない鍵となり得る部分。ただ、情報という部品が無い私にとっては不要の物だ。相手の策に乗るのは、少し癪に触るが。


「ほう。……『世界反転計画』か」

「知ってるの?」

「乗ってる情報のほとんどは知らないが、ただ……『娼婦館』は噂程度で知っている」

「……名前からして、嫌な所だろうけど」


 まぁ、ろくでもない所なのは名前からして確定だが……問題は、そこと計画がどう関わるのか。


「えーっと、確か……異教徒として狩りが起こったのは前に教えただろ?」


 部下が工具を持ち出し、私の開けた穴を修理し始める船員。そんな中、まだ残された準備時間で服装を整えながら、船長であるレニーは続ける。


「そうなると、出てくる――捨て子。名目上は保護をしてるらしいが、本当は違うんだ。本当に保護してる所もあるから、全部が違うとは言わないがな」

「……思ったより最低な発想だね」

「俺もそう思う。あそこは、潰さないといけない悪の巣窟だ。街を潰した人間が、今度は笑顔で保護して、裏で資金稼ぎをさせてる。それが『娼婦館』だ」


 思ったより深い闇。娼婦館という存在は、この上なく害悪で下らないが……悪の周りには悪が集まる。類は友を呼んで、悪が広がっていく。だから、潰れないし消えない――赤の国の暗部と同じ。


「それは、どこにあるの?」

「場所までは知らん。知ってたら、多分もう誰かが潰してるだろうしな」

「子供を保護してる教会……『ラーガルフ=グロック』は?」

「あそこは違う、と思いたい。過去に荷物を運ぶ際に子供が懐いていた。だから、信じたいが……無いとは言い切れない」


 疑心暗鬼の渦は思ったよりも大きく、信仰の無い私達にすら及び始める。こうやって、国が狂っていったのだろうか。


「……でも、革命派の情報は無し、かぁ」

「これ以外に何か無かったのか?」

「――何も無いと言うより、荒らされてた」

「荒らされてる? ……一体、誰に?」

「痕跡は()()()()。だから、分からない」

「そうか……」

「……ねぇ――」


 レニーを、信じても良いの? その言葉を遮る様に響き渡る重低音。大きな鐘の音が街を反響し、それと同時に街から光が灯り始まる。


「ん? 何か言ったか?」

「……何でもない。ここからは、昼のレニーの番でしょ?」


 漏れ出そうな不安感を押し込め、気丈に振る舞う。味方がいない、1人の状態。そして、あの刃が起こした現象。その全てがのしかかり、夢でなく現実として知った今になって震える。


「じゃ、私は少し休む」

「……何か調べて欲しい所は?」

「うーん……何処からが綺麗で、何処からが汚いかを調べて欲しい」


 街に入ってからずっとある違和感。ハリボテがハリボテたる理由が、ずっと心に残る。


「何か抽象的だが、分かった」


 そう言って船を降りるレニーを尻目に、奪い取った本来の成果を持って私の部屋へ歩き出す。

 ここからは、レニーの本心とこの国の本性を、調べる時だ――。

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