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0と1のレプリカ 〜機械少女の冒険譚〜  作者: daran
第三章 氷麗の国
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断章C 『最善と最狂』

 空に灯る赤い光。それは、あの子達に渡した危険を告げる信号。あの信号自体、あまり渡したくなかったけど……急がないと。


「お願いだから、使わないで――」


 切なる願いと共に、現場に向かう。


「急ぐぞ。間に合わなくなる」


 国の右腕である『サミュエル=アレグラス』と共に。きっかけは――


『レイ。お前に話がある』


 4人を送り出した後、暫くしてからいきなり現れたサミュエル。その姿は包帯でぐるぐる巻きにされた状態。そして、明らかに焦ったような様子だった。


『サーちゃん、何があったの?』

『あの4人組が、冒険者狩りに狙われている』


 確かな情報筋である国からの一報。それは、確実にあの4人が死ぬ事を意味している。


『サバードは? ちゃんと動くの?』

『……おじさ――俺の力不足だ。すまない』


 そして、謝罪される。それはつまり、サバードの協力は得られなかった事を意味している。


『……皆、酒場をお願い出来る?』

『どうするつもりだ』

『行かせた私に責任がある。たとえ、間に合わなくても……行かないより全然マシ』


 そして、現在に至る――



「何、これ……」


 赤く輝く信号の根元、氷の森に付いたのだが……そこには大量の戦闘跡が残っていた……赤い血と共に。


「……探すぞ。まだ、死んだと決めるな」


 そう言ってサミュエルは跡の先、崩れた氷の山へ向かう。取り残された私は、この辺りの探索を始めたが――


「……ミーちゃん」


 ズタズタに引き裂かれ、氷の刃によって目を失ったミシェルが、亡くなっていた。


「どうして、使っちゃったの?」


 氷によって引き裂かれたのが致命傷となっているのは分かっているが、膨らんだ腕と足はどう足掻いても薬を飲んでないと出来ない。それに、大量の血痕と削れた氷は……長時間戦闘していた事を意味する。


「――見つけないと、この子達は……時間を稼いでいるから、その意味を早く」


 薬を飲んでまで守りたかった何か。よほどの緊急事態な上で、それでも時間を稼ぐべき何かを探しに行く。そうじゃないと、この子達は無駄に命を散らした事になるから。


「どこ、どこかに――」


 ふと目に付く白い雪。その箇所を横目で見て行くと……ひっそり、白く盛り上がった箇所。あそこだけ、丁寧に均されている。


「あそこに、行かないと」


 必死に白をかき分けて、盛り上がった箇所の下にある何かを……めくり上げた。すると――


「ルー……ちゃん」


 そこには、2つに分かれた機械の少女が倒れこんでいた。


「……ルーちゃんを、守る為に」


 全て、理解出来てしまった。ルーちゃんを――私達酒場の切り札になりうる存在を守る為に、その命を散らした。


「おいレイ! そっちはど――」

「……サーちゃん。この子を、ルーちゃんを直せる?」


 向こうの様子を見に行き戻ってきたサミュエル。そして、ベルの死体を見て察したようだ。


「……あの研究馬鹿の技術は本物だ。だから、完璧には直せないぞ」

「でも――」

「話は最後まで聞け。それでも、直せる場所は知っている」


 ベルを背負い、氷の森の廃墟とは別方向に足を向ける。そして、その足がさす方角は――


「サバードに行くの?」

「……()()()より、()()()の方が、こういう技術に強い。だから、向こうだ」

「……分かった」


 ベルのもう片方を持ち上げ、サミュエルの――サバードの魔術師に付いて行く。絶対に、犠牲を無駄にしない――






「あら?」


 氷の瓦礫をどかしながら、上を目指そうとする私に垂れる、一本の白い糸。


「ねぇ! 助けて欲しい?」


 小さな子供が、その糸で遊ぶように私へ問いかけてくる。


「助けてなんて、言った覚えは無いわよ?」

「えー? 苦戦していたのは間違いなかったけど?」


 いちいち私の神経を逆撫でしてくる子供は続ける。


「うーん……じゃあ、私と協力しない?」

「あら? 協力なんて、すると思うのかしら?」

「『シーグル=ウェンライト』を知っているって言ったら?」


 シーグルと言う言葉に、私の憎悪()は湧き上がっていく。


「どうして、そんな話をするの?」

「自動人形に興味があるの。シーグルが作った最高傑作、人間に近しいからこそ人間とは相反する存在。良いと思わない?」

「――貴方、私好みね?」


 狂ったような執着心。自動人形という存在になり変わりたいが故に自分を自動人形にしようとする精神。気に入った――


「分かったわ。でも、一つ条件。私も貴方も事情には不干渉。それで良いわね?」

「うん! 私は『カルラ=グラシア』! よろしくね、ティア!」


 そう言って大量の蜘蛛が瓦礫を一つ一つ持ち上げていく。そして、人間で作ったであろう赤黒い鎧を着た少女と手を組む。

 ――あぁ、シグ。貴方を愛しています(憎んでいます)

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