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0と1のレプリカ 〜機械少女の冒険譚〜  作者: daran
第三章 氷麗の国
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第三章5話 『空振り』

 賑わいを見せながらも、どこかそっけなく一線を引いた街の人。全員が容疑者で被害者――その異質な状況の中歩いていく私は、警戒心という視線に晒されていた。冒険者の肩書きを着込んでいたせいで。


「まぁ、追い出されないだけマシかな」


 全員からの疑いをかけられてはいるが、追い出される訳では無いなら……まだ大丈夫。まだ、吹き出す前なら。


「そこの貴方? ちょっといいかしら?」


 目の前から道具屋を経営していた、栗色の髪を持つ女性が近づいてくる。その目線は疑いを持っている物ではなく、単純に興味の目。


「用件は何?」

「あら? 少しだけお話をしようって事なのに、つれないわね?」

「暇をしている訳じゃない。一体何の用?」


 目の前の女性は胸を強調するように腕を組み、少し誘うような目線ながらに世間話を続ける。


「少し、貴方が気になっただけよ?」

「それは私が屋上を飛んでいたから?」

「あら、貴方もこっちを見てたの」


 無視をするように歩く私に、腕を組みながら付いてくる女性。この人の目的が全く分からない。


「付いてくるなら名乗るぐらいして」

「あら? ……『クリスティアナ』よ」

「……それだけ?」

「えぇ。元々捨て子だもの、名乗れる氏は無いの」


 付いてくる女性は、呆れたような仕草で両手を横に広げる。だがその表情には、ほんの少し怒りが見えた。


「そう。私は『ベル=ウェンライト』。ベルで良い」

「分かったわ、ベルちゃん?」


 暗に子供扱いし始めるクリスティアナ。怒りの感情が沸くものの、何故か……()()()()()()。何といったら良いか分からない感情。


「……私、急いでるから!」

「あらあら。全く――」


 その声を掻き消すように走る。これ以上あの女と関わりたくない、それとなく不気味に感じてしまったこの感情を信じるように。でも、


「――やっと、見つけた」


 ボソっと呟いた最後の言葉だけは、聞き逃さなかった――。



「それで、どうだったの?」


 一度酒場まで戻ってきたが、私の姿を見てレイは犬のように猛突進でこちらに飛びつく。


「新しい情報は、全く」

「あー、やっぱりそうなの……」


 抱きついたままレイは落胆するが、一応他にも仕事がありそうなので、抱きついて落ち込むレイをそのまま運ぶ。


「マスターなら他にもやる事あるでしょ?」

「うー……」


 核心を突かれたのか、少しうなだれたような素振り。これは私を待っていたというより、理由付けして業務をやりたくない人だ。


「はいはい、業務に戻って」

「やだー! やりたくないー!」


 抱え込んだ私の腕で暴れるレイ。それを抑えながら酒場へと引き渡して行く。


「うー……やるよ! ちゃんとやるよ! でも、私から依頼があるの!」

「依頼? それは何?」

「地域の探索。目的は分かんないけど、赤の国からルーちゃんに向けた依頼よ」


 赤の国……というと、アシュレイ辺りの依頼か。内容は探索だけど、何でかの理由は不明。


「えーっと、何で赤の国から……」

「私に聞かれても困る! でもルーちゃんを指名してるから、お願いしていい?」

「構わない。でも――」


 探索を依頼した上で、理由を明かせない何かがある。だからこそ、私を選んだ。そうなると、目的は探し物か、私の瞳で視るべき存在か。赤の国で、魔の関連になると……ソフィ=アルダン。変人と呼ばれた人物からの依頼なら、秘匿する理由も分かる。


「案内役が必要、かな」

「それなら、3人程付けるよ。ここの国を案内出来て、冒険者狩りにも対応出来そうな人達を」

「分かった。でも、すぐに用意は出来ないんでしょ?」

「うん。だから、明日」


 そう言って業務に戻るレイ。と言っても、私はどうしようか……。


「……依頼でもやろう」


 掲示板に書いてある依頼を見ていく――戦闘を介する物を中心に。


「この装備、試せて無いからね」


 手頃そうな依頼『氷原にいる魔物を倒してほしい』を手に取り、受付を済ませる。


「ルーちゃん。依頼をやるの?」

「明日まで時間が出来ちゃったからね。それに、色々知りたい事もある」

「そっか……よし、受付終わり。行ってらっしゃい」


 手を振って見送るレイを尻目に、街の外へ出ていく。赤の国では、急な魔物退治で失敗した。なら、今度は先にどんな魔物がいるか見ておかないと――。



 日は登りきり、それでも寒さを残す氷原の中を進む。依頼の場所だと、この辺りに魔物がいるらしいが――


「……あれが、ここの魔物?」


 魔力を少し帯びた生物。巨大な毛皮を持つ二足歩行の魔物が3体、目の前に群れていた。


「少し、観察」


 その魔物は厚そうな毛皮で覆われ、そう簡単に刃を通さないような皮膚をしている。鋭く伸びた爪は人を引き裂くのに造作もなさそう。同じく鋭く尖った牙は肉を用意に貪れる。ただ――


「目は、普通ぐらいか」


 視界はあまり良いとは思えず、ある程度近いはずの私の存在を目視出来ていない。普通の人間ならすぐに見分けが付くぐらい、大雑把なのに。


「逆に、音には敏感」


 物を投げた際の落下音で俊敏に反応をした。それだけで、耳が良いのは分かる。


「後は、戦闘力」


 それを計る為に、私はあえて一歩……魔物達の前に踏み込んだ

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