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0と1のレプリカ 〜機械少女の冒険譚〜  作者: daran
第一章 始まりの国
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第一章5話 『訪れる異変』

「――はい、今日の授業はここまで」


 後片付けをしている私達へ赤色の日差しが刺し始めた頃、授業を終えて遊び始める子供達の中にマルクがいた。とても現実とは思えない透明な遊具と共に。


「おいお前! ちゃんと並べ! ちゃんとしないと、このすべり台に乗せないぞ――おぉ、戻ってきたか」


 あまりにシュールな光景。年齢がちぐはぐな存在マルクが子供達と一緒に遊んでいるかと思えばちゃんと悪い事は叱り、年上の役目を果たす。ますますこの人は何歳なのか、疑念が深まる……。


「えーっと、色々と聞きたいんですけど、まず何をしてるの?」

「同感でございます」

「本当にねぇ? 私も何をしているのか気になるわ?」


 私含め、3人とも同じ意見を持ってマルクにツッコミにも似た事を発する。やっぱりこの人も変人なのだろうか。


「我は子供では無いと言うのに、『遊ぼう!』とせがまれてな、滑り台と鉄棒をとりあえず作ったのだよ」


 私は言葉を少し失いながらも、言いたかった事を心の中で唱える。まず、子供じゃなかったのか……。そして遊具ってそんな簡単に作れるのか……。そう一人で黙ってしまっていると、


「お客様なのに、子供達のお世話までさせてしまってごめんなさいね?」

「お前達の都合を優先してくれと言ったのは我だ。気にしないでくれ」

「それにしても綺麗な遊具ね。透明で、ガラスみたい」


 リナ姉に続いて遊具に目をやると、遊具はマルクが纏っていた()()()()が滲んでいた。だけど、それに対して誰も反応をしない。

この青いもや、ウィルの魔術の時に似ている――もしかして、その可能性を問いかける前に、突然兵士さんが走り込んできた。大分焦っているようで、緊急な事は誰の目にも疑われない。


「リナ=ハインド様! 突然のご無礼をご容赦ください!」

「どうかしたのかしら?」

「緊急を要する事で、子供達が襲われました」


 突然の事に愕然とするが、兵士さんを良く見ると血が滲んでおり、守った結果奪われたのは明白だった。


「アリア、行くわよ」

「承知致しました。ベル様、また後で」

「こちらですリナ=ハインド様!」


 兵士さんは嵐のような勢いでアリアさんとリナ姉を連れて行き、残ったのは、


「……何やら大変な事が起こっているが、ベルは行かなくても良いのか?」


 年齢不詳の少年と私だけだった――。


「私が行っても、役立たずなので……」


 現場を冷静に確認出来るリナ姉と、戦闘力は街一番のアリアさん。その二人がいれば、私がいても仕方がない。私なんて――


「そうか……それなら何も言うまいよ」


 マルクは緊急で子供達がいなくなった滑り台の上で、一人黄昏れる。その漆黒な瞳は、人々全員を引いて見ているような、見下すわけでもなく眼中に無いわけでもない、何処か人間から一歩引いているような、人間では無い違う存在の、そんな達観さが見て取れてしまった。


「――やっぱり『魔法使い』なんですね」

「……気付いておったか。リナから聞いた素振りでも無いが……なるほど、多分魔力が視えておるな」


 あっさりと魔法使いと認め、私が視える事に気付くマルク、やっぱりあのもやは魔力だったか。


「ベル、お前は魔法使いを()()()()()()()()()?」


 いつになく真剣な眼差しで私を見つめるマルク。一気に緊張感が初対面の時に戻り、少し冷や汗をかく。


「どこまで……魔力が視える事と魔術の存在、そして私に魔術師は無理って事ぐらい……ですかね?」


 その言葉に納得したかのような表情でマルクはうなずく。さっきまでの緊張感が、またスッと消えたような……そんな感覚を覚えた。そしてマルクは軽く冗談のような真面目なような口調でゲームを吹っかける。


「……ふむ、では魔法使いの事は諸事情であまり話せぬが、少しぐらい……3つだけ質問には何でも答えよう。緊急事態で人もおらぬし、暇なのでな」


 特に欲しい情報は無いのだが、魔法使いに質問できる機会なら流したくは無いし、これが試されてるなら、変な真似はしたくない。

 リナ姉の病気は? マルクはリナ姉に魔法使いとバラしてる以上、多分無理で終わる。

 じゃあ魔法使いのなり方? でもそれは、なり方を漠然と聞いても私になれる補償はないし、空っぽの知識で詰める事は出来ない。なら――


「『魔法使い』とは何ですか?」

「……『魔法使い』は体内の『魔力容量』が人よりかけ離れた人の総称、だな。魔術師が大気から魔力を集めるのに対して魔法使いは体内からひねり出せる。だが、結果は魔法も魔術も変わらぬ。火を出す為に大気の魔力を使うか己の魔力を使うかの違い……言える範囲ならこれぐらいだな」


 少し黙秘されたが、それでも魔法使いは魔術師と違いがあまり無い。その事が分かっただけでも収穫にはなるか……。

 だが問題は言える範囲と言ったマルクの発言だ。ここを追求しても、多分言えない範囲に引っかかって満足に情報は引き出せない。言える範囲が分からない以上、無駄な質問になる。ダメだ、これ以上何を聞けばいいか分からない……。


「じゃあ――」


 とりあえずの質問をしようとしたその時、小さな鳥がマルクの肩に止まった。その鳥をよく見ると青い魔力を纏っており、鳥のようなおもちゃのような、生きている感じがしなかった。これは――、


「その肩に乗った鳥はなんですか?」

「これは『マリオネット』って言ってな、我ら魔術師や魔法使いが使役出来るものだ。魔力を動力に変えて遠隔で動かせて色々と便利な反面、手入れを日々しないと簡単に壊れてしまう。だから使う奴らは少数な武装だ」


 得られた情報は『マリオネット』という存在。マリオネットは魔力を動力に変えている。ただ、それ以外の情報が無い。困った、手詰まりになってきた。

 肩に乗った鳥は魔力を与えていないようで人形のように止まっている、良く見ないと本当に生きているように見える。だけど、ここまで精巧に作る理由はあったのだろうか。偽装という可能性は、偽装する相手がいてこそ成り立つから理由には薄い。そもそも何でマリオネットという物を作ろうと思ったのか。便利だけなら別の物でも、それこそ精巧に作らなくても良いはず――。


「『マリオネット』は、元々どういう目的で作られたんですか?」

「……最初はとある計画で作られたものでな、簡潔に説明すると魔法使いは人間を作ろうとしたのだ。その結果がマリオネット。失敗作を発展させて便利な道具に昇華させたものだ。……結局作れなかったのだよ、人間……人間と同じ感情や意思を持つ機械『自動人形』をな?」


 『自動人形』。私にはよく分からないけど、心が絞めつけられる気がした。人を作る……なぜ人を作ろうと思ったのか、そういった疑問はやっぱり生まれるが、3つだけの制限に引っかかる。もう少し詰め切れたらもっと情報を、もっと欲しいものを引き出せたかもしれないのに。


「これで3つの質問は終わりだな。やはりベル、お前は目の付け所が鋭く洞察力に長けておる。そこを伸ばせばもう役立たずと思わなくても済むのではないか? ただ、考え過ぎて下唇から血が出ている事と、自己嫌悪に陥るのは直したほうが良いぞ」


 目の付け所が鋭い。始めて言われたが、役立たずと落ち込む私へリナ姉やアリアさんに追いつける私の強みを教えてくれたようだった。マルクなりに気を使ってくれたのか……口の中に広がる鉄の味を噛みしめながら、志を新たにする。


「あの、ありがとうございますマルクさん。気付かせる為にこういう回りくどい事をしてくれたんですね」

「マルクで良いし、別にタメ口で良い。……知り合いの娘が困っているのだ、助けるのは当然の事だ。それで、もう1度聞くが……ベルよ、行かなくても良いのかね?」

「……行ってくる!」

「よろしい。我は部屋に戻っておるから、ここに戻ってこなくても良いぞ」


 気付けば足はリナ姉達を追っていた。茜色がより一層深まる頃、私は必死に走っていく。今度は私が助ける番だ。

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