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第二章5話 『アウトロー』

「――クソッ! この女()()()()()()()()()


 私の身体を2人かかりで運んでいるその途中、手放さなかった意識からやたらと失礼な言葉が聞こえる。皮膚の下には金属があるので当たり前ではあるが、一応私もそういうのは気にする……。


「無駄口を叩くなあんたら。いいから運ぶよ」


 その運び手を指揮するリーダーであろうズィルという女。その手際は良く、走る箱を改修したであろう手押し車で私を運ぶ。そして私を入れた箱の上から布を被せられ、周りが見えない状態で走り出す。


「ズィル、この女をどうするんです?」

「……誰かに奴隷として売っぱらうか、最悪バラして研究素材だ」


 とんでもない事を告げられたが、こういう可能性も承知の上で潜りこむと決めている。周りも見えない状態の中で、まだ見ぬこの国の闇へ一歩踏み入れた……。



 唐突に走る箱の揺れが止まり、終着点である事を肌身に感じる。


「とりあえず、奥まで運びな」


 布は被せられたまま再度2人の男に持ち上げられ、そのままどこかの奥まで運ばれていく。ここが根城か……?

 男2人に揺られた身体が突然止まり、一際音が響く部屋であろう場所で、意識の無いと思いこんでいる男2人は紐状の物で私の自由を奪って行く。とりあえず私の第一目標は達成したが、ここは一体どこなのだろうか……。

 男2人の立ち去る音が部屋に響き、簡単に退出した事が分かった上で脱出作業。人がいない今なら動ける。


「音が響かないように――」


 軽く腕を左右に伸ばし、縄の掴める部分を作る。そして、そこを両手で掴んで手首の力で引きちぎった。ただ、思いっきりやれば音が響いてバレてしまう可能性がある為ゆっくり。視界は布で覆われ未だに分からない以上、音だけで判断するしかない。紐状の何かを引きちぎり、手首の自由から腕の自由へ繋がって、眼前の視界が布から部屋へと広がっていく――。


「ここが……」


 私が捕まっていた部屋には物も人も何も無く、瞳に映るものは地面と闇だけ。その闇に目を慣らしていかないと、探索もできそうにない。


「とりあえず、場所の判断から――」


 足音を立てずに壁まで歩く。私の短剣と弓は奪われてしまったが、この手甲と脛当ては付けた違和感を無くす為に複雑な工程で付けているので外されずにすんだみたいだ。という事は――、


「この槍も、残ってる」


 一度壁を確認した後に仕込み槍の確認。これも奪われていない……これならバレても大丈夫になれそうだ。地面には石ころと壁に紛れた岩が手触りで分かる。この場所は一体なんなのか……色々と抵抗する手段は揃ったが、肝心の私の場所が分からない事には始まらないので、一度上へ――。


「ここは、一体……何かの遺跡?」


 部屋にあった柱と壁の間を伝って登り、場所の全容を見る。その際にかなり大きな音が出るが、この音でも敵は来ないようだ。この部屋にはどうやら天井が無い――というより、風化して崩れている。地面に転がっていた岩のような物体は風化した屋根が崩れた際に出来たものか。


「灯りは少しあるけど……暗闇を歩けそう」


 明らかに掘り進めた跡と人工的に残った遺跡の残骸、そこに灯りとして松明が置かれているが……全体の暗さを照らせる程の光源ではない。私の部屋は特に廃棄寸前のように風化しており、灯りすら置かれていないのが今回は好都合に働いたようだ。

 遺跡にはあのズィルと呼ばれた女の仲間なのか、複数人の男がそれぞれ松明をその手に持って徘徊している。建物の影に隠れて姿が見えない奴もいるが、灯りを見て8人は最低存在しているだろう……。


「よし、動かな――っ!」


 それは一つの油断――天井が風化しているという事は同時に、壁の上部分に行けば行くほど脆くなっている事実。それを怠り、上から外へ出ようとした結果……壁を壊して私も体勢を崩してしまう。

 崩れた体勢のまま落下して行く身体を、足と身体を伸ばして止める。同時に聞こえる外へ崩れた岩の音。


「ん? ……また、あそこが崩れたのか」


 不幸中の幸いなのか、崩れた壁を特に気にする事はなく徘徊の男は周りを歩く。危なかった……そう心で唱えつつ、体勢を戻して再度崩れた壁から外へ出る。

 場所的にここから見える部屋らしい部屋は3つで、中央にある建物が一際目立つ。それぞれの部屋の入り口には松明が置かれており、部屋に入る際には絶対に照らされてしまう。

 そして、この遺跡はかなり広い地下空間で、しっかりと掘られた跡と崩れないように木組みが外壁に伝わっている。この空間は、多分坑道を掘ろうとして出てきた遺跡辺りだろうか。


「そこら辺も分かってないからもどかしい……」


 何も知らない事を知ったが、だからと言って情報を集められている訳ではない。だから、予測をするのだが……予測する為の情報も無い。


「とりあえず、探索してみるか……」


 何事も動かなければ始まらないし、とりあえず探索。これも幸いなのか、この遺跡には風化して崩れた隠れ場所がいくつもある。それを伝って人の目は掻い潜りやすい……。だけど、遺跡だけでは欲しい情報にはならない為、探すべきはズィル。


「部屋を全部見ても、多分時間がかかるしいずれ私の事もバレる」


 慣れない場所に慣れない隠密。慣れないだらけで時間は普段よりも絶対かかる上に、私がいるであろうあの風化した部屋への確認も定期的に行うだろう。だから、ズィルの場所をまず1発で分かる術が――ある。

 目的が決まった以上、影に潜んで獲物を待つ。徘徊している人に装備の統一性がまるでない……そして、ここは遺跡。つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()人が多い。だから、私のような人が顔を隠せば偽装も出来るはず――。

 松明の灯りで狙いの人物を確認。裏から影へと引き釣り込む。


「あ、が……」


 助けを呼ばせないように口を塞ぎ、首を絞める。始めは抵抗をされたが、徐々に抵抗を失い力が抜けていく感覚。意識を失った事を確認したら顔を覆っている布を取り、自身の顔に巻き付けて私の顔が見えないようにしていく――。


「後は……」


 意識を落とした男を隠れた場所に運び、松明と共に外見は大丈夫になった。でも、声は偽装出来ない……。徘徊していた人間は全員が男、そんな中に私の声は流石にバレる。最大限低く声を出せば行けるか……?


「おい。何をしている?」


 丁度良く徘徊に来た人間が私を見つけて近寄る。こうなったら、ぶっつけ本番だ――。


「イヤ、ズィルニ報告ガアルンダ」

「……ズィルなら、中央のあそこにいるぞ?」

「アァ……アリガトウ」


 声を低くした事で言葉がかなり不自然になる。相手もかなり怪しんでいるが、バレてはいない。そして、手に入れた情報を元に中央の建物まで走る。報告として嘘を付いた以上、緊急性を見せるように足を急がせないと。


 中央の大きな部屋の前までたどり着いたが、徘徊の人は怪しむ素振りは見せていない。このまま入るなら今――。


「おう、どうした?」


 中央の部屋に入ると、かなり大きな部屋の奥に胡坐をかいているズィルがいた。周りにはあの風化した部屋と同じく柱がいくつか立っており、ここだけ魔力で光を起こしているように見える。そしてどうやら、この様子から見るにまだバレていない……。なので、無言で近づいていく。


「ん? 何で近づいてくる?」


 流石に無言で近づく私に向けて疑問を投げかけてくるズィル。低い声も流石にこの人相手では効かないだろうし、()()の場所までは行けた――。


「おい! 答え――は?」


 この場所に着いて、初めから何も得られずに外に出られると思ってはいない。そして、このズィルって人は()()()()()()()()()()()。だから、無理やりにでも聞きだす為に、柱を思いっきり蹴りとばして私が入ってきた出入り口にぶつける。そのいきなりの行動にズィルは少し理解までに時間がかかっているが、これはチャンス――。


「あんた――いや、そういう事ね。私を助けてくれた誰かさん?」


 崩れていく出入り口と隠している顔。なのに、私の事に気付いたズィル……やっぱりそうか。なら――。


「少し、乱暴にするけど……私も今は躊躇できないから、許してね?」

「どの口がいってんだあんた。でも――そういう強情さは嫌いじゃないよ!」


 椅子の後ろから取りだす刀身の揺らめいた大剣。それと共に私も構える。それにしても、私から喧嘩を売ったのは始めてだ――!

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