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0と1のレプリカ 〜機械少女の冒険譚〜  作者: daran
第一章 始まりの国
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第一章20話 『作戦会議』

「おう、おかえり。ルールー」


 酒場へ入るとウォーレンさんが山積みの紙を隣に置き、何やら色々と調べ物をしながら歓迎してくれた。


「ただいま、ウォーレン。何か進展あったかい?」

「ある程度は進んだ。ベルの容疑も内容から見て晴れたようだ」


 山積みとなった紙の一部をルールーさんが目を通しつつ、酒場のマスターとしての業務へ戻っていく。


「とりあえず、色々考えないと……」


 欲しい情報はカルラ。だけど私の容疑が晴れたって事は、向こうが捕まったか何かしら起こったかの二つ。そのどちらの目標もカルラに会う事は困難という事に落ち着くだろうし、残された情報はバンジャマンが持っていた魔術の本、その出所だ。


「ルールーさん! ウォーレンさん! 私への容疑が晴れたって、カルラが何か起こしたの?」

「あー……それは言ったらダメな――」

「報告ぐらいは良いと思うよ? ベル君も当事者の一人だし、色々不憫も起きたからねぇ。最悪、私が責任持つよ」


 資料の一部を流し読みして不在の間起こった事を確認しているルールーさんに、少し諦めの表情を浮かべながら特製であろう飲み物を作るウォーレンさん。


「……カルラを追っていた部隊6人が全滅した。4人は王国側の人間だが残りは冒険者側なんだが、それが等しく身体の一部を失った状態で見つかっている。最初の事件と殺しの手口が同じな上で、容疑の一人であるベルは、丁度ルールーと森へいたから殺しは無理と考えて、もうカルラだと断定して動いているって状態だ」

「6人も……それは同時に6人殺されたって事? それとも一人一人おびき出されて殺された? それによって色々と危険度が変わりそうだけど」

「詳しくは当事者しか分からないから推測でしかないが、部隊が離れる事はほとんどしない。そして、死体を引き摺った様子がないのに、同じ箇所に6人いた事も考えると……」

「6人いた所を殺されたって思うのが普通だねぇ」


 6人もいて1人に全て殺される……油断をしていたとしても、一人が殺されたら流石に注意する。仮に不意打ちで1人殺せたとしても、残り5人を同時に相手をして殺しきれるのはとんでもない相手だと分かる。


「そして、蜘蛛の糸のような粘着性の高い糸が現場から大量に出てきている。厄介なのが、そこに毒の糸が混ざっているから、変に触れると死ぬ可能性がある事だな。6人の死体もやっとの事で引っ張ってこれたし、魔力の残滓も反応無し」

「毒の糸を持つ蜘蛛……見た事ないなぁ。生物として存在しない以上何かを飼っている線も無い上に残滓も無しかぁ……魔力を残さない魔術なんて見た事は無いし、何だろうか一体」


 存在しない生物で、魔術の可能性は薄いとすると一体……、一つだけ可能性はある。


「……マリオネット」

「マリオネット? 何だいそれは」

「……生き物を模したもので、魔力で動かせる存在。色々と便利な反面、専門的な知識が無ければ手入れが出来ない欠点があるもの」


私への興味はそういう目的だと思えば辻褄もかなり合う。私の正体を知っていた前提で話を進めても、何で私に期待感を持った目で見ていた詳細な理由が分からなかった。確かに記憶という物を取り戻させる為の期待した目なら分からない事もないが、それだともっと思い出してほしい何かを散りばめるのでは? という一つの疑惑も浮かんでいた。


 カルラの期待をした目線は私が見ている限りではしていない。ルールーさんが関わって始めて分かった事実だ。つまり私の記憶が戻る事を期待していたのに私にはバレたくないという結論になってしまう。

 どこかに居なくなった事も最初は私の記憶を戻す為の下準備と思ったが、特に変わった出来事は一つも起きていないのも矛盾。第一に関わった父親役の人間を殺すのはあまりにも無用心で、私にバレたくないという結論からまるで逆へ行ってしまう。


 でも彼女がマリオネットを扱うのであれば、私への興味は自動人形という事柄から興味を持ったという事へ繋がる。父親役を殺した理由は不明だが、少なくともバレたくないという理由からは外せる事にもなる。

 カルラ自身が私の作られた記憶を持っているのは事実の上で、私への接触理由は私へ記憶を取り戻させるというより、自動人形という存在の今を知る為に私へ接触したが今の情報での妥当か。


「なるほど、あれをマリオネットと呼ぶのか」

「ウォーレンは知ってるのかい?」

「あぁ、総称は全く知らなかったが昔に2度ほど見た。やけに人慣れした動物を持った人がいてな、魔物との戦闘に使って傷が全くつかなかった事もあって少しおかしいな程度で思っていたが、多分マリオネットだろ?」

「動物と違って血を流さないのはマリオネットだと思う」


 ルールーさん達の目の前に血を流す例外がいるのは突っ込まないが。


「なら、マリオネット関連で色々集めてこよう」

「了解。君は君で情報を集めて置いてくれウォーレン」


 とりあえず、カルラへ接触はしばらく無理だと分かった。となると――、


「バンジャマンをどう説得するか……」

「ん? バンジャマンがどうかしたか?」

「こっちの話だよウォーレン」


 少しこちらへ顔を向けたウォーレンさんを半ば無理やり首を戻すルールーさん。ウォーレンさんもその流れで自分が関わっても意味が無いと悟ったのか、カルラの情報を改める為に資料を漁りだす。それを尻目にいつもの席へ二人で戻る。少し前に見たいつもの料理を手に持ちながら。


「さて……バンジャマン君をどうするかなんだけど」

「あの人が魔術にこだわる理由と、何で体内に魔力を取りこんでいるのかを知れたらなぁ」

「魔術にこだわる理由は分かるよ。ベル君に全力を止められた事や私に負けた事によって、自分の力を信じられなくなったんだろうねぇ。その上で強くなりたい欲が強すぎて魔術に手を出したのかな?」


 理由は強さ。だけど、手を出したきっかけはもっと、


「でも、私が戦った時にはバンジャマンは全力を出せて無かったよ。最後の受け止められたのも直前で力が緩んだから取れたようなものだったから」

「ふむ、私もバンジャマン君との戦闘ではバンジャマン君が突然苦しんで中止したから……きっかけは……8年前の大襲撃?」


 私の記憶には無い8年前の事。記憶には無いが記述を読んだ事があるので、何となくの顛末は知っている。

 8年前に魔物が一気に緑の国へなだれ込んだ一大事件。最終的に国を挙げて魔物を討伐したが、詳細は全部リナ姉に消されていた。だけど、継ぎ接ぎの情報で何となくは分かっている。狙われたのは首都だが魔物の規則性が強くて周囲からまるで指揮がいるかのように襲ってきた事、それによって一番に狙われた地域がある事、その地域は『ナーシサス』『ボロニア』『アイリス』『カトレア』『アマリリス』で、それはリナ姉の父親が横に広げた協定で結ばれた地域という事ぐらいは情報として集めている。理由は未だに不明で、魔物が大挙として大移動をした説や、魔物を操っている存在がいる説なんかが出ているが、証拠は何も無い。


「あの大襲撃の防衛にバンジャマンも参加していた?」

「あの時は酒場も協力していてね、表立っては言われてないけどほぼ周知の事実って事だよ。まぁ酒場にとっても自分の住んでいる国ごとやられたら困るからねぇ。他の国もとやかくは言ってない。私も参加していたがバンジャマン君は見ていないし、あそこで何かあったのかねぇ」


 きっかけも理由も分かったが、解決策が見つからない。強くなりたい根幹が分からないからだ。


「そもそもどうしてバンジャマンは強くなろうとしたの?」

「それを知っているのは私じゃなくて先代である私の父親だねぇ。私が酒場をまだ任されていなかった頃にバンジャマン君は冒険者になったし、理由の詳しい事は全く知らないんだよねぇ」


 結局は分からない状態の振り出しに戻ったか。でも、ある程度の情報は集まったから後は当たってみるのも可能性。すると、酒場の地図を広げ始めたルールーさん。そこにはいくつかの真新しい点がついている。


「……バンジャマン君が普段いそうな場所をリストアップしてみたよ。監視が無くなった以上、私が行く理由が無くなったからね。ここからはベル君に任せようと思って」

「本当は?」

「仕事が溜まっているのを放置していたから、そろそろそっちに手を回さないと色んな所から怒られる……かな?」


 そう言ってルールーさんは軽く笑って見せるが、後ろにいる酒場の人達は呆れている。事態は深刻そうだ……。


「それで、何か策は浮かんだかい?」

「新しい情報がもう無い以上、この手札で当たってみる。というか、それしかないんじゃ?」

「それもそうだ。じゃあ健闘を祈るよベル君」


 ルールーさんは手を振りながら、酒場の奥まで戻っていった。それに合わせて料理を食べ終え、酒場を後にする。


「さて、探してみるか」


 地図で見た点を頭に浮かべて歩き出す。少し頭を悩ませながら……。

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