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0と1のレプリカ 〜機械少女の冒険譚〜  作者: daran
第一章 始まりの国
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第一章15話 『改めて』

「と言っても、私も服を知っている訳じゃないんだけどねぇ」


 手を引っ張っているルールーさんはそう言う。事実冒険者は基本鎧や戦闘用の物を付けている事が多く、私も服を買うといっても鎧の下に着る物と戦闘をしない時の服を買うだけなんだけど。


「えーっと、買う予定だったのは服と裁縫道具かな」

「裁縫出来るのかい?」

「一応ね。子供が良く遊んで服に穴を開けてたりしたから、自然に身に付いちゃった」


 最初は下手だったがやっていく内にちょっとずつ上達して、最近ではぬいぐるみを作って人形劇をして子供達を喜ばせたりしていた。

 子供達がやりたいと言った演劇も、私が服を自作していたぐらいには作れるものの、私の服を作ろうとした際に私には似合わない可愛らしすぎる物が出来てしまい、それ以降は直すだけで私用のは自作していない。


「ほうほう、なら革製品のお店にも行こうか」

「それはどうして?」

「裁縫がある程度出来るなら、応用でこれも出来るはずだよ。そして、革をいじれるようになれば自作で出来る事が増えるんじゃないかなって、嫌なら全然大丈夫だけども」


 悪くない提案。確かにこれなら壊れてもわざわざお店にいかずに直せば大丈夫になる話だ。私の身体の性質状、大分無茶が聞いてしまう分服や防具を壊しやすいのは認めたくは無いが事実だし。今後も似たような事が起きて、その度に服を買いに行ったりしなくても済むように色々覚えておくのは吉。


「分かった。そこにも寄ってほしい」

「決まりだね。服も今後の事を考えて生地を直接売っている所が良いとして――」


 ルールーさんの頭の中で道筋を立てて行く。私も1回この街を見て回ったが、広すぎて全部をみるのは無理だった。ここは、ルールーさんにおまかせしよう――。


 そうして連れてこられたお店は、革と生地の独特な匂いが強く漂ういかにも裏のお店のような、かなり物々しい雰囲気のお店だった。


「……ここで合ってるの?」

「まさかここまでとんでもない事になってるなんて、私も思ってないよ……」


 ルールーさんはまだ見ぬ店主に呆れながら、お店の中へ入っていく。だけど、その入り口すらルールーさんが入っていかないと分からないほど隠れているそれは、もはや怪しさしか感じない。


「おや、懐かしい顔じゃのう。いらっしゃい」

「懐かしい顔じゃのう、じゃないよ全く……また変に物が増えちゃって、お店って分からないよこれだと」


 そう文句を言って店の物であろう生地を運んでいく。


「それってお店の物じゃ――」

「大丈夫だよ。そもそもここは酒場の認可を受けていないから、建前上お店じゃないよ」

「えっ……えっ?」


 お店じゃない物を運ぶのはもっとダメなんじゃ、と戸惑っている私へ老人が温かい飲み物を差し出す


「あ、ありがとうごさいます」

「この子は冒険者かの?」

「あぁ。だから連れてきたんだよおじいちゃん」

「おじいちゃん!?」


 突然の血縁関係に思わず飲んでいた物を吹き出しそうになったが、それならこの物の多さに文句を言うのも頷ける。


「おじいちゃん。いらない物色々持っていくよー?」

「あぁ良いぞ。ワシにはもういらない物じゃ」


 この物の量を集めていた訳ではない……? もしかして、この老人もかなり凄い人なのでは。そう思い適当な物を見繕っているルールーさんへ聞く。


「ルールーさんのおじいちゃんは、どういう人なの?」

「まぁ、この物の多さだと気になるよねぇ。おじいちゃんは元腕利きの冒険者で、数年前までその人脈を使ってお店をやっていたんだよ」


 まぁ、家を軽く埋めている量の物は集めてないとすると、お店をやっている事は想像付く。問題は、この量を半ば放置してお店を辞めた理由。


「どうして辞めちゃったの?」

「簡単な話、おじいちゃんは武器を作る才能が無かったんだ。冒険者としては凄かっただけに、おじいちゃんの腕を見て人が離れちゃって。才能が無い事を知らない遠方の知り合いは素材を送ってきて、でも作る相手がいない〜なんてのが起こった結果、こうなっちゃったんだよ」


 思ったより単純過ぎた理由に、少し開いた口が戻らなくなる。武具の修繕とかで己の才能が分からなかったのか……。


「その辺りの物は全部持って行って良いぞー」

「分かってるよ!」


 そう言いながら、良さげな素材を厳選しつつ運んでいく。そしてその荷物運びを手伝っている私へ、老人に聞こえない声量で語りかける。


「だから、こうやって腕が良さげな人に素材を渡しているんだ。売っても良かったんだけど、立場上売る行為は禁止されてるし、優秀な人が強くなる事は私にとっては良い事だからねぇ」

「え? これもしかして私へ?」

「そうだけど、迷惑だった?」

 

 運んでいた荷物が全部私に渡す用だと知り、再度開いた口が塞がらなくなる。素材として渡す物の中には、見ただけでかなり良い材質の物や、魔力のもやが見える確実に魔術等に使う素材等、通常ならかなり高値で売り渡される物が集まっている。


「いやいやいや、こんな良い素材、新人の私に!?」

「言ったでしょ? 私は立場上物を売ってシャードを貰う事は禁止されているから、こうやって渡す以外無いって。それに、ベル君はこれをちゃんと良い素材と見抜ける目も持っている事が分かったんだ。渡す相手には相応しいよ」


 物の目利きは街で偽物や粗悪品を掴まされないように、アリアさんから鍛えられただけなのに。それに、まだ作れるとは言っていない革の素材まであるとは……。でも、ここでずっと断ってもあまり意味はないし、貰っておこう。物理的に無い心は凄く痛むが。


「あの、ありがとう」

「良いんだよ。こうやって腐らせるより全然マシだ」

「終わったかのう?」


 ひょっこりと顔を覗かせる老人。その首筋から少し見える肌にはかなりの傷痕があり、衰えていっても残っている筋肉は歴戦の戦士だと思わせる。


「あぁ、終わったよ」

「もうちょっと持って行っても良いんじゃが」

「流石に薬は専門外なので、遠慮します……」


 老人の手に持たれた角のような素材を、遠慮する形で家を出る。布や革だけでもかなりの量で、この量を貰って良かったのか……。


「もしもいらなくなったり、素材として腐らせそうなら遠慮なく売ってね? シャードに変えても私はそれで構わないから、ね?」

「売るのは勿体無いから、色々と作る。こんな良い物を赤の他人に扱わせない!」

「いつになく気合が入ってるねぇベル君」


 良い物を貰って、私の中の職人魂みたいな物が疼いてしまう。無下に扱われるより私が使ってしまった方がマシだ!


「強く意気込むのは良いけど、一旦荷物を宿に置いて行かないかい? まだ服を買ってないし」

「そうだね。この荷物持って服屋は難しそう――そういえば、あのおじいちゃんも冒険者なんだよね?」

「そうだよ、『ミゲル=ヴォールバート』。両手剣1つで様々な国で戦果を上げた人。その戦闘力で『理性ある狂戦士』って呼ばれていたけど、本人は気に入ってなくてねぇ――」


 荷物を置いて服屋までたどり着く間、おじいちゃんの話題に花を咲かせながら、友達のようなもう一人の姉のような感覚に居心地良さを感じていた。



 一通りの買い物を終え、宿屋まで戻ってきた。空にはまだ太陽があるが、少しずつ落ちてきているぐらいで、ルールーさんとは買い物終わりに別れて今は一人だ。


「お客様。貴方へ荷物が届いております」


 宿屋の受付で呼び止められ、一つの荷物を渡される。それは、2日前に頼んでおいたオーダーメイドの装備一式で、まさかそんな早く来るとは思わなかった。


「早くないかなこれ……」


 その早さに他の人と間違えた可能性がよぎり、私の部屋で装備に着替える。その予想とは真逆に、寸法はしっかり私用に作られており、頼んでおいた武器もしっかり届いている。


「こんな早く作れるものなの」


 独り言をポツリと呟きつつ、装備の確認。

 手から腕までの鉄製装備、これは近接戦闘が多い私に打撃力と防御力を上げてくれる代物だ。すこし大きめだが腕の可動域に支障は全くなく、これが邪魔して相手の攻撃を受け流す事が出来なくなる、なんて状態は起こらない。

 次に足から膝にかけての同じく鉄製の装備、これも腕に合わせて少し大きめにしてもらった物だ。足での攻撃はあまり得意ではないが、相手への近接戦闘で択が多いほうが良い。それに――、


「この身体は思ったよりも力が強いから、仮の話だけど」


 もしこの怪力が足にも適用されるなら、不意の全力で皮膚が裂けた際に隠せる。腕と同じく力加減が効かない時が出てきたら、一番バレてはいけないのは皮の下の金属。裏を返せば、隠しさえすれば、


「これで、全力が出せる」


 思うは過去の全速力、あの時の私は無意識に力を落としていた。私を作った製作者が、人間という枠を外れないようにしていたのかもしれない。だけど私自身が自覚した今なら、色々とやりようがある。

 そして身体への防具は最低限。布と革で作られたもので、最低限保護するべき場所を鉄製の物で補い動きやすさを重視してもらっている……だけど完成品を見て思ったが、


「ちょっと、身体が出すぎてる……」


 動きやすさを重視しすぎて、少し薄い革製の下地を選んだ弊害。身体のラインが出すぎて、少々刺激が強い感じになってしまった……。この上から最低限とはいえ鎧を着るので、実際はもうちょっとマシにはなるけど、これは……流石にちょっと恥ずかしい。


 とりあえず薄手のこの防具は置いておくとして、次は武器。剣は一般的な物よりも短めの物を頼んでいる。ナイフだと距離感が近すぎて殴ったほうが早い。ロングソードほどの長さになれば近接先頭に不向きになる。耐久性の問題にも関ってくる問題なので、最終的にこれくらいの長さが丁度いいと私の中で結論付いた。


「すごい……」


 鞘から抜いたそれは鈍い黒色の輝きに思わず感心に似たため息を放つ。この剣は私の怪力に合わせて持ち手部分が少し重めに作られており、その上で刃はしっかりと研ぎ澄まされていて、金属自体が重く強いものが故に切れ味も鋭い。反面折れる心配もあるが、そこは心配ご無用とお店が誇っていたのでそこは信用しよう。握り手は私の手の寸法に合わせて作られ、手にしっかりとフィットして逆手や利き手ではない右での使用も想定して作られている。


「ここまでしっかり作られてるとは思わなかった……」


 シャードがお手頃だった事もあってここまで優秀な装備が送られてくるとは全く思っておらず、改めてルールーさんのお墨付きというものがどういうものかを知る。


「ルールーさん周りの人達って、実は全員とんでもない人……?」


 そう頭に過ぎりつつ、残りの武器も確認。組み立て式の槍はしっかりと剣と同じ材質で全て作られており、全体重量はかなり重くなるものの私には丁度いい。槍を完全に作ると私の身長を少し越えるぐらいだが、穂の部分にはちゃんと鞘も付いており防具の中で私自身を切ってしまう事は無い。そして再度4つに分かれた槍をそれぞれ、自分の手甲と脛当てに収めて行く。少し大きめに作ってもらった理由の一つだ。

 最後に弓。前々から遠距離という課題を克服する為に用意したもの。だけど、私は弓にあまり触れてこなかった……理由は当てる事は出来るが狙うまでの時間が長い事。きっかけはアリアさんから『戦闘を見るのであれば、一通りの武器を触れてみた方が良いと思われます』と言われて触ってから判明した事だ。そういうのも含めて弓から避けていたが、避けられない壁として遠距離が備わっている以上、通らないといけない道だ。


「一度石投げでも失敗している以上、何とか習得まではしないと」


 戦闘での目標を決めつつ、少し小さめの弓を背中に背負う、矢筒と共に。右腰に短剣も収め、これで頼んでいたものの全部だ。


「重さもバッチリ、後は……」


 窓から上を見上げると外はまだ太陽がまだ残っている。時間的にはまだ大丈夫そうだ。これなら、この装備を試せる――。


「よし、行こう」


 そう言って酒場へ再度足を向ける。一番の目標は私の製作者の情報を持っている、カルラ。だけど、手掛かりは何も無い。だから、目標をある程度広げないと行けない。なので、欲しい情報は魔法使いの情報。

 元々私を作った製作者で一番怪しい私の父親、その人はマルクという魔法使いと知り合いだった。なら、父親も魔法使いじゃないかという考えは持っていた。それが、酒場の技術力と一時魔法使いと手を組んでいた事で、可能性がかなり高まった。酒場の技術力がもし魔法使い由来のものなら、魔法使い達はここまでの腕を持っている事になる。つまり、目的の情報をカルラから魔法使い全体に広げても、何かしら私のルーツに引っかかる可能性が高くなる事を意味する。だから、


「依頼を受けつつ酒場を探る……」


 魔法使いの手掛かりが酒場にしか無い以上、ルールーさん達とは敵対されそうだがこうするしかない。いっその事私の正体を言えば――、


『化け物だ!』


 頭から抜け出ないナーシサスでの出来事。……無理だ、拒絶されてそれこそ本当に敵対してしまう。武器の確認も済んでないし、あまりにも情報が無さすぎる。


「やる事が多いなぁ……」


 まずは、酒場との基盤作り。次に情報と、同時に私の実力上げ。手探りでもやらないと進まない……。そうやって見上げる酒場の看板。いつもと変わらない場所へ再度一歩踏み入れる、今度は明確に出来た目的の為に。

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