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0と1のレプリカ 〜機械少女の冒険譚〜  作者: daran
第四章 砂塵舞う国
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第四章18話 『黒幕』

 巨大なモーリス宅への入り口。特に警備が多くないその中は、いかにも豪邸らしい鮮やかな光が輝いていた。ただ、反射がキツ過ぎて……目をやられそうだ。


「……個人宅でこれは、中々に悪趣味……」


 煌びやかも過ぎれば、ただ眩しいだけ。何事にも限度が大事と思いつつ、城や大教会より広くはない家の中を探す。警備兵も中まで巡回はしておらず、外から見られる窓にさえ気を付ければ普通に歩けるほどだ。


「ただ、部屋数が多い……どんだけ作ってるの……」


 モーリスの仕事部屋を探しに歩き回るが、()()()()()()()()()()()()()()()()。ただ、使用人の影すら無く――人の暮らした跡すら無い。


「それに、なーんか……()()()()()()()()()()


 私に建設の知識は無いが、それでも頭の中で地図を作ったからこそ分かる。一箇所だけ変に空白――部屋が作れる箇所がある。それに、部屋同士がほんの少しズレている……普通なら気にならないが、それがやけに規則性を持ち、まるで()()()()()()()()かのような間取り。


「まぁ、芸術って言われたら何も言えないんだけ――お?」


 愚痴のような独り言をボソっと言いながら、部屋を巡った先にあったのは――書斎。大量の本棚に詰められた表紙だらけの色彩は、少し埃でくすんでいた。


「使われている様子が無い……と」


 隣には明らかな空室、入り口が無い空白が残されている。向かい側からも見たが、あちらは完全に何も無い四角い箱みたいな部屋。この階層より上は無く、下も軽く調べたが……客室のように整えられたが、怪しい所は何も無い部屋だった。つまり、この空白に部屋があるなら、ここに仕掛けがあるはず。


「まずは壁を……」


 壁を叩いて音の響きを確かめる。その音はどこを叩いても変わり無く、中に空間があるかのように響いていった。


「……まぁ、確定だよね。ただ――」


 緑の国でやったような、力のゴリ押しは出来ない。あれは廃墟で風化した家で、所々脆かった事もあって出来た裏技のような物。今回は廃墟ではなく、ましては壁をぶち壊す事も出来ない隠密行動中。ノーヒントでの謎解きは無謀にも近いが、どうするべきか……。


「うーん……何となく何をすれば良いのか分かるけど、正解がなぁ……」


 埃被った本の中で、明らかに手垢のついたいくつかの表紙。これを動かすのは分かるのだが、どう動かすのかが分からない。


「と言うより、それ以外動かせないのね」


 手垢の付いた8冊の本。それ以外は本の形をした装飾らしく、ページをめくったり動かす事すら出来ない、本棚に固定された木製品。逆に動かせる本も中には何も書かれておらず、本というよりかは……未使用の日記みたいだ。


「……うーん? 中身がいらないのなら、表紙か?」


 表紙には色と線がいくつか描かれているが、それが表紙の体を為していない。日記なら日記と表紙にあるはずなのに、切られた模様以外何もない。


「でも、本同士は繋がらないのよねぇ……」


 試しに動かせる本の線を繋ぎ合わせてみても、繋がらない上に何も起きない。まぁ、流石に本をはめ込んで起動するタイプの仕掛けだろうが――


「あれ? 遠くから見ると……そういう事ね」


 部屋中をウロウロしつつ悩んでいると、遠目からみた本棚が()()()を描いている事実に気付く。部屋の隅にいけばやっと分かる程、大きな一部で気付けなかったそれは、本と合わせて8つある。


 線に合わせて1冊1冊はめ込むと、本棚が急に動き出して空白の隠し部屋が姿を表す。

 そこには、中央にある魔石が怪しい光を放つ、何かの制御室のようだった。


「何……ここ……」


 中央の魔石の下には、古ぼけた王冠のような被り物。それ以外は、この家を写す映像がいくつも残され、それは今現在でも稼働している。


「この装置より、資料は――」


 中央から伸びた奥には机。その上には、読みかけた本と山積みされた資料の紙が残されている。


「……じゃあ、モーリスは一体どこに」


 読みかけの本や、中途半端に残された資料。他にも、冷め切った飲み物や食い終わった何かの皿等、どれをどう取っても、少し前までモーリスがここに居た証として取れてしまう。


「この資料は……『我らが教皇様に幸あれ。全ての民は、教皇様への信仰となる』」


 中途半端に積まれた書類の一番上、ふと目を落としたその文章には、明らかに今の現実とは()()()()()な言葉が並んでいる。


「『教皇様の真言は全てを見通す未来予知。あの姿も、あの力も、初代様の生まれ変わりである』」


 初代の生まれ変わり……確かに、この国は異常な初代信仰が残されていた。つまり、未来予知は全ての奇跡より上と考えられているのか。


「『だが、初代様をその身に宿す為の儀式が必要となる。その間の務めを果たそうと果敢に立ち上がったのが、総大司教様である』」


 ――ちょっと待て……色々と異常だ。儀式という体で幽閉している間、国を指揮していたのが総大司教……。そうなると、全ての前提が覆る。


『――新しい教皇様が生まれた後から、変わって行った』


 レニーの言葉に嘘がある理由は無い。だから、全部教皇が行った事だと、()()()()()()()


「『儀式の間にも、我らが民を敬った教皇様は、その未来予知を神託とし、()()()()()が、教皇様の手足となって神託を告げていった』」


 ……これは、明らかに――


「『その未来予知は、国は豊かに、より信仰心による奇跡を生み出し続けた。我らが民が祈れば奇跡が起こる。なら、祈り続けよう! 初代教皇の生まれ変わり、アメリア=ケロン様万歳! 自らを糧に信仰心を作り上げた総大司教、セラフィ=ギリスタイン様万歳!』」


 確実な黒である総大司教の名前。こいつが、この人物が……この国を壊している存在。


「……これで、何となく構造は理解出来た。後は、革命派だ」


 必要な情報を頭に入れ、この部屋を飛び出す。仕掛けの本も、元の位置に戻して痕跡すら残させない。


「革命派の目処は立ってる……行こう」


 そう足を向けるのは城の外。警戒態勢も解かれ、通常の巡回となった箇所を走り抜け、城壁の上まで登る。向かう箇所はただ一つ――


「……レニー、もう隠し事はさせない」


 街の端にある、船の上を目指して。

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