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0と1のレプリカ 〜機械少女の冒険譚〜  作者: daran
第四章 砂塵舞う国
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第四章16話 『品定め』

 教皇の入り口、その少し手前にある広間。中央にあるが故に、まだ光る太陽が差し込んでいくその場所……数少ない城への入り口で足止めを食らっていた。


「時間がないから――」

「魔法陣、展開」

「――速攻!」


 敵の魔術が整うよりも先に飛び付く一閃。高速で動いた剣が周囲の風を纏い、放たれる斬撃は暴風が吹き荒れる咆哮へと変わる。ただ、目立ち過ぎるそれは、同時に開戦の引き金にも繋がった。


「チィッ!」

「――何ですの!?」


 力を込めて放った刃は高圧の風。体勢を崩しながらも魔術でギリギリ逸らされたそれは、三日月の形をしながら遠くにある城の一部すら、切り裂いた。そして聞こえる悲鳴じみた女性の声、どうやらあそこにお嬢様は待機していたようだ。


「寄らせるよりも、早く――殺す」


 横へのなぎ払いを逸らされたが、まだ相手の魔術は準備不足――攻めるなら今。


「近接戦闘が出来ないとでも、思ったか?」


 攻め込んだ3連撃。速度重視で力を込めていないとはいえ、それを容易にいなされた上に3撃目を利用されて、距離と体勢を整えられる時間が作られてしまう。杖を持つ魔術師だからといって、少し油断した――こいつ、棒術も使える。


「――なら、相手の動きを修正する」


 整えられた距離と時間で、作られる熱風。近づかせまいと吹いたそれと同時に、杖からは複数の線と()()()()()()()が光り出す。そして、杖の両端に付いた石を起点に2つの線が描かれ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「止まれっ!」


 起動した魔法陣から伸びる複数の魔の手。私の動きを阻害しようとするその布石は、的確かつ緻密に計算された物だ。()()()()()()()()()


「我流剣・()()――」


 起動直前までの魔法陣を視て、想定した1つのルート。この剣本来の使い方、魔法陣を切る事で魔力を纏う機能――それは、この短剣を見た時から考えていた物。

 剣に纏われた魔力は、()()()()()()()()()()()。どんな魔術だろうが、1回目で纏い、2回目で放つ。なら……2回目で魔術を切れば――どうなるか。

 反発しあう魔力は絶対に重ならない。色が混ざらないという事は、干渉するのに干渉出来ないという、ちょっとした矛盾が生じる。だからこそ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。つまり――


「――『瞬動(しゅんどう)』」


 短剣に纏わせた魔術とは()()属性を切り、反発しあう魔力がまるで磁石のような、高速の魔力が放たれる。この剣には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。でも、その引き金は別の魔法陣が担ってくれる。


「クソ――!?」


 この男が私の動きを止める為に、()()()()()()を敷いたのが間違いだった。その全てを、()()()()で切り伏せれば、剣に纏った魔力を放ちつつ、次の魔力を取りこめる。

 ――元々、この技は複数の魔法使い相手に考えていた物。私が出来る限界の速度で飛び回りながら、魔力を返すカウンター技。『瞬』きのように『動』く――私のスペックで、私自身のスピードを止められなかったから、封印していた技。今まで使えなかった理由が、それだ。


「舐めるなぁ!」


 だが、男は斬撃を避わし、杖に纏わせ、的確に回避して――無数の魔力を、全ていなしていく。まぁ、当然と言えば当然。やっている事は魔術にも満たない……出来かけた料理を、そのまま完成させずに投げつけているような物。本来別属性の魔法使いへぶつけるのを、そのまま当人にぶつけたなら――こうなるのも明白。だから、


「二式――」

「何だ、これは!?」


 この技には続きを作っている。反発しあう魔力を重ね合わせ、回転させれば――高密度の魔力檻が作られる。この技で殺せれば恩の字だが、もし殺せなかった場合の2段攻撃。魔力という攻撃手段と同時に、相手を囲う魔力渦。高密度に折り重なったそれは、一般人にすら見える高圧の風として男を止める。

 そして、止め続けるその風に向かって、疾駆の一突き――


「――『画竜点睛(がりょうてんせい)』!」


 全ての魔力を込めた渦の中心に、突きという点を穿つ。多数の違う属性を取り込み、放ち、取り込み、放ち――そんな繰り返しは多色の線となって、空という画材に竜を描く。


「チィィッ! まだ――」

終式(ついしき)――」


 それでも、男は倒れない。魔術を全て防御に回し、杖という術式に魔力を霧散させる事で防いでいる。ただ、威力で後ろへ押される程集められた竜は、全てを霧散させる事は出来ていない。口元からは血が滲み、魔力によって皮膚が裂け始めている。だから、最後の一押し。

 描いた竜を終わらせるように、切っ先に放たれ続ける魔力を敢えて離し、一歩踏み込んで横切りへと変える。斬撃に込められた魔力は竜の尾のような、三日月の刃として飛び、最後の一撃へと繋げていく。

 これは、高濃度に圧縮された魔力を放っただけの斬撃。ここまでならまだ、あの魔力線と威力は変わらない。だから、()()()()()()()()()()()()()()()、剣という遠心力で圧縮させ――魔力の斬撃と共に前方へ加速。追いついた三日月を叩き割る事で、反発する魔力を吸収という剣で解き放つ縦切り。


「――『竜墜(りゅうつい)』!」


 虹色の魔力線を両断する程の一振り。描いた『竜』は縦に裂け、霧散するように地に『堕』ちる。そして……反発する魔力を活かした囲い、剣の振りという圧縮、それを割る追撃。解放された魔力は周囲へ飛ぶように分散し、その勢いは爆発を産む。

 爆発自体の破壊力は、子供の遊び程度。だが、そこには大量に詰め込んだ魔力。切り口という入り口へ強制的に注ぎ込まれた魔力によって、()()()()人体は破裂するが――、


「……片腕、だけ」


 残された物は、叩き切った相手の右腕のみ。それ以外は、何も残されていなかった。


「……どういう事だ?」


 更には、あのお嬢様も――消えている。向かってくる前に始末しようとしていたが、二人組は音もなく痕跡も残さずに、まるでさっきまで戦っていたのが幻のように消えた。この、男の右腕だけを残して。


「でも、確かに当てるまでは確認出来たし、切った感覚もあった」


 瞬間的にいなくなる。そんな事が――無いとは言えないのが、魔法使いの厄介な所。


「とりあえず、退けた。後は、調べるだけ」


 あの男を殺すのが目的では無い。まぁ放っておける存在でも無いが……それでも、本来の目的は地図。

 心の中にあるモヤモヤに少し嫌な感情を覚えながら、城内へ入る。まるで()()()()()()()()()()()()()()()、兵士の邪魔が一切入らなかったのは……一体……。

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