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鬼の魂
どういう事だ?
一体何がどうなってる?
突然の事で頭の中がぐちゃぐちゃだった。
――さっきまで、自分は確か。
一秒前の同じ場所、同じ空間に自分もいるはずなのに。見えている景色は全く先程のものと異なっている。
さっきまで目の前で泣いていたあいつの顔がない。今は何故かあいつの顔を見下ろしている。
なんだよ。なんだよこれ。
どうなってんだよ。
『急げ』
その時、ふいに声がした。
どこからだ? 周りを見てもその存在を確認出来ない。
でも確かに聞こえた。もう一度見下ろす。
――そういう、事なのか……?
『急げ』
再び声がした。声の意味を理解し始めた。そういう事なら、確かに急がなければならない。
――でも、でもそれは……。
時間がない。だがそれは確実に大きなモノを捨てる事になる。どちらを選ぶにせよ。
――くそ、くそっ……。
頭を全力で働かせる。どちらを選んでも納得は出来ない。
でも、決めた。
この瞬間に、自分の生きる道を決めた。あまりにも大きな、通常ではあり得ない大きな決断だという事を、その後ずっと噛み締めながら生きる事も知らずに。




