第九幕《結局》
第九幕《結局》
娘「戸籍等の問題は大丈夫。役所に根回ししておいたから」
「はあ? 『根回し』? っていつ?」
娘「出遭う前に。お父さんの戸籍謄本には、すでに長女として私の名前がある」
「いやいや……、えっと、どういうこと? 何を言ってるの?」
娘「戸籍上はすでに娘ということ」
「いやいや……。そんなのどうやったんだよ」
娘「簡単に言えばコネ」
「公務員に書類改竄させられるほどのコネって……」
娘「世の中コネよ。コネコネ。猫とコネと金さえあれば、世の中は回っていく」
「米さえあればいい。そんな風に言ってくれる子に育ってほしかった……」
娘「ただし私、お金だけはないから、経済方面の問題は、私とは逆の、お父さんにお願いすることになるよ」
「僕のことをお金だけはある、みたいに言うな」
娘「他にあるの? 友達も恋人も仕事も趣味もないお父さんに」
「あるよ! 友達も恋人も趣味もちゃんとあるよ! 仕事はないけど!」
娘「いやいや、恋人もいないでしょ。そこ嘘ついてどうすん。しょうもない」
「……ちくしょぉっ! 娘がちっとも可愛くない!」
娘「当然でしょ。外で可愛い子ぶっても、父親相手に尻尾振るはずがないじゃない」
「夢のないことを言うなあ……。というか、さっきの本当?」
娘「本当よ。私がお父さんに嘘ついたことある?」
「嘘か真か分からない話は、たくさん聞いた」
娘「でもさ、これで面倒が一気に減ったんでなくて?」
「そのはずなんだけどね……。さらに心労が増えた気がするよ。頭痛がする」
娘「大丈夫? ルル飲んで元気になって?」
「ありがとう。でもどこから取り出したそれ。いつも持ち歩いているのか?」
娘「うん。女子って全員頭痛薬漬けなのよ。頭痛薬がなければ生きられない身体になっていて、頭痛薬をチラつかせれば何だって言うことを聞くの。覚えておいてね」
「即刻忘れることにする。僕は、バファリン派かな」
娘「そう。私も、半分は優しさみたいな生き方がしたいな」
「残りの半分は?」
娘「えっ、いや、その、何というか、……あ、怪しさ?」
「むしろ十割の怪しさじゃないか。謎のコネとか持っているし」
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