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タイムカプセル・パラドックス  作者: 宇佐見仇
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第八十六幕《天職》

 第八十六幕《天職》



「ねえ、お父さんの職業って何なん?」


「え? 何が?」


「いや、何がじゃなくてさ。ずっと聞きそびれていて今さら聞き辛いんだけど、でも良い機会だからはっきり確かめておきたいんだけど、お父さんの職業って何なの? ちなみに普通のサラリーマンではないかなー、と読んでいる。一度クビになったから何となく遠慮して聞いてこなかったのもあるけど、教えてもらったことないよね」


「なるたけその話題にはならないようにしてきたからね。……ふむ。ここまで来たらいっそのこと、ずっと秘密のままでもいいんじゃないかな?」


「はあ? 秘密にすることにどんな意味があるの? つーか避けてたって、もしかしてお父さんの仕事って、他人様には教えられない類のお仕事デス?」


「いや、そうじゃないけど、できるだけ自分からは話したくないんだ」


「ふうん、隠したがるなんて変なの。――で、お父さんの仕事は?」


「……んー。そんなに知りたい?」


「くどい。とっとと観念して白状なさい。これ以上もったいぶったら怒るよ」


「あー、んー、えー。……僕の職業は、興信所の調査員です」


「興信所? って何それ?」


「この言い方で分からないなら、探偵事務所って解釈してくれ」


「……探偵事務所っ? その探偵って、つまり、いわゆる探偵?」


「そう。キナちゃんが思い描いているだろう性質のものではないけど、その言葉通りの探偵だ。やはり勘違いされやすいから、興信所って呼び方をしてるけど」


「いやだなあ、私だって現実とフィクションの区別は付いてるよ。あれでしょ? 現実の探偵は毎日浮気調査と猫探しに奔走しているんでしょ?」


「それもまた偏見に満ちた印象だね……。実際はもっと色々やっているよ。守秘義務があるからほとんど話せないけど、突き詰めれば僕の仕事はスパイ活動さ」


「ふうん、なるほど……。お父さんがこれまで秘密にしていたのも納得。そりゃ、あまり他人には話したくないだろうね。いちいち説明が面倒そう」


「そうだね。この業界にいると知りたくもない他人の秘密を知ることになるし、そのせいで恨みを買うことも多いんだ。警察みたいに権力があるわけでもないし」


「チクリ魔って嫌われるもんねー。あ、じゃあ、前の勤め先も興信所だったんだ?」


「ん。そういうことになるね。不本意な話、僕はこの仕事が向いているようで」


「……あ、でもさ、お父さんが面倒そうに言いながらも探偵の仕事を続けているのって、もしかしてお母さんを探すためだったり?」


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