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タイムカプセル・パラドックス  作者: 宇佐見仇
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第七十六幕《動機》

 第七十六幕《動機》



『私が十六年前に消えたのは、さて、どの理由からでしょーか?』


『三十一択クイズかい? 生憎、正解する自信はないね』


『正答する必要はない。正当な理由が必要なんだよ、君には』


『僕のことはどうでもいいだろ。やっぱり答えたくないのか?』


『やっぱり? やっぱりとは奇異なことを言うわ。他人の心を想像するのはいいけれど、それで会話するのは悪趣味だよ。私は何にも言っていない』


『でも答えをはぐらかした。真実を隠そうとした』


『過去の真実なんて無意味だよ。何を知っても、今からじゃもう遅い』


『僕は、そうは思わない。たとえ手遅れでも、知りたいって思いは叶えることができる。逆に知らなければ、ずっと僕の足は止まったままだ。前に進むために知りたいと思うのも、無意味だと言うのかい?』


『心は時の流れに洗われて風化していくものよ。じたばたしなくても、いつかは消える。現にあの子が現れるまで、君は私のことを忘れていたじゃないか』


『…………』


『うふふ……。その沈黙は、どっちの意味かな。肯定? 否定?』


『さあね。君にはどっちだっていいんだろ?』


『そうね。今は思い出している。それは確かな事実だ。大事なのは、今』


『あっそう。君は妄想の産物で、すでにこの世にいないってのに、それなのに今が大事だなんてことを言うんだね。……いや、もうこんな禅問答は止めよう。自分の妄想に質問するなんて、間抜けを通り越して、狂人だ。頼むから、もう僕の前から消えてくれ。僕の深層心理が望んだものだとしても、これ以上、君と話したくない。こんな夢は見たくない。頼むから、一刻も早くこんな悪夢から目覚めさせてくれ。


 君が僕の妄想なら、君の言葉は全部、僕の言葉だ。


 僕は君の姿を借りて、自分を説得しようとしているわけだ。


 潔く、君のことを忘れろって。

 そして今を大事にしろって。


 ああ……、本当に白々しい。サブイボが立つ痛々しさだ。

 だからもう止めよう、こんな茶番劇。どうせ口で言っているだけの三文芝居だ。こんなんで過去と向き合っているつもりか? 夢から覚めたら全部忘れて、それでおしまい。何の意味もない。向き合う振りして、逃げているだけ。虚しいだけ。惨めなだけ。

だからさっさと夢から覚めて、全部忘れて、無かったことに――』


『……本当に、それでいいの?』


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