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タイムカプセル・パラドックス  作者: 宇佐見仇
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第五十七幕《晩餐》

 第五十七幕《晩餐》              五月五日 十九時十六分



「あれ? 何だか珍しいね、こういうのって。もしかしたら初めてじゃない?」


「そうかな。けっこうあったと思うけど」


「なかったよ。夕飯を食べに行くなんて」


「そうだっけか? キナちゃんとはけっこう外食している記憶があるんだけど。ほら、モールで映画に付き合ってもらったときとか、入学式の日とかも外食したし」


「あれはランチでしょ。しかもお父さん、お昼は食べないからって、私一人だけ食べてたじゃない。全然違うよ。まるっきり違う。完全に不一致です」


「夕飯を食べに行ったことは、言われてみれば全然なかったね」


「今日はどうしたの? 心境の変化? 体力の限界? 後進の強化?」


「いや、スポーツ選手じゃないんだから。別に、単なる気まぐれ。たまにはいいかなって。食べるもの決めずに家を出発しちゃったけど、何食べたい?」


「んんー、何にしよっかな。普段家じゃあ食べないものがいいな」


「普段、僕が料理しないものだね。焼肉とか、寿司とか?」


「ラーメンでいいよー。あ、じゃなくて、ラーメンがいい」


「ラーメンか。まあ家ではわざわざ食べたりしないな。ラーメンでいいの?」


「おうさ。ギトギトとんこつにんにくマシマシで、おなしゃす!」


「奇天烈な呪文みたいだね。っていうか、ギトギトににんにくマシマシて……。これまた女子力を全力投球というか、明日が怖くないのか、君は」


「ふっ……、あたいは今を生きる女。明日のことは明日に考えるのさ」


「漢らしい……。分かった。ナビでラーメン屋を探してみる」


「あ、私がやるよ。お父さんは運転に集中してて」


「じゃあお願いするよ」


「ラ・―・メ・ン、と。女子力って言ったけど、女子も普通にラーメン好きだからね」


「そりゃ、ファミレスとマックだけが女子高生の生息地じゃないだろうね。前にキナちゃん、カップ麺は嫌いみたいなこと言ってなかったっけ」


「言ったよー。インスタントって一口で飽きちゃうんだよね。どれも同じ味だし、食べたあとの満腹感とか腹の心地が、何かこう、重たくなるというか」


「あー、ちょっと分かるかも。しかしグルメな意見だ。一口で飽きる」


「ま、どんなものも食べ続けたら飽きるし、こってり系のラーメンなんかそうだね」


「うん。今からその、こってり系を食べに行こうとしているわけだが」


「たまに食べるから美味しいんだよねー。あっ。お父さん、次の信号右だよ」


「了解」


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