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タイムカプセル・パラドックス  作者: 宇佐見仇
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第五十三幕《贈呈》

 第五十三幕《贈呈》              四月二十四日 十八時四十八分



「一ヶ月だねえ」


「え? 何が?」


「んもう、お父さんったらとぼけちゃって。とっくに分かっているんでしょ?」


「いや、本当に見当も付いてないんだけど……」


「え、あ、そう。全然分かってないんだ。そうですか。一人で舞い上がってすいません。えーとね、今日で私とお父さんがタイムカプセルの穴で出会って、一ヶ月になるんだよ」


「ああ、言われてみればそうか。もう一ヶ月にもなるのか」


「そうそう。時間が経つのは早いねえ、しみじみ。なんだよ」


「ふうん」


「……ふうん、って、それだけ?」


「ただ時間が流れただけだろ? 別に特別視することじゃない」


「何それ! 冷めすぎ乾きすぎ。信じられない! どこの乾燥機よ!」


「信じてもらわなくても、僕がそう考えた事実は変わらないよ。どうしたんだ、そんなぷりぷりして。もしかして一ヶ月記念でも祝いたかったのか?」


「そうだけど! 何? 悪い? 甘甘な乙女脳で悪いって言うんですかー!」


「悪いとは言っていない。君にとって、そんなに優先順位が高かったことが意外だと思っただけだよ。そういうことなら、今からケーキでも買いに行くかい? ケーキ屋はもう閉まっているだろうから、スーパーのケーキになっちゃうけど」


「あ、いや、そういうのを催促したわけではないので。はい。ケーキがあったら嬉しいけど、絶対条件ではないので、気を遣っていただかなくても結構です」


「急に他人行儀。えーと、じゃあ、僕はどうすればいいんだろう」


「いえいえ、お父様は何もしていただかなくて結構です。お父様のお陰で、私はいつも健康に過ごしております。どうぞこれをお受け取りください。心ばかりのお礼です」


「丁寧過ぎて怖い……。贈り物? へえ。開けてもいい?」


「どうぞどうぞー。ぱっぱと開けちゃってくだーせー」


「あ、いつもの感じに戻った。……っと、これは、クッキー?」


「そ。家庭的な女の子ですからね。焼き菓子もチョチョイのチョイです」


「いつの間に作ったんだ? クッキーを作ったら、匂いとか残ると思うんだけど」


「今日の放課後に、学校の家庭科室で作ったんだ。家庭科部にお邪魔してね」


「なるほど。ありがとう。大事に食べさせてもらうよ」


「どういたしましてー。えっへへー。はい今日はこれで終了。オチなし!」


「オチって何?」


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