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タイムカプセル・パラドックス  作者: 宇佐見仇
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第四十七幕《暗黙》

 第四十七幕《暗黙》              四月十五日 一時十八分



「暗闇ってさあ……」


「ん? 暗闇?」


「暗闇って、何でか寒いイメージがあるよね」


「あるね。寒いイメージ」


「それって、明るいのが太陽が当たってて温かいイメージがあるから、その反動だと思うんだけど、でも暗くても温かいことって普通にあるよね。夜の布団の中とか」


「そうだね。それってあれかい? 他人に聞いている時点で、自分の中で答えは出ているってタイプの独り言? 逆に、冬は太陽が出てても普通に寒いよね」


「うん、普通に寒い。明るくても寒いことはあるし、暗くても温かいことはある。でも明るさと温度のイメージってのは固定されたままなんだ。これは人が情報を最も得ているのが視界であり、他の感覚の上位に立っていることの証拠になるんじゃないかな」


「あー……。キナちゃん、もしかして、怖くて饒舌になっている?」


「……ビ、ビクッ! ……怖くないし? トイレも一人で行けるし?」


「眠れないからって、僕をリビングに引き止めているのはどこの誰だい? だから言ったじゃないか。部屋を暗くしながらホラー映画を見るのはやめなさいって。シチュが嵌まるとめっちゃ怖いんだから」


「……お、お父さんだけ、夢の世界に逃げようったってそうはいかないんだから。絶対に逃がさない。逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ……!」


「他人からその台詞を言われると、強迫観念もとい、脅迫感がすごいね」


「話を戻すと、さっきのは明るさから感じる温度感だったけど、逆から考えてみると、温かいと暗闇でも人は安心できるし、寒いと明るくても寂しくなるんだよ。これって触覚が心理状態に大きな影響を及ぼすことを意味してて、精神病でも、その日の天気や湿度によって症状の重さが影響されることがあったりする。これってちょっぴり面白くない?」


「面白いね。恐怖と深夜のテンションで頭が冴えまくっているみたいだ。このまま朝まで議論というのも魅力的だけど、生憎、僕は眠いんだ。頼むから寝かせてくれ」


「はあ? ダメに決まってんじゃん。怖いんだよ~、一人にすんなよ~」


「駄々を捏ねてもダメ。部屋を明るくして、部屋を温かくすれば、ダブル効果で不安なんか消し飛んでくれるはずだろ? 自分で実践してみなって」


「ぐぬぬ……、ケチ親父め。可愛い愛娘が孤独死してもいいってのかよ」


「大丈夫。孤独ではウサギも人間も死にはしない。グンナイ。いい夢見なよ」


「白状者めー! 絶対怖い夢見てやるもんね! 怖くて泣いちゃうもんね!」


「どんな宣言だい、それは」


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