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タイムカプセル・パラドックス  作者: 宇佐見仇
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第四十三幕《独言》

 第四十三幕《独言》              四月十日 十七時三十一分



「ただいまでーす、お姫様のご帰還ですよー、と、誰もいないのに言ってみる。これで返事が返ってきたら怖いよね。誰かいますかー? いいえ、いませんよー、みたいな。返事が返ってくるって、一見、意味が重複しているように見えるけど、これ以外にない言い回しって他にもあるよね。旅行に行くって、どこかに行くのが旅行じゃん? 旅に行くじゃ、大袈裟だけど。犯罪を犯す。犯すって言葉自体がすでに犯罪を意味しているという不思議。正しくは法を犯す、罪を犯すとかなんだろうけど、やっぱり犯罪を犯すが一番しっくり来るね。じゃあ、犯罪に付ける正しい動詞って何だろう? 犯罪を行う? あとは菌を殺菌する、消毒する。……いや、人間が菌に対して、殺菌消毒以外に働きかけることってある? 研究するとか、それくらい? ってか、殺菌消毒ってすごい殺意満々だよね。殺して消すって……、どんだけ嫌いなんだ! 暗殺者か! 殺すと消すっていう物騒な漢字が二つも使われているのに、正しい行動だと感じられる熟語ってのも珍しい。あ、でも逆に、小説を読書する、みたいには言わないなぁ。読書が一個の動名詞として確立されているからかな。


 さあて、こっからどうしよ。早く帰ってき過ぎちゃったかな。やることないなー。夕飯を作ったり、予習をしたり、テレビを見たりとかって、することはあるけど、今はいいかなーって感じ。やる気がでない感じ? 予習はともかく夕飯は作んなきゃだー。お父さんが作り置きしといてくれたシチューは、昨日終わっちゃったから。お父さんいつ帰ってくるんだっけ。出張は四日間のはずだから、明日の夜かな。じゃあ、明日も夕飯を自分で作らなきゃいけない可能性があるわけだ。そんならカレーでも作ろう。ルーあったっけ? ジャガイモ、玉ねぎはあるから、あとはナスとトマトと肉、カレールー。カレーに人参を入れるか否か、いつも迷うのですよ。うーん、人参おいしいけど、でも甘いじゃん? カレーって辛くてなんぼじゃないですか。なのに甘くしちゃうのって、みたいな。この理論で言うと、甘口カレー派を敵に回すことになるけど、望むところだぜ! 辛いのが嫌いなら、ハヤシライスかビーフシチューを食べとけっ! はあ? トマトが嫌い? じゃあシチューだ! シチュー最強! でもシチューは昨日食べたからカレー! カレーに決定。カレーこそ究極にして無敵……!


 買い物に出かける前に、炊飯器をセットしておくのじゃ。問題は何合炊くかだ。一人分だと一合で十分だけど、カレーライスが相手ゆえ、念のために二合炊いておこうかのう。二合も食べられないと思うけど、明日の朝用に。でも、もしかしたら二合食べちゃうかもだぜ? 爆食いしちゃうか? しちゃうか私? 二合って大した量じゃないように思えるけど、いつものお茶碗一杯が半合くらいですんで、二合はお茶碗四杯分になるわけです。三回おかわりするのと同義です。乙女としてどうかなーって大量ですね。っと、独り言を呟きながら~、二合研いで炊飯器にセット~。これで準備は完了。


 ではでは行ってきまーす。誰もいないのに言う二回目。行ってらっしゃい」


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