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タイムカプセル・パラドックス  作者: 宇佐見仇
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第四十幕《美味》

 第四十幕《美味》               四月四日 二十二時三分



「おっかえりー。やっと帰ってきた。遅かったね」


「うん。電車が人身事故で遅れててさ。あとから来た電車に大勢が乗り込んで、すごい満員状態だったよ。先に食べてて、ってメールしたけど、もう夕飯は済ませた?」


「いいえ。お父さんを待ってた。夕飯作っといたよ」


「へえ? それはありがとう。助かるよ。何も食べてこないでよかった」


「何のなんの。ささっ、スーツなんか脱いで、座った座った」


「はいはい、と。メニューは何だい?」


「えのきの味噌汁と、茄子とピーマンと豚挽き肉の餡かけ野菜炒め。それと昨日お父さんが作った、切り干し大根と油揚げの煮物。はい、ビールとグラス」


「おっ、サンキュ。キナちゃんも座って。じゃ、いただきます」


「はいさ。いただきます」


「…………」


「……いかが? お味のほどは」


「うん、おいしい。味付けが中華風で、麻婆茄子みたい。料理は得意ってほどでもないみたいなことを言っていたけど、結構、できる方じゃないの?」


「ふっふっふー。お世辞でも嬉しいです。まあね? その辺の同級生には負けない自身がありますよ。私、中三の頃は家庭科委員だったからね」


「……ん? 仮定会員? って何? 数学の学派の一種?」


「何言ってんの? 数学じゃなくて家庭科だって。教科の先生からの連絡をクラスに伝える委員だよ。教室移動とか、次の授業で用意する物とかを確認するのが仕事」


「何だいそれ? そんなのがクラスにあったの?」


「お父さんの頃にはなかった? 数学委員とか、社会科委員とか」


「あったような、なかったような……。昔のことだから覚えてないな」


「ともあれ、家庭科の先生と仲良くてね、料理のコツを教えてもらったりしたの」


「料理のコツ。ほう、どんなのだい?」


「『しょせん、腹に入っちまえば一緒だ。美味けりゃいいんだよ、美味けりゃ』」


「漢らしい……。だが、絶対に教育者に向いていないタイプだ」


「こんなことも言っていたかな。『栄養も味付けも見栄えもあと。まずが作ってみることだ。実際にできないのに、知識を詰め込んでも仕方がない。実践あるのみ』って」


「おや? すごい教育者っぽい。いい先生だね」


「だったね。さ、私もぱっぱと食べちゃおっと。……うん、ナイス私!」


「うん。人の手料理なんか久しぶりだ。おいしいよ、本当に」


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