第二十三幕《報酬》
※二十三章から台詞頭の「娘」を省略しました。
不評のコメントがあったら戻します。
大丈夫そうなら続行で。
第二十三幕《報酬》
「おいしょ、っと。……ふう! 今日はこの辺にしておいてやろう!」
「掃除終わった? ご飯出来たよ、キナちゃん」
「丁度よかった。こっちもぴったし区切りが付いたところ」
「どれどれ? おっ、寝るスペースが出来てる。部屋というにはまだ手狭だね」
「マイルームにするのは明日のお楽しみ。ご飯出来たんだよね? 今晩のメニューは?」
「うん。今日のご飯はラタトゥイユとサーモンのアルミ包み焼き」
「……ん? らたといゆ? 何その料理? 初めて聞いたかも」
「夏野菜のトマト煮。確かフランスの家庭料理だったと思う」
「ふうん、オッシャレぇ! やれやれ、気取り屋なんだから、お父さんは」
「なぜ呆れられたか分からないな。……あれ? キナちゃん、部屋の隅っこに積み重ねてあるこのDVDたちはどうしたの? 僕の部屋に置けなくなった?」
「ああ、それはちょっと気になった群。あとで見せてもらおうかな、と思いまして」
「そうかい。いつでも好きに見ていいよ。何なら夕飯食べながら見る?」
「おっ、それいいねー。その中にお父さんのお薦めの映画ある?」
「お薦めというなら全部だけど、初心者向けに選ぶのなら『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と『ターミネーター2』かな。どっちがいい?」
「『ターミネーター』ってのは聞いたことある。でも『2』なの? お薦めは」
「『1』もいいけど、記憶に残るのは『2』の方だね。『2』から見ても、話は分かるようになっているから心配ないよ。『3』と『4』はファン向けかな……」
「『バック・トゥ・ザ・フィーチャー』はどんな話?」
「それは見てのお楽しみってあるけど、裏面のあらすじを見ちゃっているだろうから、ちょっとだけ。友人の科学者が作ったタイムマシンで過去に行って、未来、つまり自分の現在をちょっとだけ変えるコミカルなSF。ところどころで謡われる科学理論が何ともそれらしいというか、パチモン臭くてね。そういや『ターミネーター』もタイムトラベルして未来を変えるストーリーか。タイムパラドックスとかどう解釈してんだろうな」
「タイムパラドックスってあれでしょ。過去の自分の先祖とか親を殺しちゃったら、未来に自分は産まれないことになるから、存在が消えちゃうって奴だ」
「存在が消えるから、実行不可能ってことね。……ふむ?」
「ん? どうしたのお父さん。難しい顔をして」
「いや……、何でもない。えっとそれで、どっちを見たいんだっけ」
「じゃあ『ターミネーター2』。こっちの方がグロそう!」
「グロで映画を選ぶ女子高生は、嫌だなあ……」
次回の更新は13時です。
ギザギザハート
 




