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タイムカプセル・パラドックス  作者: 宇佐見仇
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第二十一幕《素直》

 第二十一幕《素直》                



娘「…………」


「どうだった? 名作の感想は」


娘「……私にはちょっと難しかったかな? 思ったより内容が複雑だった。登場人物がごちゃごちゃしていて、機械とか事件とか法律とか、魂とは何かとか……」


「深いと言うこともできるけど、難しく考えずに、雰囲気だけ楽しむのも有りだ」


娘「うん……、恋愛小説くらいしか読まない私の脳みそには、キャパオーバーでした」


「そう難しく考える必要はないって。魂とか尊厳とか真の自由とか、そういう類の問いかけはSFのお決まりのようなものだけど、SFの本質はあくまでもエンターテインメント……娯楽なんだから。テーマの受け取り方は観客の自由だよ」


娘「それは分かっているんだけどねー。まあ、楽しかったよ。お父さんが散々言っていたすごさってのはよく分かんなかったけど」


「楽しいと言ってもらえたのなら幸い。ともあれ、僕の趣味に付き合ってくれてありがとう。もういい時間だし、そろそろ帰ろうか」


娘「うん、そうしよ。私も荷物持ち続けるの、疲れてきたし」


「夕飯をどうしよっかな。何か食べたい物ある? すき焼きだっけ」


娘「すき焼きのブームは去っちゃったから。何でもいいよ。お父さんに任せる」


「何でもいいってのが一番困るんだよね、とありきたりなことを言ってみたりする。一応食材を買う前に確認しておきたいのだけど、何か春雨以外に食べられないものはある? あと、今は食べたくない料理とか」


娘「なるほど、今は食べたくないものね。お昼にうどんを食べたから、麺類はいいや。好き嫌いはレバーペーストとゴーヤーが苦手かなあ。あとは全然」


「それだけかい? 女子高生だからもっとわがままが出てくると覚悟していたのだけど、存外そんなもんか。そのくらいの好き嫌いだったらフォローできる」


娘「お父さんは、好き嫌いは?」


「これが、ないんだよ。つまらないことに」


娘「つまらないって……。いいことじゃん。選り好みしないなんて」


「ないって答えたら、そこで話が終わっちゃうだろう? だから好き嫌いを聞かれたときは、特に嫌いでもないけど、好きでもない料理を言っている。お寿司とか、田楽とか」


娘「へえ……。お寿司が嫌いって言われたら衝撃だね。どうしてって聞かれるでしょ」


「うん。そして『君はまだおいしいお寿司を食べたことがないだけなんだ』と回らない寿司屋に連れて行ってもらえる可能性が高まる。すべては計算の上だよ、キナちゃん」


娘「こんなこすい大人にはなりたくねえなあ、と……」


次話の更新は6時です。

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