ショックな君
食品コーナーに着くと、僕は君の意見も訊かずに食材をカートの中に入れていく。
玉ねぎ、人参、ニンニク、牛ももブロック、トマトホール缶、ローリエ、そしてバケット。おっと、忘れちゃいけない。甘口シェリーも一本。今日は僕が作るつもりだ。
そんな僕を見ながら、君は何も言わずについてくる。でも、心がペットコーナーの猫に向いているのは、ありありと伝わってくる。
食材を選び終わり、僕らはレジに向かう。
途中に通るペットコーナーに近づくと、君は押さえきれなくなったように、小走りに猫の元へと向かう。
僕もカートを押しながら、ゆっくりと後ろを追う。
君はいつものケージの前で佇む。
何やらおかしいのは、後ろから見ていても分かる。
僕がゆっくりと横に並ぶと、ケージの中にはいつもの猫とは違う、小さくて可愛らしい、クリーム色のマンチカンが。
君はショックを隠しきれない顔で、他のケージも見て回る。ひょっとしたら、場所を移したのかと、淡い希望を抱いたのかもしれない。
でも、何処にもあの愛想のない太ましいロシアンブルーの姿はなかった。
あからさまに泣きそうな顔で肩を落とす君に、僕は声をかけた。
「きっと良い飼い主と出会ったんだよ」
君は僕の言葉に頷くこともなく、レジに向かって歩き始めた。